反米から親米へ「中国のフルシチョフ」の期待 習近平政権が向かうもの 株式会社フィスコ 2017年6月25日
先月行われたトランプ米大統領と習近平国家主席の米中首脳会談。トランプ大統領がシリアや北朝鮮に対し次々と強硬な姿勢を示したことに注目が集まったが、このころ中国もまた、静かに国家戦略の大転換を行っていた。
この意味に気づいた人は、そう多くはないかもしれない。
米中首脳会談 トランプ氏は「傑出したもの」習近平氏は「巧妙」
トランプ大統領は習主席との関係を「傑出した」ものだと表現し、今後顔を合わせる機会をより一層増やしたいと語った。また、「多くの悪質な問題を解決することができると信じている」と今後の米中関係に対する期待感を示した。
この「悪質な問題」とは、おそらく中国と北朝鮮の共産主義と一党独裁体制を指していると考えられる。
習主席も、今回の米中首脳会談について、巧妙で創造的な構想などの意味の唐詩「匠心独具」に例えて表現。今後の米中関係を発展させるための「特殊で重要な意義」があったとの認識を示した。
習近平氏はトランプ氏に 体制変化の可能性について触れたか
計7時間も及んだ米中首脳の個人会談の内容がほとんど公表されていないが、その後、両国はたがいに大胆な政策転換をした。このことから、習近平氏はトランプ氏に、対米戦略の路線転換と、現体制を変化させることについて話題にしたと推測できる。
信じられないような話に見えるが、中国、ロシア、北朝鮮、シリア及び北大西洋条約機構(NATO)に対するトランプ大統領の外交政策がほぼ180度転換したのを見ると、あながち的外れな見方ではないことがわかる。
ロシアに対しては、米国は明らかに忍耐力を失っている。実際、ロシア政府に対する物言いもとげとげしさを増し、ついにはロシアの盟友であるシリアに対し、直接空爆を行った。今の米国はシリアのアサド政権に対し、かつてのオバマ政権時代のような懐柔と弱腰を繰り返すようなことはしていない。
アサド政権が化学兵器を使用したとして、トランプ政権は空爆を行った。トランプ氏いわく「時代遅れで」効果のないNATOは、今回の戦略的地位は際立っている。北朝鮮が常とう手段にしていた、絶え間ない挑発と虚言で国際社会からの注目と援助を求めようとする政策は、たちまち効果を失った。
中国なりの米歩み寄りか シリア非難決議案に異例の棄権=国連安保理
習近平政権は、これまでの反米路線の放棄
米国と同時に、中国も国家戦略の大転換を静かに遂行した。
習近平政権をよく分析してみれば、経済、貿易、領海領土、国の安全保障、世界動向など様々な表の動きの裏で、歴代の共産党指導者が歩んできた「反米」路線が全面的に放棄されていることが分かるはずだ。
江沢民時代までの対米政策は、表面的には協調路線を歩むように見せかけても、実際には徹底した反米政策を貫いてきた。
中米関係にとっても中国の経済や社会を発展させることに対しても、一番の足かせとなっているのが、中国共産党の独裁体制だ。現政権がこのことを意識してからは、共産党体制を放棄しようという動きが全面的に見られる。
トランプ大統領は会談以後、「習主席は正しいことをやろうとしている」と発言した。この「正しいこと」とは、習政権の中国が、すでに反米政策を放棄して米国と真の同盟関係を結ぼうとしていることを指している。
反米路線 正義という名のパワーへの恐怖から
中国共産党が本気で反米路線に舵をとったのは、米国に代表される国際的な正義というパワーによって、世界中の共産主義勢力を排除するとの動きを恐れたからだった。
冷戦期間中には、中国当局は旧ソ連による核の脅威の対抗策として、米国と協調してソ連をけん制した。しかし、口で「反米」と言わなくなっただけで、国民の反米意識をあおっていた。
米国人の眼には、中国人は反米的に映る。実際には、中国人の誰もが、自由主義の米国に逃げたいと思っている。密入国、留学を終えてもそのまま居座る、投資移民になる、あるいは逃亡や避難といった形で、米国を目指す中国人は後を絶たない。
老若男女、身分を問わず、全ての中国人は米国に行きたいと思っている。中国人は反米的どころか、みんな米国が大好きだ。
では結局、誰が反米なのか?
