アジア太平洋障害者芸術祭(下)障害者・健常者の分け目なくなる (2018/5/22 日本財団)
DAZZLEとBOTANのコラボに成果
「障害者・健常者の分け目なくなる」
シンガポールで行われたアジア太平洋障害者芸術祭「True Colours Festival」で、「Seek the Truth(真実を求めて)」を披露したダンスカンパニー DAZZLEと障害がある若者7人のダンスチーム BOTANは、この公演のために結成されたダンスチームです。BOTANのメンバーはオーディションで選ばれ、約2カ月半の練習を経て、アジア太平洋障害者芸術祭のオープニングを見事に演じきりました。
メインダンサーのひとりとして参加したのは、聴覚に障害がある梶本瑞希さん(15)。毎週末行われた練習に大阪から通いました。ダンスを始めたのは3歳で、お兄さんが通っていたダンス教室に母親と行っていたことがきっかけです。普通のダンス教室のため手話等のサポートはありませんが、小さい頃からの常連で先生との円滑なコミュニケーションが築かれているため、レッスンに支障はありません。
アジア太平洋障害者芸術祭に向けての練習では表現力が課題となり、スタッフがつくった音のイメージや情景・感情を説明した資料を参考にしていました。また、「アジア太平洋障害者芸術祭が終わって皆に会う機会がなくなるのは寂しい」と語り、1回1回の練習と皆で集う時間を楽しんでいました。
西村大樹さん(23歳)もダンス経験が長く、中学2年からダンスをしてきました。軟骨無形成症(低身長症)の西村さんは、最初は野球とダンスを並行してやっていましたが、ダンスは体の小さい・大きいに関係なく、逆に身体を個性としてそのまま表現の武器にすることに気付き、ダンスを選択しました。
これまで一人のダンスが中心だった西村さんはその理由を「群舞は人とぶつかって迷惑になるから避けてきた。自分のできる範囲で表現してきた」と話しました。今回は健常者と障害者のコラボによる群舞であり、西村さんには大きなチャレンジでした。
「決められた振り付けに対して自分の可動域があり、自分のできることは自分しか分からない。そういった場面に直面した時に、この動きはこうしたらどうかと仲間と相談しながら作る空気がここにはあり、自分の身体的特長を生かした表現に変えていくことができる」と語っていました。
DAZZLEを主宰する長谷川達也さんは、「ダンスは人と人の繋がりを生み、一緒に踊った後はみんなが仲良くなります。今の社会は、家から出なくても、ダンスをしなくても、十分に楽しく過ごせますが、ダンスには家では得られないエネルギーや感動があります。それを広めていきたい」と、ダンスによる人生の豊かさを訴えていました。
シンガポールの芸術祭に同行し、BOTANとDAZZLEのリハーサルと本番を手話で支えた手話通訳者の武井誠さんは、練習を重ねるうちに彼らの関係性が変わっていったとして、「メンバーが手話を覚え始め、手話通訳を介さなくてもコミュニケーションするようになると、障害者・健常者という分け目がなくなり、健常者が障害者にダンスを教えるという関係からひとつのチームになった」とコラボから生まれた成果を話しました。
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS の鈴木京子さんは、「今回DAZZLEが障害者と一緒にプログラムを作ったという経験は次に繋がります。トップを目指したい人にどういった環境を提供すればよいのかというノウハウができ、健常者のダンスチームが障害者を受け入れるハードルが下がります」と語り、オーディションから本番までの一連のパフォーミングアーツのプログラムに手応えを感じていました。
●TRUE COLOURS FESTIVAL ウェブサイト
●日本財団DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ・グループ ウェブサイト
●日本財団DIVERSITY IN THE ARTS ウェブサイト
●国際障害者舞台芸術祭(日本財団公式ウェブサイト)
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