イングランド銀行の「中央銀行仮想通貨」は実を結ぶか、ヴィクトリア・クレランド氏がスピーチ (2016/9/13 ビットコインニュース)
この何十年かで、テクノロジーによってさまざまなビジネスモデルが変化している。革新的テクノロジーは日常生活に必要不可欠なものではないが、UberやAirbnb、Netflixのようなサービスは新たな需要を喚起することで、古来のビジネスを破壊し人々のライフスタイルを一変させた。そして今、その波は金融へも影響を与えようとしている。
一時はBrexitで騒がれたイギリスだが、政府を上げたフィンテックへの取り組みの手を緩めてはいないようだ。
イングランド銀行の紙幣部門責任者を務めるヴィクトリア・クレランド氏は先週、ロンドンで開催された第二回世界P2P金融システムワークショップ「P2P FiSy 2016」の場で、ブロックチェーンがもたらす金融への影響について語った。
「テクノロジーの余波は金融へも及んでいる。我々の領域は既にその殆どが電子化されており、おそらく、どの業界よりも最も大きな影響を受けるはずだ。」
イギリスがフィンテックやブロックチェーンに積極的な姿勢を見せているのは今に始まったことではない。2015年2月には、早くも中央銀行による仮想通貨発行についての討論が公開され、またイギリス政府もフィンテックに多大な予算を投じるとともに、ブロックチェーン技術の活用に向けた研究チームも組成している。
今年6月には、マーク・カーニー英中銀総裁が「中央銀行が仮想通貨を発行するのはしばらく先のことになる」と述べた一方で、イングランド銀行においてはリアルタイムグロス決済へのブロックチェーン技術適用に向けた研究を進めていることも明らかにしている。カーニー総裁は、このような銀行決済システムにおいてはブロックチェーン技術の有用性は計り知れないとコメントしている。
こうして見ると、イングランド銀行は仮想通貨の発行を考慮から外したとも受け取れるがそうではない。クレランド氏はスピーチの中で、依然として「中央銀行による法定仮想通貨の研究は続いている」と述べた。
中央銀行が仮想通貨を発行すると、何が起こるか。「理論的には、個人や企業が、中央銀行に口座を作成できるようになる」とクレランド氏は語る。現在は限られた銀行のみが中央銀行に口座を作成可能だが、そのような制約は完全に取り払われることになる。
「中央銀行が預金機能を持つことで、多くの人々が商業銀行から中央銀行に預金を移すでしょう。中央銀行はしかし、融資の機能を持たないため商業銀行から預金が失われることで、多くのクレジットが市場から失われかねません。」
そして、ブロックチェーンが成熟した技術ではない点も懸念のひとつだ。クレランド氏によれば、中央銀行が仮想通貨を発行するためにはブロックチェーン技術が不可欠になる一方で、そのセキュリティレベルやスケーラビリティに関してはあまりにも未知数な点が多く残されているとのことだ。
- 関連記事
- 71億円の損失を充当するBFXコインとは結局何なのか
- アフリカで静かに拡がるビットコインの波
- フィンテックと仮想通貨に潜む足かせ、米国で拡がる規制標準化への期待
- 「人々に民主主義の可能性と政府を信じて欲しい」FollowMyVoteが目指すブロックチェーン投票の未来
- ブラジルでビットコインが金の取引量を上回る