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大津市のいじめ相談、LINEで3倍に―越直美市長に聞く(前編) (2018/8/27 政治山)

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 2011年10月、滋賀県大津市で、いじめを苦にした中学生が自殺するという痛ましい事件が起きました。その翌年、2012年1月の市長就任以来、強い決意をもっていじめ対策に取り組んできた越直美市長にお話をうかがいました。

越直美 大津市長

越直美 大津市長

大津市のいじめ対策の取り組み「相談しやすい環境づくり」

――はじめに、大津市のいじめ対策の概要をお聞かせください。

 本市のいじめ対策については、市立中学校の生徒が自ら命を絶つという事件を二度と繰り返さないという決意のもと、いじめ防止対策推進法及び大津市子どものいじめの防止に関する条例に基づき、いじめ対策の取り組みを総合的、計画的に推進するための計画を策定し、教育委員会・学校だけではなく、市長部局にもいじめ対策推進室を設け、取り組んでおります。

 いじめ対策の取り組みを推進するための重要な点の1つとして、子どもたちが困ったとき、悩んだときに誰かに相談できる、相談しやすい環境を整備することが大変重要であると考えています。

 毎年、小中学生を対象にいじめに関するアンケート調査を実施していますが、小学生と比べ、中学生は、いじめについて誰にも相談しない割合が高くなります。そこで、中学生にとって相談しやすい方法は何かということを考えてきました。

調査結果をもとにLINEでコミュニケーション

――相談できなければ悩みは深刻化します。どのような対策を考えられたのですか?

 同調査では「相談するとしたらどのような窓口が相談しやすいか」とも尋ねており、中学生では、「LINEやチャットで相談できる窓口」が39.3%と一番高い割合となっています。

 このような調査結果も踏まえて、中学生が困ったとき、悩んだときに相談できる窓口として、10代の子どもたちがコミュニケーションのツールとして利用している「LINE」を利用して相談窓口を開設すれば、相談しなかったと答えた中学生が、少しでも相談してくれるのではないかと考え、LINEを利用した相談窓口を試行的に実施することとしました。

実施体制

実施体制(「平成29年度 LINEを利用したいじめ等に関する相談受付に係る検証会議 報告書」より

 具体的には、昨年11月から、いじめや友だち関係の悩みなどを、LINEで相談できる窓口を開設しています。このLINE相談については、窓口の有効性や相談内容の妥当性、運用方法などを、有識者や関係事業者等で検討する検証会議を開催し、改善のための検討を重ねています。

 そして、このたび、昨年度の結果や、検証会議における議論の内容、窓口としての特徴と有効性などをまとめた報告書を作成しました。

相談件数は3倍、相談者数は5倍に

――LINE相談の詳細をお聞かせください。

 2017年度の事業概要ですが、実施期間は2017年11月から2018年3月までの5カ月間、平日の午後5時から午後9時まで、計99日間、実施いたしました。

 対象としては、開始当初は大津市立中学校の3校、約2,500人を対象に実施し、その後12月から順次対象校を拡大し、全中学校18校、約9,000人を対象に、現在も引き続き実施しております。

 相談の流れとしては、中学生にLINE相談の友だち登録ができるQRコードを掲載したチラシやカードを配布し、登録してくれた生徒からメッセージを送ることにより、相談対応が始まります。

 実際、生徒は自分のスマホを使ってメッセージを送るのに対して、対応するカウンセラーはパソコンを利用してメッセージを送っております。このやりとりは緊急時に備えて、市役所においてもリアルタイムで確認できるようにしています。

越市長

 次に、昨年度5カ月間の実施結果についですが、延べ相談対応回数は67回、相談者数は37人、友だち登録数は129人でした。大津市ではLINE相談のほかに、いじめ等の相談窓口として電話等で相談を受け付ける窓口を設けています。その既存窓口とLINE相談を比較すると、中学生本人からの相談としては電話等の窓口に比べて、LINE相談のほうが約3倍の相談回数であり、さらに新規の相談者数としては、既存の窓口が8人に対してLINE相談では37人と、約5倍の中学生から相談を受けています。

 これらの結果から、中学生にとってLINE相談は、相談のハードルが低く気軽に相談できる窓口ではないかと考えており、相談方法の1つとしては中学生にとって必要なものではないかと思っております。

(後編「『教育委員会を廃止すべき』―説明責任を果たす行政へ」へ続く)

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