【前編】「会社員は“できた”だけ。自分に向いてはいなかった」はあちゅう(ブロガー・作家) (2019/2/13 マネたま)
失敗ヒーロー!
華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回は、しみけんさんとの事実婚発表も記憶に新しいはあちゅうさんがご登場。新婚生活を綴った、意表をつくキュートな絵日記『旦那観察日記~AV男優との新婚生活~』が話題を呼び書籍化へ。大学生時代からブロガーとして名を馳せ、「人生すべてをコンテンツ化している」と語る彼女の仕事論をたっぷり聞かせていただきます。
まだ「はあちゅう」じゃなかった電通時代
――少し前にはなりますがご結婚おめでとうございます! 新婚生活はいかがですか?
はあちゅう:めちゃめちゃ楽しいです。もともと同棲していたので生活がすごく変わったわけではありませんが、「おめでとう」とみんなに言ってもらえて、2人の「チーム感」が出てきた感じがあります。「堂々としていい」ということが、なんだか気持ちよくて。それに、夫婦で一緒に仕事もできるようになって、関係もリニューアルしたのかな、と思っています。
――妊活もされていると公表されていましたね。
はあちゅう:正直、「妊活」と言うと嫌な意味で注目を浴びてしまうかもしれないと思っていました。でも、いざ妊活を始めてみたら、そう簡単には妊娠できないということを実感したんです。だから、いずれは子どもが欲しいと考えている人たちに向けて「妊活はしっかりと時間をとって考えよう」というメッセージを自分の妊活体験をふまえて、ポジティブに伝えていけたらいいなと思っています。
――ライフステージすべてを隠さず発信されているというのが、はあちゅうさんらしいと思います。そこで、はあちゅうさん流のお仕事の仕方を伺っていきたいのですが、電通時代はどのようにお仕事をされていましたか?
はあちゅう:すごく受け身でしたね。1年目は中部支社で、慣れない土地に馴染むことも大変でしたし、何もわからないし、誰も教えてくれない。そんな毎日が手探りな状態の中で、先輩の背中を見ながら仕事を学んでいくという感じでした。「主体的に仕事をしてやろう」というよりも、「早くもっといろいろできるようになりたい」という焦燥感のほうが強かったですね。でも、中部支社は社員も比較的少なかったので、その分いろいろなことを学べたと思います。その後しばらくは、東京のクリエイティブ局でコピーライターとして活動しました。
トレンダーズで初めて「はあちゅう」と名乗れた
――その後、トレンダーズに転職されましたね。
はあちゅう:トレンダーズでは美容サイトの編集長を経験して、YouTubeの新規事業も立ち上げました。ベンチャーでは自らが「攻めの姿勢」でいないといけません。会社員ではあっても、1サイトの責任者として経営者マインドも必要で、「自分のサービス」という当事者意識を持って運営していました。毎日朝から晩まで研究しつくしていましたよ。ベンチャーでは常に“数字”が求められますから。電通時代は「KPI」という言葉自体もよく知らなくて、「とにかくいいクリエイティブを作る」とか「先輩に自分の書いたコピーを採用してもらう」ということが自分の仕事の成長や評価の“指標”だったのですが、トレンダーズでは「クーポンが何枚売れた」とか「新規の会員登録数が何人増えた」といったすごく具体的な数字が自分の評価になりました。自分がやったことが明日には数字になって返ってくるという怖さももちろんありましたが、その分面白さもありましたね。
――大企業とベンチャー企業。どちらが向いていた、よかったというのはありますか?
はあちゅう:一長一短ですね。私は、トレンダーズではじめて「キレナビのはあちゅうです」と名乗ることができたんです。そのとき、自分の名前に「ブランド」が付くというやりがいを感じて。電通ではやりがいはあるけれど「黒子」に回ることが多くて、「これは自分がやりました」と胸を張っては言いづらかったんです。そして、電通時代は忙しい日々の中でも、映画を観たり飲みに行ったりする時間はなんだかんだ取れていました。でも、トレンダーズでは事業を立ち上げたこともあってそういう余裕が一切なくなって、ずっと数字を追っていました。働き方としてはだいぶストイックでしたね。
マネジメントの秘訣は「日常」をノートに残すこと
――どちらも忙しそうですね。忙しいからこそ意識しているはあちゅうさん流の“マネジメント術”はありますか?
はあちゅう:記録をつけることですね。ブログもそうですが、日常をノートに記録していました。電通時代もトレンダーズ時代もノートを常に持ち歩いて、業務に必要なこと以外でも、ちょっとした気づきや成長したと思えることを書いて自分を見つめなおしていました。そうすることで冷静な状態を保っていたんだと思います。それに仕事の喜びはやっぱり自分が成長することですよね。毎日ノートに記録することで自身の成長に対して敏感になれたと思います。日記につけて読み返すことで、日々の成長を振り返っていました。
――とてもマメですね。具体的にはどのようにノートを使われていたのでしょうか?
はあちゅう:その時によっていろいろですよ。比較的リーズナブルな文庫サイズのウィークリーノートにコピーを書いたり、日記も毎日1ページは絶対に書いていましたし、持ち歩いて仕事の合間にどんな些細なことでも書いていました。これは面白かったと思うこと、残しておきたいと感じること。そういうちょっと特別なことは、お休みの日にモレスキンとか、少しいいノートに清書していました。
――ノートに書くことでどんなメリットがありましたか?
