分裂・合流を繰り返す英国と日本の政党…2016年は両国にとって大変革の年になるか ニュースフィア 2016年5月31日
イギリスと日本の類似点についてはたびたび指摘されている。John Finnemoreは、1910年の著書「Peeps at Many Lands: Japan」で、「イギリスがヨーロッパから離れた群島であるように、日本はアジアから離れた群島である。よって2つの国は強い海軍の伝統を持っている」と述べている。日本の茶道とイギリスのアフタヌーン・ティーには大きな違いがあるが、両国がお茶を愛していることを類似点に挙げる者もいる。5月の終わりに私はお茶を飲みながら、2国の政党がこれまで、特に党の結成と改革において、いかに似た道を辿ったのかについて考えていた。
1981年の3月26日、イギリスで当時野党だった労働党の幹部4人が離党し、新しく社会民主党を結成した。いわゆる「ギャング・オブ・フォー(4人組)」は、防衛政策や欧州政策をめぐる意見の違いが、離党・新党結成の理由だと説明した。同年、同党は総選挙で勝利するために野党の自由党と選挙連合を結んだ。結果、多くの国民からの支持を得ることに成功したが、長くは続かず、社会民主党は1990年に解散した。
それから35年後の日本で、民主党と維新の党の代表が3月末に、両党が合流して民進党を結成すると発表した。
こういった動きは日本では珍しいことではなく、新党の結成はよくある出来事だ。特に2009-2010年は、しばしば重要なポストに就いている有名な人物の例もあり、そのことがよくわかる。舛添要一氏は好例だ。彼は、自民党政府の厚生労働大臣として、改革クラブに合流し、党名を新党改革に変更した。興味深いことに、イギリスの4人組のうちの一人、デイヴィッド・オーウェン氏もまた労働党政府の保健大臣を務めていた。舛添氏は現在東京都知事であるが、その前任者の一人、石原慎太郎氏は、すばらしいネーミングの「たちあがれ日本」(後の太陽の党)の2010年の結党メンバーであった。石原氏は、所属政党を変えることについても経験豊富だ。
イギリス議会の庶民院(下院)では、与党が「スピーカー」(議長)の右側、政府のメンバーは野党と左側に陣取る。そのため下院議員が所属政党を変更することを、「クロッシング・ザ・フロア(議会のフロアを横切る)」と表現する。最も有名な例はウィンストン・チャーチルで、1900年に保守党下院議員になった4年後に自由党に移籍。しかし第一世界大戦後に保守党に復党した。つまり彼はフロアを一度横切り、後に再度横切ったのだ。近年でより知られている「裏切り者」は、2人の元保守党下院議員(マーク・レックレスとダグラス・カースウェル)で、両名は保守党を離党して欧州懐疑主義を掲げる右翼政党、イギリス独立党(UKIP)に加入している。
イギリスのEU参加をめぐり高まる不満を背景に、UKIPの人気も高まっているが、この比較的新しい政党の下院議員は2015年の下院総選挙で選ばれたカースウェルただ一人しかいない。件の選挙では、スコットランド国民党(SNP)が議席を6から56に急増させ第三党となり、獲得議席8の自由民主党を第四党に追いやるなど、議会の構成に非常に大きな変化が見られた。この結果は、選挙前まで(2010年から2015年)保守・自民連立政権(日本では自民党と公明党が連立しているのと同様)の構成党として政権の座に就きまたとない機会を得ていた自民党にとっては大きな打撃となった。現在では11の政党がイギリス議会には存在し、日本と同数になっている。
では、これらの過去のパターンはどのような形で将来繰り返されるのだろうか?そしてそれぞれの政治システムの間で類似点は見つかるのだろうか?
きっとこれから数ヶ月間はイギリスの保守党および労働党にとって非常に興味深い時期となるだろう。6月23日のイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票をめぐり、「Brexit(EU離脱)」派の出現により、特に保守党の間で、政治的な亀裂が生じつつある。EU離脱派のなかで代表的な一人が、前ロンドン市長であり、党の将来の有望なリーダーであるボリス・ジョンソン下院議員である。一方、野党はといえば、労働党もまた、左寄りのジェレミー・コービン下院議員を新しい党首に選出したことに伴う混乱の最中にある。同氏は、別の元ロンドン市長、ケン・リビングストンに同党の防衛政策の見直しを行なうよう命じているが、そのことも党を二分しそうだ。
日本では有力な東京都知事が現在の国内政治において重要な役割を果たしているが、イギリスでもロンドン市長について同じことが言える。そして1981年に防衛とEUに関する政策をめぐる意見の違いから4人組が新党を結成したように、35年後にこれら二つの地域でもう一度、システムの大きな変化があるかもしれない。これから数ヶ月は政治にとって非常に興味深い期間となるだろう。
結論として、また、両国が島国であることによる類似点からして、私はそれぞれの国内政治システムにおいて、離党や党内派閥によって分裂が引き起こされるだろうと信じている。それでも日英両国で、党への忠誠や提携によって政党がまとまることを望んでいる。