世界の今をレポート!「イギリスのEU離脱、ESGへの影響は?」 (2016/8/1 EcoNetworks)
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まさかの「EU離脱」となった国民投票から早1か月。
イギリスで3番目に残留に投票をした人口が多かった(78%)ロンドン・Hackneyにある我が家の通りでは、国民投票の翌日には、窓にEU旗や手書きのポスターなどを窓に掲げEU離脱に反対を示す家がたくさん見受けられました。
Facebook上ではすぐさま、EU市民にストを呼びかける企画等が立ち上がり、7月2日にはロンドン市内で大規模な反EU離脱デモが企画され、4万人近くが参加するなどの動きもありましたが、思いのほか早く、テリーザ・メイの党首および首相就任といった形で政局が落ち着き、EU離脱に向けて着実に前進しつつあります。
いつEU離脱通告をするのかといった点が注目される中、CSRやESGに対するBrexitの影響についてもちらほらと議論が始まっています。
オランダのESGリサーチ会社Sustainalyticsが、国民投票の翌日に、気候変動、リサイクル、大気汚染、人的資源、品質基準、安全・衛生、コーポレートガバナンス、役員報酬、知的財産の9つのESG投資の観点からBrexitがESGに与える影響を論じたレポートを発表した他、欧州企業も第二四半期決算にBrexitの影響予想を含め始めています。
BrexitのESG投資への影響について個人的に気になるのは気候変動と人的資源の分野の行方です。イギリスのエネルギー・気候変動政策を担っていたエネルギー・気候変動省がメイ首相によって廃止され、「ビジネス・エネルギー・企業戦略省」に再編されたことで、気候変動への取り組みに対するプライオリティが下がるのではないでしょうか。
ただ、全体的には、EUのESG、CSRの枠組み・取組みが混乱・失速することはないのではないかと考えています。ESGにおいては、北欧やオランダなどの投資家がESGを重視している印象ですし、CSRについても、現代奴隷法などイギリス国内の法律がEUの法令よりも先を行っている部分もありますが、EU法令に規制されるEU市場でビジネスを行う欧州巨大企業がいる限り、EUのESG、CSRの取組みは緩まらないのではないかと感じられます。
人的資源については、今後の交渉次第ではEU市民の滞在許可に影響が出るので人材の確保が難しくなり、イギリス企業の競争力が下がる可能性が大いにあります。
近年のイギリスを代表するセクターである金融や映画・デザイン・IT等のクリエイティブ産業では、イギリス人よりもEU出身者が多く働いていることも。
身近なところでは、主人が働くロンドンのスタジオでも、従業員の半数以上がEU諸国出身です。多くはフランスなどの一流アート系大学を出て、仕事の機会が多いロンドンにやってきた20代・30代。「移動の自由」を謳歌して育った彼らは、ロンドンに何年も暮らし、税金も納めているのに自分たちの生活に直接影響する国民投票に参加できなかったことに苛立っており、EU離脱交渉の内容次第では、他のEU諸国やカナダへの移住を考えているといった声も聞こえてきています。
いずれにしても、メイ政権がEU脱退を正式に通告し、離脱交渉の内容が見えてこない限り様々な議論は憶測に過ぎませんが、様々なEU法令の枠組みから離れることになるイギリスの行方にはしばらく注意が必要です。
by Y・O @英国
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