はあちゅう:日頃もやもやするのは、感情の整理が追いついていないときだと思うんです。だから、アウトプットとしてたくさん書いて体の中から出すんです。思ったことを頭に入れたままにしておくと、それが溜まってどんどん重くなるというか、体に悪い気がしていて。紙の上に落とすことで、体から紙にそれが移ったように気が軽くなるんです。頭のなかにあるうちは悩みだったものが、紙に乗った瞬間に解決しなければならない課題になります。ノートに整理することで課題解決の糸口を見つけられたり、ほんの少し前向きな気持ちになれます。
――はあちゅうさんは本当は内省型の方なのですね。実はご自身のブログでは書かれていないこともそのノートの中にはあったりも……(笑)?
はあちゅう:そうですね。溜め込み型で、ひとつのことをずっと考えてしまうタイプです。ツイッターにはしょうもないこともたくさん書いていますが、本当に大事なことは外には書かないです(笑)。書いてあるのはモレスキンの中だけ。何でも書いているように見えて、書けることと書けないことは使い分けていますね。悔しかったり、どろどろしていたりして「書けないこと」のほうが本当は深刻ですし、表に出ていないもののほうが自分にとっては大切だったりします。とはいえ、出しているほうだとは思いますよ(笑)。
会社員は“できた”だけで、向いてはいなかった
――話は戻りますが、その後、フリーランスになる決断をされたきっかけは何ですか?
はあちゅう:トレンダーズを辞める直前にオンラインサロンをはじめたらしばらく続けられる目処が立って、会社員を辞めても「やっていけるな」と思えたんです。辞めることの怖さはなかったですね。反対に「いま辞めなかったら、ずるずる会社員のまま自分のしたいことを片手間でやってしまうんだろうな」と思って、決断しました。
――フリーランスだと自分で自分自身をマネジメントしていくことが必要です。自分のなかの決め事はありますか?
はあちゅう:苦手なことは外注すると決めています。経理は税理士さんに任せていますし、苦手なことはお金を払って外注することで、そのほうが、自分も楽になるし経済も回る。それに自分にできない分野のことをプロの方に教えていただけて勉強になりますから。いまは「人に任せる」ということは自分のテーマになっていますね。家事に関してもそう考えています。とはいえ、任せているのは経理と家事くらいです。移動の手配もオンラインサロンの運営も、基本的には自分でまかなっています。
――はあちゅうさんはフリーランスがきっと向いていたんですね。
はあちゅう:向いていると思います。でも、向いているかはやってみないとわからないと思いました。私の家は保守的で、“THEサラリーマン”家庭だったんです。起業家や芸能界の人たちもフリーランスで仕事をされている方も自分とは離れた存在に感じていましたし、自分が会社員以外になれると思っていませんでした。でも、いざフリーランスになると、「よく会社員というコスプレをやり続けていたな」と思うようになりました。決して得意ではなかったんです。根が真面目なのか、そのときどきの環境に合わせられてしまえるんです。テレビに出たらテレビの振る舞いを真似しますし、会社員ならちゃんと時間を守って会社に行きます。でも、できていたからわからなかったけど、実は向いていなかったんだなと、いざ辞めて気づきました。
フリーランスより、チーム化された社会の方が健全
――たしかに“できる”というだけで会社員をやっている方、たくさんいそうですよね。
はあちゅう:いっぱいいると思いますよ。「みんながやっているから我慢しないと」と思っていることってあると思うんです。通勤電車に長く乗るとか、会社に時間通りに行くとか、できて当たり前だと思われますよね。私は会社員時代の最後の方では、決まった時間に同じ場所にいなければいけないことが苦痛だということに気づきました。私は、家にいて何も予定がない状態がすごく好きなんですが、フリーランスになって、宅配便が来るから家にいないといけないとなると、途端に嫌になります(笑)
――フリーランスで仕事する人は増えていくと思いますか?
はあちゅう:増えないと思います。やはり社会は会社員によって成り立っていますから。フリーランスになれば、圧倒的に成功できる人と、搾取される立場になる人も出てくるので、ある程度チーム化されている社会のほうが社会として健全だと思います。オンラインサロンを通じて、チームでないとできないことがあると実感し、フリーランスになって苦手なことは力を借りたほうがいいと気づきました。
それでもフリーランスになりたい人は、個人のブランドがない間は、自分のいる会社のブランド力を使うということも大事ですよね。肩書きがあるとかなりレバレッジが効くというのもありますし、悲しいことかもしれないけど、学歴と社歴に助けられるのは事実です。それに、私がメディアに出られたのも、なんだかんだ言って「慶應からの電通」が効いていると思うことも多いんです。そのブランドが、安心感や共感を持ってもらえる保証書のようなものになっている気がします。
後編では…
自分と正直に向き合うことを怠らなかったからこそ、今のはあちゅうさんがあるのかもしれません。抜け目がないように見えるはあちゅうさんのマネジメント術の裏にはどのような失敗エピソードがあったのでしょうか? 気になる後編では、はあちゅうさんの経験した“失敗”と、はあちゅうさんならではのチームマネジメントの考えをお聞きします。
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