NYの視点:トランプ米大統領の対中策略 株式会社フィスコ 2017年4月4日
4月6日-7日に米国のトランプ大統領と中国の習国家主席との会談を控えた3月31日、トランプ大統領は不公正貿易の是正に向けた2つの大統領令に署名した。大統領令の1つは貿易赤字の原因を相手国ごとに究明し、90日以内に報告するよう商務省と通商代表部(USTR)に指示する内容。2016年のモノの貿易で米国が多額の赤字を計上した国を調査対象としており、日本や中国に加え、ドイツやメキシコなどが含まれる。さらに、相手国の不公正貿易に対する制裁関税の実効性を高めることを目指し、法律違反への対策を実施する。知的財産権を侵害する偽造品の輸入防止策の強化も求めた。
トランプ米大統領は選挙中から中国を「人為的な操作で通貨を安くし、製造業での競争力を高めている」と非難。大統領就任と当時に為替報告書の中で、中国を為替操作国に認定すると訴えてきた。ここにきて、トランプ大統領が貿易改革に焦点をあてているのにはわけがあるようだ。
トランプ米大統領は英フィナンシャルタイムズ紙との先週末のインタビューで、中国国家主席との会談で高まっている北朝鮮の核問題への対処を協議することを明らかにした。今週、フロリダ州にある大統領所有のリゾート施設「マーアーラゴ」で、米中首脳会談が予定されている。もし、中国が北朝鮮への圧力を強化しなければ、北朝鮮の核脅威を取り除くために、単独で行動することも辞さないと警告した。米国政府の見解では、北朝鮮が最も差し迫った脅威。オバマ前大統領は、トランプ大統領に北朝鮮による核兵器や長距離ミサイルの開発を警告したという。
米国にとり、コアの問題は北朝鮮。北朝鮮の脅威への対処で、中国の協力が必要となる。トランプ大統領は、貿易問題をレバレッジとして利用し、北朝鮮問題で中国の協力を得ることが真の目的のようだ。北朝鮮問題の対処で中国の協力が得られた場合、中国に対して貿易や通貨問題で米国が態度を大幅に軟化させる可能性もある。米国が貿易改革で、赤字是正を強化するとの警戒感に円も下げにくい展開となってきたが、米中首脳会談の結果次第で円売りが再燃する可能性もある。
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