居住地への評価、地方圏より都市圏の方が高い傾向に―18歳意識調査「価値観・教育」 (2025/1/16 政治山)
少子高齢化と大都市への人口集中で、自治体の機能を維持していくのが難しい市町村が増えています。昨年4月には人口戦略会議が、全国1,729自治体の4割を超す744市町村が今後約30年間に消滅する可能性がある、とする予測を公表しています。
そんな変化を受け日本財団は昨年秋、67回目の18歳意識調査(テーマ:価値観・教育)で全国47都道府県の17~19歳各100人、計4,700人を対象に、居住地(15歳当時に暮らした街)に対する印象・評価や進学意欲などを聞きました。次の時代を担う全国の若者を対象にした「地域間比較調査」の実施例は少なく、今後の地方再生の基礎資料になりうる調査結果となりました。
まず、大学進学予定では、3大都市圏中心部(首都圏・大阪・愛知等7府県の政令指定都市、東京23区)およびその周辺部が9~8割に上っているのに対し、地方圏やその周辺部では7割を下回っています。
また大学に進学しない理由では3大都市圏、地方圏とも「学費が高い」、「できるだけ早く自分では働いて生活したい」が1、2位を占め、進学意欲を高める事項としては、地域にかかわらず「自分自身の興味・関心に合致する大学がある」が最も多い数字となっています。このほか、3大都市圏で暮らす若者ほど、暮らした街に対し「将来の選択肢が多い」、「充実した暮らしができる」と評価する傾向が地方圏より高いことがうかがえます。
質問項目は広範にわたっており、詳細な結果とグラフは報告書に掲載されています。
今回の調査結果を受けて、日本財団の担当者は以下のように述べています。
「教育環境についてはやはり都市圏が有利である傾向が見て取れた。地元に対する思いの温度感や、ルーツによる価値観の違いでは大きな差はなかったものの、『自分には人に誇れる個性がある』『自分の行動で、国や社会を変えられると思う』では熊本・広島・岩手など都市圏以外の自治体が上位に入り、郷土の歴史や偉人なども自己形成に寄与する可能性を示唆するデータといえる」
■第67回「価値観・教育(地域間比較調査)」結果の概要
・暮らしていた街についての各設問に対し、「同意」と「どちらかといえば同意」と回答した人の割合
■調査結果抜粋
・15歳だった頃(中学卒業時)に暮らしていた街についての考え(都市タイプ別)
・15歳だった頃(中学卒業時)に暮らしていた街についての考え(都道府県別)
(1)将来の選択肢が多い
※「同意」+「どちらかといえば同意」の合計。各都道府県のn数は100。
(2)図書館・美術館等の文化施設が近くにある
(3)充実した暮らしができる
(4)塾・習い事の選択肢が多い
(5)15歳だった頃(中学卒業時)に暮らしていた都道府県で暮らしたいか(都市タイプ別)
(6)15歳だった頃(中学卒業時)に暮らしていた都道府県で暮らしたいか(都道府県別)
※「暮らしたい」+「どちらかといえば暮らしたい」の合計。各都道府県のn数は100。
■調査概要 第67回「価値観・教育(地域間比較調査)」
調査対象:47都道府県の16歳~19歳男女、各県4,700名(17歳~19歳を優先対象とした)
実施期間:2024年11月21日(木)~12月2日(月)
調査手法:インターネット調査
■第67回18歳意識調査「価値観・教育(地域間比較調査)」調査報告書(PDF / 1MB)
https://www.nippon-foundation.or.jp/wp-content/uploads/2024/12/new_pr_20250106_03.pdf
■18歳意識調査とは
民法の改正に伴い2022年4月には成人年齢も18歳となり、次代を担う18歳の意識を知り、また記録することの重要性が高まっています。日本財団は、選挙権年齢の引下げをきっかけに、2018年10月より、18歳前後の若者の価値観、政治・選挙に対する態度、社会課題の理解などを継続的に調査してきました。
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