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NYの視点:ハードブリグジットはリスクも、ドルの良い買い場に  株式会社フィスコ 2017年1月10日

関連ワード : イギリス 金融経済 

2017年度に入り、英国の欧州連合(EU)離脱準備がいよいよ本格化する。英国は、EU単一市場へのアクセスを維持すると同時に、移民制限を望んでいる。一方、EU側は、「英国のえり好みを許すことは、致命的な結果を招く」と、断固としてこれを阻止する姿勢を崩していない。ドイツのメルケル首相は、「英国は、自由な人、資本、物やサービスの移動を承認しない限り、EU市場への完全なアクセスを期待することは不可能だ」と主張。一方で、「我々は英国と良好な関係を望むことを明確にする必要がある」とした。

金融市場では英国がEU離脱しても、単一市場へのアクセスが維持できれば、混乱は避けられると見ている。実際、EUに参加していないノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインは欧州経済領域に参加しており、欧州連合の単一市場に組み込まれている。一方でスイスは欧州経済領域には参加していないが、両者の間での協定や欧州自由貿易連合を通じて単一市場に関与しているなど、様々な形がとられている。

しかし、メイ首相は、週末行われたスカイ二ュースとのインタビューで、EU単一市場へのアクセスを維持することよりも移民の抑制を最優先課題としている方針を示した。市場でハードブリグジット警戒感が高まったため、首相は9日、「ハードブリグジット、ソフトブリグジットという文言を使用しない」「我々は英国にとり最善の協定を実現する」と訴えている。

離脱プロセスの開始を本年の春ごろに控えて、「離脱方針をめぐり政府が混乱している」と、アイバン・ロジャーズ駐欧州連合(EU)大使が突然辞任。ロジャーズ駐欧州連合(EU)大使はEUと新たに貿易協定を締結するには10年かかると警告していた。首相はこれを否定。複雑な問題を時間をかけて検証し正しい方針を示すことが重要だとし、今後数週間内に詳細が発表されるとした。

ハモンド財務相もインタビューで、「単一市場へのアクセスに関する決定はまだしていない」と、市場の不安心理を鎮めることに努めた。一方、EU離脱に関する協議を2019年4月までに終了することを目標にしていることを明らかにした。

●単一市場の定義商品の移動に係る制限の撤廃人、サービス、資本の自由移動に対する障壁の撤廃域内での競争を歪曲しないように保証する制度の創設市場統合に必要な各国の法制の調和各国間接税の接近が達成された市場

英国のハードブリグジットのリスクは存続する。しかし、米国ではトランプ次期大統領が20日に正式に就任後、財政刺激策、減税、規制緩和を実施し景気を押し上げるとの期待は高い。米国経済の強い成長は世界経済にも好影響を与える。英国のEU離脱問題を相殺する可能性もある。リスクが「域内にとどまる」、または、「一時的」との見方も根強い。このため、リスクが再燃した際、ドルの良い買い場となる可能性も強いと考える。

<SK>

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