なぜ転職支援企業が退職代行までサポートするのか (2018/11/1 瓦版)
転職新時代到来 Vol.4 ~完熟社会の働き方の先にある人材流動化の行方~
退職から転職まで支援するサービスの狙いとは
求職者のニーズが多様化する中で、転職支援サービスも比例して変化している。求職者との距離を縮め、きめ細かい支援でよりふさわしい転職先へ導く――。昨今の潮流で総じて言えるのは、そうした“進化”だ。第二新卒を専門に転職支援を行うUZUZがこのほど、新たに始めたサービス「リスタート」は、行き届き具合でいえばその究極形といえるかもしれない。
ズバリ、退職の代行だ。サービス開始の理由を同社専務取締役の川畑翔太郎氏が説明する。「転職したいと思っているのにしていない20代は44%という調査結果があります。現場の経験から言えるのは、できない理由は退職の意向を伝えた際のパワハラが心配であったり、勤務先が人手不足で言い出せないなどです。そこでより深い就業サポートのために退職もサポートすることで、若者がよりウズウズ働ける世の中を作り出したいと考えました」。
転職したいけどできない…。転職市場では潜在層となっているこうした層に対し、その殻ごとうち破り、転職支援の手を差し伸べる。退職代行は、企業との関係の一線を超えるほど大きく踏み込んだサポートともいえる。そこまでやる必要があるのかというほど至れり尽くせりだが、先行する同様のサービスには依頼が殺到するなど、こうした“袋小路人材”が少なくないという実態もある。
もっとも、既存の退職代行サービスは、退職代行のみを請け負うのが一般的。同サービスでは、退職代行で退職した後、希望者には転職サポートまでを一貫して行う。退職から転職まで――。もはや転職支援サービスとしては究極形といえる“進化”で、同社は悩める求職者をとことん支援。労働市場の人材最適化を後押しする。
「サービス開始にあたり、先行企業をヒアリングする中で提携も検討しましたが最終的には転職支援の一環として自社で退職代行をサービス化することにしました。退職と転職は表裏一体。ですから、退職だけでなく転職までを一気通貫で支援した方がいいと考えました」と川畑氏は説明する。
人材最適化の“触媒”として機能するか
利用イメージは、サービス申し込み後に無料相談を受け、退職を代行。料金は、当初はキャンペーン価格の3万円。本人が希望すれば、そのまま転職支援も行い、そこで転職が成功すれば、全額がキャッシュバックされる。同社では、1年で1,000人の退職代行を支援。そのうち、半分となる500人の転職支援を目指す。
「会社設立時には退職代行など考えもしなかったが、人手不足が深刻になっていく中で退職のハードルは上がっていく。今後、転職そのものも増えていくことが予測され、企業にとっても人材戦略において退職後の元社員との関係強化が必要となってくるでしょう」と川畑氏は転職市場の今後の展望を予測する。
求職者の価値観の変化で多様化する転職市場。転職への壁自体も下がっている。人材流動化は加速の一途だが、最適化へ向かわなければ日本の国力は衰退する。そのためには、自然に任せるだけでなく、なんらかの“触媒”も必要になってくる。辞めたいけど辞められないという“企業内休眠人材”を退職代行が刺激することで人材の適切な再配置につながるとすれば、企業にとっては痛しかゆしながらも問答無用で目くじらを立てるわけにもいかないのかもしれない…。(続く)
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