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【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第6回 変わるのは自分から (2015/4/30 静岡県御前崎市 都市建設課 松井厚樹)

関連ワード : 公務員 御前崎市 静岡 

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的にリーダー育成する、自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。第6回は静岡県御前崎市 都市建設課の松井厚樹さんによる「変わるのは自分から」をお届けします。

◇        ◇

 御前崎市が人材マネジメント部会(人マネ部会)へ参加して2014年度で6年目を迎えマネ友も18人になりました。私が当市の1期生として部会に参加した当時は、全国から18自治体40人前後の参加数で、2014年度と比較してもかなり小規模でした。

 私が参加した2009年度は、当市が合併して5年が経ったころで、庁舎内にはギスギス感が漂う雰囲気で、職員同士の探り探りの会話に違和感を抱いていました。私は「職員同士が仲良く、自由に意見が言えて、笑顔あふれる職場」になるようにするにはどうしたらいいのかを考えあぐねていました。

人マネ部会と出会った当時の私

 このような思いを持ちながら参加した人マネ部会でしたが、出馬幹也幹事をはじめとした幹事団からの講義、参加者とのダイアログを通じて、目指す理想の姿を掲げ、その実現に向けての手段や自己変革を熱く語り、教えてくれる場所と出会ったことが嬉しく、そして楽しく思っていました。

 私たちは、その年に御前崎市の風土変革を狙い、いくつかの施策を立て実行に移しました。1つは、「Lunch de視聴(市長)」と題してランチを食べながら、市長の市政に対する思いを聞き、市長と意見交換をするもので、課長補佐以下すべての職員を対象に実施しました。結果は「市長と話す良い機会になった」「市長の思いが聞けて良かった」「このような機会をもっと作ってほしい」などの声をいただきました。また幹事キャラバンを活用して階層ごとの職員研修を3回実施しました。

市長とランチをしながらの意見交換

市長とランチをしながらの意見交換

 このころの私は目的と手段を混同し、計画した施策を実行すれば、すぐにでも組織・個人に変化が現れる、参加した職員は気づいてくれるという思い込みがあり、人を変えよう、人の考え方を変えよう、組織を変えようと一生懸命に動いていたように思います。そしてそれが正しいと信じていました。

 ベーシックが終わってからアドバンスへの誘いもありましたが、学んだことを自分の役職(係長)で実践しようと意気込み、偉そうに自分の意見の主張していました。しかし、結果は想像通り目に見える変化などはなく、どうしたらいいのか悩んでいました。ですからベーシックを終えた4年間、どんな小さなヒントでも人マネ部会からもらえれば、気づくことができればと考え、毎年のシンポジウム、当市や近隣市で開催する幹事キャラバンなどに参加していました。

出馬幹事による部課長を対象にした研修(2009年)

出馬幹事による部課長を対象にした研修(2009年)

訪れた変化と気づき

 ある時、「かっこいい」と言ってくれる職場の仲間が現れました。もちろん容姿ではなく、「市役所内を変えようとしている思いや考えがぶれてないところ」だと誉めてくれました。そして何より、私たちが実行した市長とのランチや幹事キャラバン研修などを見ていて「自分も仲間に入りたい、やってみたい、そうなりたい」という気持ちを口に出してくれたことがうれしかったです。仲間が1人増えた気持ちになりました。その後、その同僚とは良い相談相手になり協力できる仲間になっています。

 また新たな気づきとしては、夏のシンポジウムだったか、幹事キャラバンだったかは確かではありませんが、幹事の1人から「人を動かすには順番がある。『理解』→『納得』→『共鳴』→『行動』である」との言葉を聞いたとき、人が動くのにこのようなプロセスがあり時間がかかることなんだと腹落ちしました。そして、こちらからの主張や押し付けでは、そっぽを向くことはあっても、動くことは少ないと思いました。自分が相手側に立って寄り添い、話を聴き、話をして、心の奥底に火を灯してあげなければ、それには自分自身が変わらなければ何も始まらないと気づきました。

5つのキーワードと目標

 それから考えました。自分をどう変えていこうかと。以前、同僚の女性から「もう少し人の話を聴いてください」と叱られたことがありました。自分のことばかり話し、相手の話しを聴いていませんでした。相手の話を3分黙って聴こうという目標を立て実践してみました。その結果、今まで意見が食い違っていると思っていた相手の話す内容が理解でき、お互い納得する話しができたことに驚き、それ以降大きな対立もなく過ごせました。これはほんの些細な事例でしたが、私の中で自分を変えてみようと実践した初めてのことでした。

 そして、悩みながら実践し、離れたくないと思っていた人マネ部会にもう一度参加してみよう、更なる自分の成長のために参加を決意し、2014年度のアドバンスコースに参加しました。参加者は2013年度にベーシックコースを終えたメンバー4人がいて、私は浪人生のような気分で参加しました。私はそこで「変わるのは相手ではなく自分の方である」と学びました。「1人ひとりに役割があり1人ひとりにそこに応じたリーダーシップがある」ことも学びました。

 そして、学んだ中から私が考えるリーダーシップは「情熱を持って取り組み、仲間に愛情を注ぎ、言動に自信を持ち、仲間から信頼される。そしていつでも自分自身を成長させていく」この5つのキーワードだと考えました。そして自分なりに目標もたてました。5つのキーワードを心に置き「人に主体的に動いてもらうように影響を与えることのできる人」を目指します。

 私にとって人マネ部会に参加したことは、多くの人と出会い、多くのことを考えた心に残る研修でした。まさに「研修」ではなく「研究」でした。もちろん今でも、そしてこれからも人マネ精神を心に持ち続け、家庭、職場そして地域で活かしていきます。私に気づきを与えてくれた皆様に出会えたことに感謝します。

静岡県御前崎市 都市建設課 松井厚樹さん

静岡県御前崎市 都市建設課 松井厚樹さん

■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
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