[用語解説]政党要件
政党要件ギリギリの政党が候補者10人擁立する理由 (2016/6/21 政治山)
1人政党でも政党助成金が交付されたり、4人に減少した政党が助成金の交付対象から外されたり……一般市民からすれば二重基準のように見えるルールが永田町にはあります。今回の参院選でも、政党交付金を受け取っている政党が、政党要件を満たすために候補者を10人擁立するという話が出ています。どのような取り決めになっているのでしょうか。
法律によって政党要件が異なる
そもそも「政党とは何か」を規定する要件そのものが法律によって異なります。公職選挙法では下記いずれかを満たすことと規定しています。
(1)国会議員が5人以上いる
(2)前回の衆院選または参院選で有効投票の2%以上を得ている
一方、政党助成法では上記のほか、下記の要件だけでも政党として認めています。
(3)前々回の参院選で有効投票の2%以上を得ている
得票率2%以上をクリアしたものの、その後所属議員が減った政党は、5人未満でも次の衆院選または次々回の参院選が終わるまでは政党助成金が得られます。一方、新党を結成してぎりぎり5人以上を集めた政党の場合、「得票率2%以上」という選挙の洗礼を受けておらず、(1)の要件だけをクリアしているため、5人未満になれば交付対象から外れてしまいます。
しかし、(3)のケースで政党助成金を得ている政党の場合、公職選挙法上は政党要件を満たしていないため、そのままでは、比例代表に候補者を擁立することができません。
参院選は10人以上の擁立で“みなし”政党に
そこで、衆院比例代表の場合、名簿登載者の数がそのブロックの定数の2割以上であれば届け出が可能です。参院選の場合、選挙区と比例代表を通じて候補者を10人以上擁立すれば政党とみなされます。
参院選において、選挙区では勝ち目のない政党でも、全国比例で100万票以上得票できれば1人当選できる可能性が出てきます。この場合、10人近い候補者を比例代表に揃えて上積みを期待し、1人でも国会に送り出すことができれば、たとえ政党要件を失ったとしても、政党の理念を国会から消滅させる危機からは逃れることができます。
2013年7月の前回参院選では、比例代表で1人当選した社民党が総数125万5235票を獲得し、得票率2.36%で2019年までの政党助成法上の政党要件をクリアしています。
公選法上の政党要件外れると選挙戦が不利に
公選法上の政党要件を満たさない場合、比例代表で戦えないだけでなく、使用できるハガキやビラの枚数が減らされます。衆院選であれば小選挙区での政見放送ができません。また、政治資金規正法で、寄付金の上限を厳しく規定されます。
さらに、新聞やテレビなどのメディアも、政党助成法上や公選法上の政党を並べて、各党首・代表らの第一声や政策比較を行います。政党要件から外れると、有権者に訴えが届きにくく、必然的に泡沫候補のような扱いになってしまいます。
このように制度上、小さな政党は淘汰されやすいシステムになっています。小さな政党では派閥や権力争いも表面化しやすく、分裂することで双方とも国会での影響力は失われていきます。
政党助成法上の政党要件の基準日である1月1日の数週間前か、国政選挙が行われる数カ月前から政党要件ギリギリの政党同士が合流して「数の力」を取り戻そうとするのも、こうした選挙事情や、政党の活動を支える政党助成金によるところが大きいといえます。
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