結局、誰が反米なのかといえば、中国共産党体制、中国共産党の関連団体、そして中国共産党の核心だ。これらはみな共産主義のイデオロギーから由来する本物の反米だ。
だから習政権が反米政策を放棄することの真の意味は、中国社会にある反米要素、反米パワー、反米の核心となっている中国共産党という独裁集団を放棄するということになる。
中国による反米政策と共産主義の放棄を示す1つ目の象徴が、対北朝鮮政策の転換だ。米中首脳会談後、習政権はすぐに北朝鮮に対しより厳しい経済制裁を開始した。北朝鮮からの石炭が大量に返還された。対中石炭の輸出は北朝鮮にとって資金調達の重要手段である。
次の段階としては、中国当局は北朝鮮との友好条約『中朝友好合作互助条約』を破棄することになるだろう。この条約は1961年7月11日に、北京で周恩来総理と金日成総書記が調印したもので、どちらか一方が戦争になった場合、もう一方が軍事面及びその他援助活動を全力で行うと記されている。この条約は2度の自動延長を経ており、次の有効期限は2021年を予定している。
仮に米国が北朝鮮に対し武力行使しても、中国は傍観を決め込むだろう。習主席がトランプ大統領に約束した北朝鮮への説得は、実際には最後通牒だ。
あるいは金正恩総書記に政権を手放し、他国への亡命を勧めるだろうが、金総書記は首を縦に振らないだろう。そうなれば中国はこれ幸いと北朝鮮問題から手を引いて、米国のすきにさせるだろう。
中国、金正恩氏へ「亡命」説得か 有事回避のため=韓国メディア
国際情勢とは奇妙なものだ。1950年に起きた朝鮮戦争では、中国は北朝鮮と共に米軍と戦った。だが今回は同じ朝鮮半島で、中国軍と米軍が手を取り合って北朝鮮体制を叩き潰す可能性がある。
習政権は北朝鮮に圧力をかけ、核開発の放棄を迫っている。中国が今本気に北朝鮮を制裁し始めているのは、米国が金正恩共産党政権をつぶすのをサポートしようとしている。
北朝鮮に見切りをつけるということは、北朝鮮の共産党政権を見限るということだ。北朝鮮以外にも、キューバやベトナムといった他の共産党国家も共産主義の色を薄くなっている。これは、共産主義が世界から跡形もなく消え去ろうとしていることを意味している。北朝鮮の共産党政権崩壊が完了すれば、中国も遠からずそうなるだろう。
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中国の反米路線の転換や共産党体制を崩壊させる動きに対し一番敏感に反応し、それを最も恐れているのは、当然のことながら毛左勢力(毛沢東を盲信する左翼勢力)や江沢民派勢力、そして党内に存在する利益集団だ。
いまの習近平政権に対する攻撃は、これらの集団の複合体によるものだろう。彼らはおそらく協力して現政権に圧力をかけてきて、反米政策の継続を要求し、共産党体制を維持させようと抵抗する。
ある「五毛党(当局の指示によりネットに書き込みをして世論を誘導する人々)」は「習は現代のフルシチョフだ」とコメントした。これは正に、習主席がこれから到達し得る歴史的地位を指しているように見える。フルシチョフの最大の功績は、スターリン思想を排除する一連の政策を行い、スターリン体制下にあった旧ソ連で、大粛清により迫害された人々の名誉回復を行ったことだ。習主席もこれに倣うことができるだろうか。今後に注目したい。
(翻訳編集・島津彰浩)
【ニュース提供・大紀元】
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