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退職者の慰留にエネルギーを注ぐことが愚かな理由 (2018/12/6 瓦版

関連ワード : 労働・雇用 

ベンチャーCHROの戦略的JINJI論

悪質な退職慰留が増加している背景

昨今、全国の労働局に個別労働紛争として寄せられる自己都合退職のトラブル相談が急増しているようです。10年ほど前には解雇相談が退職慰留相談の4倍ほどだったものが、すでに41道県では退職慰留相談が解雇相談を上回る数になるそうです。これは明らかに昨今の採用難からくる社会問題の一つといえるのではないでしょうか。

叱責

ここ数年の採用難は過去に例を見ないほどの状況で、有効求人倍率も今年は44年ぶりの高水準をたたき出し、正社員に関しては過去最高を更新したそうです。そうした背景から、退職希望者に対しての引き留めが激しくなり、冒頭にあげたようなトラブルが急増してると考えられます。退職を代行するビジネスまでもが注目を浴びるようになりました。

退職希望者の問題に関しては被雇用者の視点からは様々なメディアで退職代行ビジネスの事例などをもとに述べられていますが、今回は企業側の視点でこの問題について考えてみたいと思います。

まず、多くの企業が予防に注力できていないという現状があります。本来、引き留めというのはただの「延命措置」に過ぎません。たとえ結果として辞めずに残ったとしても、モチベーションが低下した状態で働くという結末を迎えることがほとんどです。もちろん、引き留めも会社の都合だけでなく本人の為になるものであれば別ですが・・・

慰留より「予防」。その3つの具体策

では、そうならないための「予防」とはどのようにすればよいでしょうか。3つの施策をあげてみました。

■働きがい向上のための制度策定

時代も企業も常に変化しています。しっかりと内外にアンテナを張り、その時にあった環境づくりを行い、尚且つその取り組みを社内外にもしっかり伝えていくことが大切です。

■定期的な働きがいサーベイ

社員の状況は常に把握し、統計を取り、対策はレスポンス早くしましょう。HRTECHに注目が集まっているのもその重要性を示す証拠と言えます。様々なサービスがあるので、いろいろ調べてみてもよいでしょう。

■頻繁なコミュニケーション

制度や調査だけではもちろんダメです。常に同僚、上司、人事、幹部、様々な立場の方々が一人一人の社員とコミュニケーションを取ることが大切です。いくら予防のための施策を実施してもここが不十分だと「まさか…」に遭遇することになります。

3つは全て連動してこそ機能するものですが、多忙なため「そんなことに時間をさけない」と思われるかもしれません。できることなら直接的に利益につながる業務に集中したい。それが、それぞれに業務を抱える各社員、そして企業としての本音かもしれません。

予防こそが企業を強くし「安定」を生み出す

しかし考えてみてください。予防の効果が出てくれば、離職者が減り、人手不足に困ることがなくなるだけでなく、無駄な採用コストも減ります。職場の働きがいが向上することで社員のモチベーションは上がり、生産性の向上にもつながります。

なによりも社員の勤続年数が長くなることで優秀な社員が育ち、強い組織形成が進み、企業価値が大きく高まります。採用難の今こそ、どう採用するかに躍起になるだけでなく、現有の社員をどう活躍させ、成長させるかに目を向けるべきではないでしょうか。

当たり前のことを述べているようですが、決して簡単なことではありません。ぜひ、片手間でなく、正式にプロジェクトチームを発足させ、会社のミッションとして本腰を入れて取り組んでいただくことをお勧めします。急がば回れではありませんが、目先の利益より、5年後、10年後の安定も意識しましょう。

※CHRO(Chief Human Resource Officer)の略

     ◇

花咲圭祐(はなさき・けいすけ)<プロフィール>花咲圭祐(はなさき・けいすけ)
1985年生まれ。大阪府出身。2011年、株式会社スタイル・エッジ(代表:金弘厚雄)入社。各種士業クライアントのWebマーケティング支援、コンサルティングなどに従事。その後、グループ会社である株式会社スタイル・エッジREALTYの設立から名古屋・大阪・福岡の支店拡大を経験。現在はスタイル・エッジの執行役員として人事部の統括とスタイル・エッジREALTYの取締役を兼務している。

提供:瓦版

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