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政党交付金をめぐる光と影 (2015/10/13 フリーライター 上村吉弘)

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 政党交付金をめぐる2つのニュースに皮肉な因縁を感じました。1つは、みんなの党代表だった浅尾慶一郎議員に対し、総務省が政党交付金8億2600万円の返還を求めたとのニュース。もう1つは、分裂が確実となった維新の党で、今年度だけで26億6478万円に上る政党交付金の分配方法について、協議が平行線になっているとのニュース。かつては合流話に花を咲かせた両党の一方が解党、もう一方が分党にまつわるカネの話。

みんなの党が最後に見せた矜持

 浅尾議員に返還を求めた総務省によると、「党本部解散に伴い返還を求めるのは初めて」とのこと。このニュースに首を傾げた人もいるのではないでしょうか。金額の大きさもさることながら、過去の解党パターンを見れば、最後は議員の頭数で割った山分けで「残額なし」として終わるのが永田町の常識。同省が返還を求めたのが初めてという点もこれを裏付けています。

 この経緯について、最後の代表となった浅尾慶一郎衆院議員(無所属)がBLOGOSで心境を語っています。

……当時国会議員は20名おりましたので、1人当たり8000万円を山分けできると考えていた議員もいたことは事実です。しかし、このお金の原資の大部分は政党交付金です。つまり、税金から支払われたお金です。そして、みんなの党はもともと税金の無駄使いを無くすと訴えていた政党でした。本来帰属すべきでない所に税金を使うよりは、国庫に返納することが党の最後を飾るのに相応しいと考えました……(浅尾議員の経緯説明)

14億円を国庫に返す英断にもっと光を

 浅尾議員の言動を額面通りに受け取れば、永田町らしくない?限りなく透明に近いカネの処理で、清々しい終わり方です。創始者である渡辺喜美氏のカネの問題で内部分裂が深刻化し解党に至った同党ですが、最後は党の本懐を遂げる終わり方でした。それまでの支持者や渡辺氏の厳しい監視もあった結果とは思いますが、12月の交付金支給予定も含め14億円強を手放すというのは、並大抵の覚悟ではありません。国会議員20人が示し合わせて12月まで党を存続させれば1人8000万円が手に入る状況で、国庫に返納する選択肢を選べる議員は、残念ながら今の国会議員の中でもごく限られた人々だけではないでしょうか。余ったカネを返すという当たり前の話ではありますが、政治の世界では極めて非常識且つ驚きのニュースです。

「みんなの党」平成26年分の政治資金収支報告書

「みんなの党」平成26年分の政治資金収支報告書

 名は体を表すと言います。最後は自らの矜持を守り、「所属議員みんな」が納得するのではなく、「国民みんな」が納得のいく有終の美と言えます。自民党田中派が権勢を振るっていた時代の政治とは隔世の感があります。

 今回のような「政治とカネ」の光の部分がもっと脚光を浴びれば、影の部分が駆逐される動きにつながるのではないかと想像します。近年議席を増やしている共産党に至っては政党交付金を受け取っていません。

さはさりとてカネは要る……

 とはいえ、昔も今もカネが権力の源泉であることに変わりはありません。カネがなければ立候補のための供託金すら出せません。選挙戦に入れば益々カネがかかります。昔のような派閥議員への「餅代」や有権者に直接配る「実弾」のような隠語で呼ばれるカネは不要となっても、最低限の「軍資金」がなければ同志を募ることもままならないのです。

 維新の党は、党名の扱いや政党交付金・借金の扱いをめぐって分党協議が続いています。橋下徹・大阪市長は当初、「お金はいらない。全部向こうに渡したらいい」と語っていましたが、先立つものがなければ11月22日投開票の大阪府知事・大阪市長ダブル選も満足に戦えないという現実があります。約5億円と言われる借金の多くが5月の大阪都構想をめぐる住民投票の宣伝費などで費消した点をみても、党勢拡大のためにカネは必需です。

議員を動かす影なる力

 今回の分党劇。経緯としては柿沢未途前幹事長による山形市長選での個人的な応援が発端でした。しかし、橋下市長と松井一郎・大阪府知事の本音は、民主との連携を模索する現執行部に任せていては改革政党のイメージが傷付き、近づくダブル選で対立陣営有利に働きかねないとの計算があるのではないでしょうか。選挙戦までに現執行部と袂を分かつ必要があったのでしょう。

 分党協議が平行線をたどればカネも動きません。それを見越してか、おおさか維新に行かず現在の維新に残留する議員が過半数に及ぶとの観測もあります。ダブル選の結果次第で、金看板である橋下市長の引退後はおおさか維新とて安泰とは言えません。どちらについても有権者が離れジリ貧になるとすれば、カネを握る側に付いていれば解党の際のおこぼれにあずかれるかもしれない、という計算も働きます。議員を動かす影なる力が何かを見極めれば、政界地図も違った見え方をするのではないでしょうか。

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上村吉弘<著者>
上村 吉弘(うえむら よしひろ)
 フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。
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