「教育委員会を廃止すべき」、説明責任を果たす行政へ―越直美市長に聞く(後編) (2018/8/28 政治山)
大切なのは「早い段階で気軽に相談できる」こと
――相談窓口のあり方を改善するために、検証会議を定期的に行っているそうですね。
はい、検証会議においては、LINE相談が生徒にとってより利用しやすいようものとなるよう、運用方法等について検討いただいております。その1つとして、生徒が相談したい時に、まず何とメッセージを送ればいいかわからないとの意見を受けて、リッチメニューを導入いたしました。
リッチメニューには5つの機能を持たせ、電話相談の窓口の紹介やいじめ対策の情報の発信、困ったときにはどうすればよいかなどの情報を掲載しております。
1番重要なボタンとして、「LINEで相談」というボタンを設定しており、生徒がこのボタンを押すことにより、カウンセラーが生徒から何らかの相談があると確認し、カウンセラーから「相談内容を教えてくれる?」というメッセージを送り、生徒が相談したい内容を教えてくれて、相談対応が始まります。このように少しでも生徒が相談しやすくなるよう、相談することのハードルを下げて、生徒にとってより利用しやすい相談窓口となるよう改善しながら、実施しております。
――LINE相談はどのような方が対応されているのですか?
関西カウンセリングセンターのカウンセラーが対応しています。カウンセラーは臨床心理士や関西カウンセリングセンターの認定心理カウンセラーの資格を持った方々などで、LINEならではのやり取りのテンポや独特な表現を研修などで学びながらスキルアップを図っています。電話や対面での相談とは異なるため、これから様々なノウハウを蓄積して、効果的な支援ができるように改善していきたいと考えています。
LINE相談の特徴と有効性としては、1つ目に「中学生にとって相談のハードルが低く、気軽に相談できると考えられること」、2つ目に「早い段階で相談窓口につながっていると考えられること」、3つ目に「LINEにおいても心理援助ができる可能性があることと、対応にはLINE相談特有の技術が求められること」が考えられ、有識者等からもご意見をいただいております。
教育委員会は変わった
――いち早くLINE相談を導入し、検証会議を重ねて日々改善するなど、積極的な姿勢が印象的ですが、どのような実施体制となっているのでしょうか。
過去の反省から、教育委員会に任せきりにせず、市長部局にいじめ対策推進室を設け、総力を挙げて取り組んでいます。中学生の自殺という痛ましい事件が起きた当時、学校から教育委員会、教育委員会事務局から教育委員への報告は上がっておらず、全体として無責任な体質になっていたと思います。とくに教育委員で構成する教育委員会が形骸化し、市長として市民への説明責任を果たすことができないと考え、教育委員会の廃止を国に要望したこともあります。
結局、廃止には至りませんでしたが、法律が改正され、市長と教育委員で構成する総合教育会議が創設されました。大津市では、総合教育会議を最大限活用して、いじめ対策をはじめとする様々な課題について議論しています。また、現在では教育委員会の委員が代わり、教育委員が集まる回数も月4回程度に増え、スクールミーティングというかたちで現場に出向くようになっています。
また、いじめの疑いがあった場合には、24時間以内に学校から教育委員会に報告するという24時間ルールを設けました。そして、小中学校に、いじめ対策を専門にする「いじめ対策担当教員」を新たに配置しました。その結果、かつては、いじめが小中学校55校で年間50件ほどしか報告がありませんでしたが、現在では、いじめの疑いを含めて、年間2,500件、約50倍もの報告があります。これはいじめが増えているのではなく、見逃してきたものが顕在化してきたものだと考えています。
――そのような取り組みの一端としてLINE相談も行われているのですね。今後の取り組みについてお聞かせください。
本市としては、2017年度に引き続き通年で試験運用を継続し、年間を通じて件数の推移の把握など、窓口の有効性や運用体制等について検証を続けたいと考えております。
このLINE相談の位置づけですが、気軽に相談できる相談窓口であり、中学生自身が早期に相談できるという特徴を考えると、「誰にも相談できなかった子どもも含め、相談窓口につながるきっかけとなること」「相談者自身による問題・気持ちの整理を支援すること」「必要に応じ、適切な相談先につなげること」、このような窓口として運用することが有効ではないかと考えております。
このLINE相談を実施することにより、1人でも多くの中学生が、悩んだり困ったりしたときには悩みを相談できるような環境づくりをしてまいります。
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