長野県佐久市「何でも相談会」に最多の来訪者―日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト (2018/3/9 日本財団)
さまざまな悩みや事情、専門家が無料で聞く
日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト
家族・人間関係や心の問題、仕事の不安・トラブルなど、どこに相談していいか分からない、さまざまな悩みや事情を、弁護士や精神科医ら専門家が無料で聞く「こころ・法律・仕事の何でも相談会」が2月27日、長野県佐久市の佐久平交流センターで開かれた。誰も自殺に追い込まれることのない社会を目指す「日本財団いのちささえる自殺対策プロジェクト」の一環。これまで同県内で開催した5回の相談会を大幅に上回る来訪者があり、一人ひとりの相談をじっくり聞くために、途中で受け付けを止めざるを得なくなるほどだった。
「借金を返せない」「眠れない」「仕事がつらい」「死んでしまいたい」「生活が苦しい」「人間関係に疲れた」-など、深くつらい悩みの解決は容易ではない。警察庁の統計によると、全国の自殺者数は2009(平成21)年から減少傾向にあるものの、16(同28)年は2万1897人、17年(同29)年は暫定値で、なお2万1302人を数えた。
長野県の自殺者は、厚生労働省の人口動態統計によると1998(同10)年以降、480人から580人前後で推移していたが、08(同20)年以降は減少傾向にあり、16年は339人と平成に入ってから最も少なくなった。しかし、いまだに多くの人が自ら命を絶っている非常事態に変わりはない。
16年4月施行の改正自殺対策基本法は「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目指し、自殺対策を「生きることの包括的な支援」として位置づけるとともに、全ての都道府県と市区町村に「自殺対策の計画づくり」を義務付けた。17年7月には、政府が推進するべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」が改定され▽地域レベルの実践的な取り組み▽若者や勤務問題による自殺対策-をさらに推進することなどが当面の重点施策として新たに加えられた。
改正基本法や新しい大綱の趣旨を踏まえ長野県は「誰も自殺に追い込まれることのない信州」を実現するため、第3次自殺対策推進計画を今年3月に策定する予定。未成年者、高齢者、生活困窮者、勤務問題の4つの重点分野を設定し「実践」と「啓発」の両輪で、さまざまな施策を全庁的に展開している。
日本財団と長野県は16年9月、「生きることの包括的な支援」の地域モデルに取り組むことで合意し、県内で実践的な「日本財団いのち支える自殺対策プロジェクト」を始動させた。両者は17年7月から県内各地で、あらゆる相談に無料で応じる「いのちと暮らしの総合相談会」を順次開催しており、今回はその6回目。
自殺防止に幅広いノウハウを持つ「自殺対策支援センターライフリンク」(東京、清水康之・代表)の支援を受け、地元の佐久市・立科町の協力も得て、自殺対策強化月間の3月に先立ち今回、総合相談会を共催した。日本財団が自治体と連携して自殺対策プロジェクトを進めるのは東京都江戸川区に次ぎ2例目。
当日は会場となった一室に7つのブースを作成。相談者がどのような問題を抱えているか、手前の2つのブースでまず丁寧に掘り起こした後、専門家(保健師、精神科医、弁護士、生活困窮者自立支援員)を配置した次の5つのブースに促す方式で相談が進められた。
過去5回の最高相談人数は42人、この日訪れた相談希望者は約80人に上り、午後7時近くまで相談時間を延ばしても、応じることができたのは51人だった。残念ながら相談対応ができなかった人には、長野県内の「こころの相談窓口」や保健所ごとに曜日を決めて実施している「くらしと健康の相談会」など手掛かりとなる情報をその場でお知らせした。
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