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対象児童どう探すか―尾道市で「第三の居場所」開設自治体合同研修会 (2018/3/20 日本財団)

尾道市に10市の関係者集合
「対象児童を探すのが課題」

生きにくさを抱える子どもを総合的に支援する拠点「家でも学校でもない第三の居場所」の開設を進めている日本財団は、開設済みと開設準備中の計10市の関係者約50人に集まってもらい、2月28日から2日間、広島県尾道市で合同研修会を開いた。「第三の居場所」についての知識や経験を共有し、拠点間のネットワークを強化して課題を相互解決できる体制を作るのが狙いだ。

運営マネジャー向けのワークショップに参加した自治体担当者と運営団体マネジャーらで集合写真。前列の左から4人目が講師の大河内美和さん

運営マネジャー向けのワークショップに参加した自治体担当者と運営団体マネジャーらで集合写真。前列の左から4人目が講師の大河内美和さん

「第三の居場所」づくりは、「日本財団こどもサポートプロジェクト」の一環。16年11月に埼玉県戸田市で第1号拠点を創設したのを皮切りに、広島県尾道市、大阪府箕面市、宮崎市の計4カ所でオープンした。現在、兵庫県尼崎市、鳥取市、長崎県大村市などで準備が進んでいて、年内にも6カ所で新設オープンする予定。このほか3市でも設置の動きが出ている。日本財団では5年間かけて全国100拠点で設置を目指す方針。

あいさつする笹川常務理事

あいさつする笹川常務理事

初日の研修会では、笹川順平・常務理事が開会のあいさつを行い、「子育ては家庭や学校に任せていいのか、やはり第三の居場所が必要ではないか、ということで日本財団は本気で取り組んでいる。これまでに4カ所でオープンし、一歩一歩試行錯誤しながら進んでいる。今後、運営しやすい環境を作っていくため、皆さんと一緒に手を携えてやっていきたい」と、協力を要請した。

この後、参加者の自己紹介、日本財団から事業方針の説明などがあり、各拠点の活動報告が行われた。拠点を利用できるのは、親が生活保護や就学援助を受けている児童が主な対象となる。中には、虐待を受けたり、発達障害を抱えたりする子どももいて、専門的なスタッフが足りないという拠点もある。その一方、対象児童が少ない拠点では、各方面に当たって対象児童を探しているが、子どもを拠点に通わすのをためらっている親も少なくないという。

休憩後、開かれた分科会では、参加者が「対象児童探し」「運営・マネジメント」「効果検証」の3つに分かれて意見を出し合った。その中でも、対象児童探しに関心が高かった。アドバイザーとして参加した桝谷礼路NPO法人み・らいず理事は「小学校の校長に正面から対象児童の有無を聞いても『ウチにはそういう子はいません』と、はねつけられることが多い。NPOや病院の相談センターと交流して仲良くなれば、地域のキーパースンを紹介してもらえる。とにかく粘り強くやるだけ」と話していた。

分科会でアドバイスする桝谷理事(左から2人目)

分科会でアドバイスする桝谷理事(左から2人目)

2日目には、参加者全員で尾道拠点を見学した。山田克芳マネジャーの案内で見て回ったが、入り口と玄関に地元の学生が描いた瀬戸内海や名所の壁画が飾られ、明るい雰囲気。中に入ると、200冊以上の本が並ぶ棚や円形の机があり、落ち着いて読書ができる環境になっていた。

尾道拠点の施設内を案内する山田マネジャー(右から3人目)

尾道拠点の施設内を案内する山田マネジャー(右から3人目)

この後、豪州から招かれたNPO法人Triple Pの認定アドバイザー、大河内美和さんが講師となり、運営マネジャー向けの「子育て支援リーダーセミナー」が開かれた。Triple Pは、豪州クイーンズランド大学心理学部のマシュー・サンダース教授らが開発した、子どもの良い面に注目して育てる効果的な子育て法で、世界25カ国で実施されている。

大河内さんは、前向きな学習環境を作るためのヒントとして(1)子どもと一緒の時間を過ごす(2)頻繁に話し、子どもの話を聞く(3)具体的・効果的に褒める(4)子どもに注目を示す(5)時を捉えて教える、などを丁寧に説明した。

また、一貫した、分かりやすいしつけが大事だと指摘し、しかる時は子どもに近づいて「○○君、これはいけないから、こうしてちょうだい」と、具体例を挙げて指導すべきだと語った。そして、座った人の隣同士で実際にどうすべきかを練習し合っていた。

●日本財団子どもサポートプロジェクト(日本財団公式ウェブサイト)

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