【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】
第7回 無限の可能性に挑戦~笑顔あふれる地域づくりを目指して (2015/5/28 岩手県一関市 商工労働部工業課 主任主事 小野寺嘉奈)
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第7回は岩手県一関市 商工労働部工業課 主任主事の小野寺嘉奈さんによる「無限の可能性に挑戦~笑顔あふれる地域づくりを目指して」をお届けします。
部会に参加した1年間、実現した5つの取り組み
私は、岩手県一関市の1期生として、2014年度人材マネジメント部会に参加させていただいた。「これまで受講した研修とは何となく違う」と感じたが、戸惑いや不安よりも、好奇心旺盛な自分が、新しいことを始める前のワクワク感と無限の可能性に挑戦できそうな期待感を抱いての参加であった。
部会を通じてメンバー3人は、地域のために職員一人ひとりがやりがいを持ち、笑顔あふれる組織変革のきっかけになるような活動を目指して、主に5つのことに取り組んだ。
(1)職員意識調査では、課を越えた連携不足や、事業削減の議論不足による業務量の増加などの課題が見えた一方で、「やりがいを持って仕事をしている」と回答した職員が多く、組織改革の必要性に関する意見も多く寄せられた。職場内の協力し合う雰囲気や職員のモチベーションが高いことなど、組織改革の下地があることが分かった。
(2)組織内で影響力のあるキーパーソンへのインタビューでは、志高く価値前提で考えて行動している人や、自分たちの活動に巻き込みたい人という視点で対話することができた。組織を変えるためには、まず自分から即断即決で行動することが大事で、チームワークを強化するために管理職と部下の相互での伝える工夫の余地があると感じた。
(3)市長など経営層とのダイアログ(対話)では、ドミナントロジック(思い込み)を外してフリートークができ、「“まじめな雑談”の必要性」や「一歩前に踏み出す、をはみ出すにする」など組織改革のヒントとなるキーワードをたくさん得ることができた。経営層と対話することで思いを共有できると感じ、ボトムアップ型の提案を実行に移せる土壌づくりにつながったとも感じた。
また、(4)「ICHINOSEKI人マネ通信」の発行や(5)オフサイトミーティングの開催により、私たちの活動を知ってもらいながら、多くの職員を巻き込むきっかけづくりと仲間意識づくりを図った。職場や年代の違う職員と話す機会はとても貴重で、ダイアログでお互いを知ることができ、とても有意義だった。このことは職員同士がもっと日常的に自由に話し合える機会(場)が必要だと改めて気づかされた。
このような取り組みを踏まえて、組織内では有志グループによる自己啓発のための情報共有や職員同士のつながりづくりなど動き出す職員が出てきたこと、市長や副市長から率先して“まじめな雑談”を働きかけていただくなど、変化が表れてきたと感じている。他部署で接点のなかった職員から話しかけられたり、所属を越えて相談しやすくなったり、前向きな意見交換ができたり、少しずつではあるが、私たちの取り組みに対し、興味を持っていただき、職員の相互理解につながっていると感じている。これからも仲間の輪がどんどん広がり、組織改革の種が芽生え、大輪の花を咲かせ、やがて豊かな実を結ぶよう継続して取り組んでいきたいと思っている。
人マネ部会が「これまでの研修」と違う理由
この部会は、日常業務を離れ、全国のマネ友と異空間で真剣に話し合える場である。言い換えれば、ありたい姿を目指して価値前提で自分がやることを明確にし、常に内省しながらも行動につながる自分の考えと深く向き合える時間である。最初に感じたこれまでの研修との違いはここにあって、「そもそも研修でなく、研究会に参加している」と幹事団から説明を受け、納得した。
研究には答えがなく、誰かが教えてくれるわけではない。地域を良くするために、どうすればいいのかを単なる提案だけでなく、組織や地域の現状をしっかり把握したうえで、どのようにやるのかを深く掘り下げて考え、まず自分が実践し、結果を検証し、立ち位置を変えて再考し、改善し実践する、ということを繰り返し行わなければいけない。
そして、自分事としていつも考えていると、これまで見逃していたことにふと気づくことが増えてくる。意識的に考える癖がつくと、小さな課題が見えてきて、その解決のためには自分ひとりの考えだけでなく、周囲と話し合いを重ねなければならないことに気づく。仲間や地域の人たちと一緒に考えることで、中身の濃い具体策に気づくことができる。
気づきのチャンスは常に目の前にあり、アンテナを高く広く張り巡らし、気づくための感性を磨く。自己研さんと学びは感性の糧となり、スキルアップだけでなく、周囲に波及させていく。課題は日常の中に潜んでいて、そこには必ず解決につながるヒントも隠されていると思う。まず、「何ができるか」と気づくことが大事で、そこから行政として「何をすべきか」の目標と危機管理を具体的にイメージする。単独行動や一方的な押し付けでなく、地域の話に耳を傾け、しっかり聴きながら、対話を重ね、協力して様々な施策を展開していく。
シンプルな答えは、「誰がやるか」ではなく、「自分がやるにはどうすればいいか」を真剣に考え、前を向いて行動することだと改めて学んだ。
個性を生かして、気づいたらどんどんやりましょう!
私は地域や人が好きで、地域のためにベストを尽くし、同時に地域にとって自分が最大限活かされるよう、お互いに認め合いながら楽しく仕事をしたいと常に意識して取り組んでいる。地域のために働くことが喜びで、私の感じる楽しさを周囲の人たちにも伝わるように、惜しみなく全力投球し、時には温かく見守って支えられる職員でありたいと思っている。
行動は、すべて自己責任であり、他人と過去を変えることはできないが、自分の考え次第で、自分と未来を変えることができ、結果を変えることにつながる。人でもモノでもコトでも、すべての出会いは必然である。一期一会を大切にし、丁寧な対応をする。自由な発想でまずやってみて、ダメならやり直せばいい。答えは1つでなく、失敗してもやり直せばいいと感じることができたのも、全国の人マネと交流でき、気づき励まし合ったからである。
微力ではあるが、無力ではない活動を続けていくことで、無限の可能性に挑戦しながら、全国の仲間と情報を交換し、地方からゆっくり着実に邁進してまいりたい。
今日も明日も明後日も、笑顔あふれる地域から、全国、そして世界に向かって。
- ■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
- 安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。