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参議院議員選挙2016

タレント候補は古今東西選挙に強い? (2016/6/10 政治山)

 夏の参院選に向け、各党で有名人の擁立が相次いでいます。テレビで活躍する芸能人だけでなく、すでに各界で有名な候補者は一般にタレント候補と呼ばれます。

 前回参院選でも、俳優の山本太郎氏や写真家の桐島ローランド氏など有名人が立候補し、話題となりました。今回も自民党が歌手の今井絵理子氏と元ビーチバレー五輪代表の朝日健太郎氏を、民進党が元TBSキャスターの杉尾秀哉氏、社民党が画家の増山麗奈氏、新党改革が女優の高樹沙耶氏を擁立する予定で、多彩な顔触れが並んでいます。

(左から)山本太郎 参院議員、橋本聖子 参院議員、丸川珠代環境相

(左から)山本太郎 参院議員、橋本聖子 参院議員、丸川珠代環境相

自民党の公募選出も「タレント候補」に

 自民党に至っては、今回初めて実施した一般・党員投票で公認候補者を選ぶ「オープンエントリー2016」でも、男性デュオ・東京プリンで有名な伊藤洋介氏が選ばれました。前回参院選に続く立候補となりますが、応募した458人の中から勝ち抜くあたりが、タレント候補の強さを示しています。

 一方で、立候補を断念した乙武洋匡氏や政治資金流用疑惑に揺れる舛添要一・東京都知事など、コメンテーターとして活躍した人物の相次ぐスキャンダルが影響し、ネット掲示板には有名人を安易に担ぐことに否定的なコメントも目立っています。

 情報が瞬時に拡散するIT社会では、公認内定直後に過去のスキャンダルや配偶者の経歴が露呈して問題視されるケースも多く、かえって党のイメージを傷つける可能性もあります。このため、各党とも人選は慎重にならざるを得ないのが実情です。

“タレント候補”は戦前から

 有名人の立候補は戦前からありました。歌人の与謝野鉄幹、作家の菊池寛など、各界で功成り名遂げた人物の立候補は、当時も話題になりました。戦後、当選した有名人が「タレント議員」と呼ばれたのは、1962年7月の参院選全国区でトップ当選した藤原あき氏からと言われます。

 1983年に参院選で全国区制が廃止され、比例代表制厳正拘束名簿式が導入されると、個人名での投票が認められず、アントニオ猪木・参院議員(2期)など一部の有名人を除いてタレント候補の擁立は下火になりました。

 1995年に参院比例区で当選したスピードスケート五輪メダリストの橋本聖子氏(4期)は、現役のアスリートとして競技を続けながら議員活動を行い、翌年のアトランタ五輪(自転車競技)に出場しています。

馳浩文科相

2006年にプロレスラーを引退し、まもなく議員歴21年となる馳浩文科相(文科省撮影の動画から)

非拘束名簿式の導入で参院選に多数擁立

 2001年の参院選から比例代表制非拘束名簿式が導入されると、個人名でも党名でも比例の一票として投じることができるようになったため、各党が知名度の高い人物に着目。舛添要一、大仁田厚、田嶋陽子、大橋巨泉の各氏が比例で次々と当選しました。

 衆院以上に参院でタレント政治家の活躍が目立つのは、衆院選が小選挙区比例代表並立制で、小選挙区で惜敗した議員の復活の受け皿に比例代表が利用されやすいのに対し、参院選は個人名の得票順に党内の比例当選順位が決まると同時に、党全体の得票にも寄与する制度の違いにあります。

 この年以降、選挙の度にタレント候補の是非が論じられるようになりましたが、選挙が一種の『人気投票』である側面は否めず、知名度が高いほど選挙にも強いため、各党の人気タレント探しはむしろ過熱しています。

 華やかさばかり注目されるタレント議員ですが、参院議員から鞍替えした元プロレスラーの馳浩・衆院議員(参院1期、衆院6期)は文部科学大臣に、元テレビ朝日アナウンサーの丸川珠代・参院議員(2期)は環境大臣に抜擢されるなど入閣を果たす議員も増え、人気と実力を兼ね備えつつあるといえるのかもしれません。

 野党に目を転じても、おおさか維新の会元代表である橋下徹氏やマルチタレントの肩書を持つ民進党代表代行の蓮舫・参院議員(2期)など党を代表する顔も増えました。

アメリカやフィリピンでは“タレント大統領”誕生

 海外では、銀幕のスターから米大統領に上り詰めた故ロナルド・レーガン氏や同じくハリウッド俳優からカリフォルニア州知事に転身したアーノルド・シュワルツェネッガー氏、映画監督としても活躍するクリント・イーストウッド氏は1980年代にカリフォルニア州カーメル市長を務めた時期もあります。

 阪神タイガースで今なお「伝説の助っ人」として語り継がれるランディ・バース氏はオクラホマ州議会の上院議員として活躍しました。フィリピンではジョセフ・エストラーダ氏が俳優から大統領になりましたし、モンゴル出身力士の先駆けだった元関脇・旭鷲山は同国の国会議員として大統領特別補佐官を務めました。

 日本では馳浩議員やアントニオ猪木議員など元プロレスラーの活躍が目立ちますが、K1ファイターとして日本でも活躍したミルコ・クロコップ氏はクロアチア国会議員を務めました。

 レーガン元大統領やエストラーダ元大統領など一国のトップリーダーに就く人物もいることから、日本でもタレント政治家に分類される人物が首相に就く日もそう遠くはないのかもしれません。

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