トランプ大統領誕生で日本はどうなるのか!?~地政学リスクの高まりと米国向け輸出減少が懸念 株式会社フィスコ 2016年11月9日
市場関係者の大方の予想に反して、米国の新大統領はトランプ氏に決まった。今後の日本への影響はどうなっていくのだろうか?今回の選挙はトランプ氏が予想以上に大勝した印象が強い。議会運営においても、トランプ大統領の意向をそれなりに汲み入れながらの展開になっていくことが想定される。
まず、問題となるのは日米安保体制であろう。もともと、トランプ氏は、在日米軍に対する日本の負担増大、あるいは日本からの在日米軍撤退の可能性なども示唆している。日本の軍事費は2倍程度にまで大きく膨らむ可能性も指摘され、また、憲法改正を視野に入れた解散総選挙の実施タイミングが早まることになりそうだ。対中国を念頭に置けば、在日米軍の必要性は米国側でも高いとみられるが、イスラム国への攻撃参加なども要求しかねず、防衛費の増加は避けられそうにない。
また、強い保護主義政策が予想されることからも、TPPは白紙化する公算が大きい。日本からの輸出品に対する関税の強化も強まると見られ、自動車関連など米国向け主体の産業にはネガティブなイメージが強まろう。ただ、資金還流促進税制の導入などはドル高円安要因になるため、ある程度は相殺されることになる。海外企業の米国現地法人に対する姿勢は不透明だが、法人税減税なども想定していることから、日本企業の米国進出が進む可能性はあろう。移民政策を強化することにより、米国企業の国内回帰が進んだとしても、米国の個人消費は減少に向かう可能性がある。日本企業全般では、先の関税強化と合わせて、米国向けの輸出は減少することになりそうだ。
地政学リスクは高まることになる。トランプ氏は対中国に対しても強硬路線とみられるが、これは中国の軍事化、対外強行策を強化させることにもつながる。米国と日本の安保体制が脆弱化するに従い、日本の核開発などを中国が想定することになると、対日圧力を相当程度強めさせることにもなろう。
(佐藤勝己/フィスコ 株式チーフアナリスト)
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