アジア太平洋障害者芸術祭(上)2020年に向け、ひとつになれる場を (2018/5/18 日本財団)
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS
「2020年に向け、ひとつになれる場を」
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ・グループの2017年度活動報告会が4月21日、日本財団ビル(東京都港区)で行われ、シンガポールで3月開催されたアジア太平洋障害者芸術祭「True Colours Festival」に出演したアーティストや関係者が出席しました。
まず吉倉和宏・日本財団常務理事があいさつし、「パフォーミングアーツには多くの方を巻き込む力がある。2020年に向けて障害がある・なしではなく、ひとつになれる場をともにつくっていきたい」と述べた。続いて、アーティストの発掘ワークショップ、育成プログラム、舞台鑑賞支援、アジア太平洋障害者芸術祭の報告が行われました。
アジア太平洋障害者芸術祭では、約20カ国から集まった障害のあるアーティストたちがダンスや歌など技術、芸術性の高いパフォーマンスを披露。日本財団DIVERSITY IN THE ARTSからは2つのプログラムが参加し、観客を魅了しました。
1つは義足パフォーマー・ダンサーの森田かずよさんと若手のダンサー・定行夏海さんによる「Onna Matsumushi(女松虫)」です。能の演目「松虫」より着想を得た内容で、あの世とこの世、国と国、人と人、それぞれに境界はないというメッセージを表現しました。コンタクト・インプロビゼーションと呼ばれるデュエットで踊るパートナーの動きが互いの動きに連動し、互いに溶け合うような表現が特徴です。
もう一つは、ダンスカンパニーDAZZLEと障害のある若者7人のダンスチームBOTANのコラボによる、「Seek the Truth(真実を求めて)」です。こちらも日本の要素を取り入れて「狐の嫁入り」から着想を得た内容で、振り付けは動きが早く、はっきりとしたストリートダンスです。
BOTANは、アジア太平洋障害者芸術祭のために新たに結成されたダンスチームで、メンバーは2017年12月に行われたオーディションで選ばれました。メンバーは発達障害、肢体障害のある2人、そして4人が聴覚に障害があります。
DAZZLE主宰の長谷川達也さんは「聴覚に障害のあるダンサーは、音は聞こえないけど感じる力が強く、呼吸など、音以外の部分であわせることに長けていて、振り付けを覚えるのは普通の人より早いです」と彼らとの練習を振り返りました。
練習では、振付家の言葉を伝える手話通訳、手話でカウントを出して合図を送るカウントマン、音楽のニュアンスを説明する資料、身体でリズムを感じることができる重低音が響くスピーカーが準備されました。通常このような環境を整えているダンススクールはほとんどありません。
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ・グループプロデューサーの鈴木京子さんは「障害者がダンスの世界に入っていくのは難しく、まず障害者を対象とした案内がありません。また案内があってもカウントマンや手話などの環境が整っていないため、自分が行ける場所かどうかが分かりません」と現状を説明しました。
シンガポールで行われた本番で彼らのプログラムを見た観客は「誰が障害者で、誰が健常者なのか区別がつかない」と感想を漏らしていました。環境さえ整えば、障害者も健常者も分け隔てなくプロのダンサーとして踊る道が開けることをこの作品が示しています。
鈴木さんは、「私たちは2020年にアジア太平洋障害者芸術祭を行うことを目的としているが、そのために彼らの練習環境整備や人材育成が必要。地域に暮らす障害者、各分野が連携したプラットフォームのようなものをつくりたい」と、2020年後のレガシーを見据えていました。(つづく)
●TRUE COLOURS FESTIVAL ウェブサイト
●日本財団DIVERSITY IN THE ARTS パフォーミングアーツ・グループ ウェブサイト
●日本財団DIVERSITY IN THE ARTS ウェブサイト
●国際障害者舞台芸術祭(日本財団公式ウェブサイト)
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