NYの視点:欧州政治的リスク存続 株式会社フィスコ 2016年12月6日
来年にかけて、欧州の政治リスクの上昇が、警戒されている。イタリアの国民は、様々な法令の成立を容易にすることを目的に、上院、地方政府の権限を中央政府に移行することを目指した憲法改正を国民投票で否決した。
レンツィ首相は公約通り辞任する意向を表明。この結果を受けて、「ノーボート」を推進していた反ユーロを掲げるイタリアの新興野党「五つ星運動」は新政権に就く用意があると表明した。しかし、マッタレッラ大統領は、選挙まで、テクノクラット、技術的官僚による暫定政府を樹立する見込み。一部の専門家は、テクノクラット暫定政府が選挙法を改正し、反ユーロを掲げる「5つ星運動」の権力が強まるのを防ぐことを期待している。「5つ星」はユーロ圏からの離脱の是非を問う国民投票の実施を目指しており、今後の動向次第では、再び波乱も起きかねない。
また、オーストリアでも先週末大統領選が行われた。有力候補だった極右政党、自由党に所属するノルベルト・ホーファー議員が敗北。同候補は、欧州連合(EU)で英国離脱後に中央集権が強まれば、オーストリアでも離脱を問う国民投票を実施するよう訴えると主張していたため、同候補の敗北はいったん市場に安心感を与えた。
英国が欧州連合(EU)離脱を決定後、他のEUメンバーの中で、離脱を求める動きが強まる可能性が懸念されている。欧州の政治リスクは来年も存続する。来年は3月にオランダの選挙。4月にはフランスで第1回目の選挙、5月には第2回目の選挙実施が予定されている。秋にはドイツが総選挙が控えている。
2017年欧州の主な政治的イベント予定
3月:オランダ選挙
4月:フランス、第1回目選挙
5月:フランス、第2回目選挙
秋:ドイツ総選挙
欧州中央銀行(ECB)は8日に定例理事会を控えている。政策金利の変更は予想されていないが、この会合で、ECBは来年3月に期限がくる量的緩和(QE)プログラムを6ヶ月延長すると見られている。一時は、債券不足からQE縮小の思惑も浮上したが、ドラギ総裁は欧州連合(EU)議会証言などでも、欧州の経済には緩和策が依然必要だと強調。特に、イタリア国民投票で、憲法改正が否決され、イタリアの銀行の回復がより困難となったことからも、QEの延長は必至か。ドラギ総裁は政治的なリスクにも言及している。
また、総裁は債券不足には対処可能としており、今回の会合では、基準の緩和も予想される。現在、利回りが預金ファシリティレート(-0.4%)を下回る債券の購入は不可能。条件の緩和次第では、これ以下の利回りの債券購入も可能になる。QEの延長はユーロ売り再燃につながる。
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