適正性と透明性の向上が望まれる政治団体の収支報告  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   適正性と透明性の向上が望まれる政治団体の収支報告

[用語解説]政治資金、登録政治資金監査人

適正性と透明性の向上が望まれる政治団体の収支報告 (2014/10/20 政治山)

 政治団体による不適切な支出や不自然な会計処理が疑われるなど、「政治とカネ」を巡る問題は後を絶ちません。書類を提出した後に問題が発覚することの多い「政治資金収支報告書」ですが、この収支報告が正しいかどうかは誰がどのようにチェックしているのでしょうか。

国会議員関係政治団体には専門家の監査が必要

 政治団体はいくつかの種類に分類されますが、大きく分けると次の3つがあります。

1.政党と政党支部(政党要件を満たしたもの)
2.政治資金団体(政党の資金援助のために政党が指定した団体)
3.その他の政治団体(資金管理団体含む)

 この区分とは別に、国会議員または国会議員の候補者が代表を務める政治団体を「国会議員関係政治団体」といい、一般的に扱う額が大きく、経理処理も複雑になりがちな同政治団体の収支報告には、2008年から「登録政治資金監査人」による監査報告が必要となりました。

弁護士や公認会計士、税理士による登録政治資金監査人制度

 総務省が設置する政治資金適正化委員会の実施する研修を修了した弁護士、公認会計士および税理士は「登録政治資金監査人」として登録され、2008年に同委員会により示されたマニュアル(政治資金監査に関する具体的な指針)に記載されている通り、以下の監査業務を行うことができます。

1.会計帳簿、領収書等が保存されていること
2.会計責任者が会計帳簿を備えており、支出の状況が記載されていること
3.収支報告書が会計帳簿及び領収証等に基づいて表示されていること
4.領収証等を徴し難かった支出の明細が会計帳簿に基づいて記載されていること

収支報告書の適正性や適法性を担保するわけではない

 政治資金監査は会計事務に対する外形的・定型的な監査に過ぎず、収支報告書や会計帳簿等の適正性・適法性を担保するわけではありません。

 政治資金の処理実務に詳しい、行政書士で元三鷹市議会副議長の高井章博氏によれば、「政治団体の会計にはグレーゾーンが多く、企業会計とは構造も常識も全く異なるわけで、少々の研修で監査できるようなものではない」とのこと。

 実際、監査人には調査や資料要求する権限もなく、会計責任者が作成、提出した資料と説明に基づき書類上の体裁を確認することしかできません。同制度の目的である「収支報告の適正の確保と透明性の向上」を実現するには、制度や運用の見直しが必要なのではないでしょうか。

関連リンク
登録政治資金監査人制度の概要等(総務省)PDFファイル
政治資金監査マニュアル(平成20年10月 政治資金適正化委員会)PDFファイル
<著者> 市ノ澤 充
株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー シニアマネジャー
政策シンクタンク、国会議員秘書、選挙コンサルを経て、2011年株式会社パイプドビッツ入社。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」の運営に携わるとともにネット選挙やネット投票の研究を行う。政治と有権者の距離を縮め、新しいコミュニケーションのあり方を提案するための講演活動も実施している。
関連記事
小渕優子経産相の政治資金、買収なら連座制適用も(2014/10/16)
蓮舫議員が追及した松島法相の「うちわ」問題の本質とは(2014/10/10)
任期は2カ月?金沢市長選から見る「出直し選挙」とは(2014/10/10)
そのほかの用語解説