【図解】民泊の届出件数12,000件突破の陰で「廃業」が増加 1年間民泊ができる「旅館業民泊」に脚光 (2018/12/10 Airstair)
観光庁はこのほど、11月30日時点の住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出件数と受理件数を公表し、民泊届出件数が12,268件(民泊受理件数:11,018件)に達したことを明らかにした。
同法施行の6月15日時点では民泊届出件数が3,728件、民泊受理件数が2,210件となっていたが、約5か月で届出件数は3.2倍、受理件数は4.9倍にまで増えている。
保健所設置市及び特別区を含む都道府県別の民泊届出件数では、4,362件(36%)の東京都が最多で次いで1,823件(15%)の北海道、3位に1,683件(14%)の大阪府が続いた。
民泊の届出件数は着実に増えてはいるものの、同法施行前に約56,000施設※あった民泊施設のうち約2割にあたる施設でしか届出が進んでいない(※民泊市場のリサーチ・調査を手掛けるメトロエンジン株式会社が提供する民泊ダッシュボードのメトロデータによる)。
ほとんどの自治体で、民泊に対する「嫌がらせ」が表面化
以前から一部の自治体では、本来必要のない書類の提出求められたり、必須ではない事前相談が義務化されているなど不適切な運用が行われているという声が上がっていた民泊(住宅宿泊事業)届出手続き。
観光庁が行った実態調査によると、那覇市と文京区の2自治体で住宅宿泊事業法に規定のない事前相談を義務付けていたほか、調査対象の101自治体のうち約5割に当たる57の自治体では事前相談が必須であるような記載していることが明らかになった。
自治体のホームページ等で「届出前に必ず相談してください。」という記載があれば、相談しなければならないという誤解を与えることは明白だ。
また、調査対象の101自治体のうち約9割にあたる92自治体においては法令に規定されていない独自の書類の提出を求めていることが明らかに。ガイドラインや要綱を提出の根拠とする自治体もあったが、沖縄県、川崎市、神戸市など6自治体では、根拠もなく提出を求めていた。
民泊の届出が一向に進まない背景には、民泊の届け出に対する「嫌がらせ」が行われるなど、本来「届出制」であるはずの民泊届出が実質的な「許可制」になっている点も要因の一つになっていることは確実だ。
住宅宿泊事業法「民泊」の廃止は増加 「旅館業民泊」に注目も
自治体による民泊に対する「嫌がらせ」などもあり、民泊の届出申請数の伸び率は徐々に陰りが見えてきている。2018年9月と10月の前月比伸び率はそれぞれ16%となっていたが、11月は(同)伸び率を11%まで落とした。
直近の伸び率を考慮すると、2018年12月末時点の届け出件数は13,500件程度となる見込みで、宿泊業界の閑散期である1-2月にはさらに減ることが予想され、住宅宿泊事業法上の民泊届出数の伸び率はさらに鈍化する可能性がある。
さらに気になるのは、民泊の廃止が増加している点だ。観光庁は、11月16日分から住宅宿泊事業法の「民泊」の廃止済件数を公表しているが、11月16日時点で196件だった廃業数は、11月30日時点では222件にも増えている。
住宅宿泊事業法での民泊は年間上限日数が最大でも180日に制限されるなど非常に厳しい環境下に置かれるなかで、民泊を合法的に行う方法として注目を集めているのが、「特区民泊」と「旅館業民泊」だ。
いずれの方法も民泊を1年間365日行うことができる方法として注目を集めている。特区民泊は昨今著しく認定件数を伸ばしており申請件数は5,376室(2018年10月31日現在)となっている。
特区民泊は特に大阪市に集中しており、日本全国の特区民泊のうち約9割が大阪市に存在する。住宅宿泊事業法の都道府県別ランキングで大阪府(3位)の順位が北海道(2位)よりも低いのは、大阪では住宅宿泊事業法よりも特区民泊に注目が集まっているからだ。
しかし、特区民泊は営業できるエリアが非常に限定的で、大阪市と東京都大田区とその他一部のエリアのみ。そのような理由でまた新しく注目を集めつつあるのがホテルや旅館と同じように旅館業法を活用し民泊を営業する「旅館業民泊」だ。
「旅館業民泊」であれば、住宅宿泊事業法の民泊とは異なり1年間365日、民泊の営業ができ、特区民泊のように限定されたエリアではなく原則として全国で営業可能だ。すでに住宅宿泊事業法の受理済み物件でも「旅館業民泊」へ転換できる※(※物件の状況等により異なる)。
住宅宿泊事業法での民泊は今後伸び悩む一方で、1年間365日民泊営業ができる特区民泊や「旅館業民泊」が今後の民泊市場を引っ張っていくことになりそうだ。
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