[用語解説]質問主意書
小西洋之参院議員が1人で55件、質問主意書に制限は? (2015/10/7 フリーライター 上村吉弘)
国会議員は会期中、議長を経由して内閣に対し文書で質問することができます。この文書を質問主意書と言います。送られた質問主意書に対し、内閣は原則7日以内に文書で答弁しなければなりません。この文書を答弁書と言います。答弁書は閣議で決定した内閣の統一見解となりますので、国会での閣僚答弁と同様に、政府の考え方を反映した公文書として注目されます。報道機関も答弁書の内容は必ずチェックしており、そこにニュース性があれば速報されます。
一度に1人で55件の質問!!
ここ数年、国会終盤になると「駆け込み質問」が多く見られるようになりました。会期中に本会議や委員会の場で質しきれなかった溢れんばかりの質問がきっとあるのでしょう。
しかし、今回ニュースになった質問数を見て我が目を疑いました。10月6日の閣議で、野党議員計8人が提出した各主意書の答弁書を決定したのですが、その数84件で、うち55件が小西洋之参院議員(民主)だったとのことです。参議院ホームページで確認したところ、確かに提出番号349から最後の質問403まで、小西洋之議員の氏名が連番に並んで延々と連なっています(参照:参議院ホームページ)。
十分に質疑時間が得られない少数会派・無所属議員にメリット
本会議や委員会での質疑は、所属会派の議員数に比例して質疑時間が決まるため、議員によっては満足な質疑時間が得られない、もしくは希望する委員会に所属できないことがあります。
質問主意書はそれを補う手段として活用する議員が増えています。質問内容についての制約は、単なる資料請求は認められないなど最低限の基準はあるものの、広く国政一般について内閣の見解を問うことができます。
実際には所管省庁の担当部署が他の関係省庁とも調整した上で答弁書を作成し、閣議で了解する流れとなっています。質問主意書が増えるということは、不夜城と言われる霞ヶ関の仕事も増えるので、行政の負担、引いては財政の負担にもなります。ですので、質問数に制限はないものの良識ある利用をしようというのが議員間の不文律としてあります。
質問議員は有権者アピールに活用できるメリットも
一方で、質問する議員としては、質問主意書を出して「質問数ナンバーワン」などの記録を有権者にアピールできるだけでなく、「優秀な議員である」と冊子で太鼓判を押してもらえるメリットがあります。
質問回数、質問時間、質問主意書、議員立法の提出回数で国会議員の活動を三ツ星でランク付けする「国会議員三ツ星データブック」が各会期ごとに発行され、議員会館の各事務室に届きます。昨年1月に設立された特定非営利活動法人 万年野党という団体が、任期中にほとんど発言しない議員がいることに疑問を抱いて始めた活動ですが、質問内容・法案内容ではなく、質疑数・提出数が三ツ星の判断基準になっています。この冊子が発行されるようになってから、目の色を変えて質問主意書の提出を増やした議員もいます。冊子で三ツ星に選ばれれば、有権者への訴求力も高まるからです。
今回、55件という記録的な数を提出した小西議員の質問を見てみると、同じようなテーマでわずか1行半の質問を複数回に分けて質問しているケースがありました。主意書は同じテーマであれば箇条書きにして複数の質問をすることができます。内容も文言の解釈を問うものが多く、かつて予算委員会で安倍総理大臣から「クイズのような質問は生産的ではない」と言われた場面を思い出す、大局観に欠けた質問が並んでいる印象です。
主意書の急増は事務方に負担
これだけの数の主意書と答弁書を全大臣が閣議できちんと目を通す時間が本当にあるのかどうか。恐らくは事務方の仕事として形骸化しているのではないでしょうか。主意書の内容が果たして国民の代表として行うべき質問なのか、私たちの税金で働いている官僚を何人も、何時間も拘束するに足る質問なのか。読者の皆さんもぜひ、参議院ホームページで内容を確認して各自で考えていだければと思います。
- <著者>
上村 吉弘(うえむら よしひろ) フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。