冬スポーツの「レジェンド」に学ぶ“生涯現役”を続けるための極意  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   冬スポーツの「レジェンド」に学ぶ“生涯現役”を続けるための極意

冬スポーツの「レジェンド」に学ぶ“生涯現役”を続けるための極意 (2018/10/4 瓦版

関連ワード : スポーツ 健康 労働・雇用 

人生100年時代の心技体キープへの心構え

タニタ健康大賞を受賞した葛西。タニタの体重計はコンディション管理の必需品という

タニタ健康大賞を受賞した葛西。タニタの体重計はコンディション管理の必需品という

人生100年時代が叫ばれ、生涯現役を推奨される風潮だ。根底にあるのは少子高齢化による年金制度の崩壊だが、それにしても気が遠くなる。誰しもいつまでも元気でい続けたいと願う。だが、心技体をトップ水準でキープし続けるのは至難の業だ。

レジェンドの証言から紐解く現役寿命を限りなく伸ばす3つの極意

スキージャンプの葛西紀明氏は46歳。短いといわれる同競技寿命にあって、30年以上最高レベルをキープし、数々のギネス記録を達成。現役生活の“最長不倒距離”を伸ばし続けている。体はもちろん、心も衰えを知らず、まさに生涯現役も冗談に聞こえない不老ぶりで、冬季スポーツ界のレジェンドの異名に恥じない活躍を続けている。

その秘密はどこにあるのか。30年以上に及ぶ葛西の現役生活からみえてくるのは、3つの極意だ。ビジネスマンも参考すべき点が多い“生涯現役”へのヒントを本人の証言をもとにひとつづつ紐解いていく。

1:極限レベルのコンディション管理

まず重要なのは、コンディション管理だ。アスリートだから当たり前、というのは簡単だが、そんな甘いものじゃない。実はスキージャンプはスポーツ界一風邪をひきやすい競技といわれている。そもそも会場が降雪地であり、世界を転戦する中で、乾燥した機内にいる時間も長い。加えて、トレーニングと減量で免疫力が低下している。いろいろな要素が絡み合い、スキージャンパーは風邪と隣り合わせなのだ。

「原因として考えれるのはやはり免疫力の低下でしょう。ですから、除菌スプレー、マスク、うがいに手洗い…あらゆる予防グッズを常に持ち歩いています」と葛西。さらに体重管理のため、体重計も携帯し、1日20回近く体重チェックを行う。最大の資本である体を守るために、あらゆることを妥協なく実践。世界で戦える体をキープする。

2:成功体験を引きづらない進化への探求心

最低限であり最重要なコンディション管理で臨戦態勢を整えることが、そのままトップレベルのキープにつながっていくのはレジェンドゆえでもあるが、一方で成功体験を引きずらないのも世界レベルに置いて行かれないための重要ポイントとなる。

冬季五輪スキージャンプ最年長メダリストのギネス記録を持つ葛西は今シーズン、従来のスタイルを捨て新たな形を取り入れた。参考にしたのは、世界のトップを走るノルウェー勢の助走だ。自身も課題とする助走スピード加速へのアプローチを現場で徹底研究した。「自分の課題は助走スピード。世界とは2キロほどの差がある。新しいスタイルがうまく噛み合い、その差を縮められばまた世界で戦える」と葛西は来シーズンでの躍進を見据え、自身の進化への手ごたえを口にした。

谷田社長(左)と生年月日まで同じの葛西。たゆまぬ努力と進化を恐れない姿勢も2人の共通項だ

谷田社長(左)と生年月日まで同じの葛西。たゆまぬ努力と進化を恐れない姿勢も2人の共通項だ

若い世代でもスタイルチェンジにはリスクが伴うが、46歳の葛西には微塵の迷いもない。いくつになっても進化を追求する。長く現役を続けるトップアスリートに共通する姿勢だが、変化を嫌いがちなミドル以降のビジネスマンは大いに参考にすべきだろう。

3:湧き出るモチベーション

加齢とともに急激に衰えるのが気力。だが、葛西の場合、その心配が杞憂なことが実は長くトップパフォーマンスを維持する最大の秘訣といえるのかもしれない。小3からスキーを始めた葛西は、モチベーションについてこんな表現をする。「けがや故障がない限り、現役を続けたい。生涯現役です。そういうモチベーションがありますね。逆にこれがいつなくなるんだろうという感じです」。体と技がキープされ続けていることで、心が自然についてくる。年々下がるモチベーションを必死でアップしようと試みる人も少なくない中で、モチベーション低下とはまるで無縁の葛西。だからこそ、“生涯現役”の4文字を口にできるのだろう。

3つに加え、番外編といえる重要ポイントがある。妻を愛することだ。葛西のコンディションキープでは野菜スープが重要な要素の一つになっているが、それを作っているのが、奥様の怜奈さん。ハートマークのニンジンが入ったその野菜スープが好物と公言するように妻への愛情を溢れさせ、原動力に換える。夫婦円満。これも長くトップで活躍し続けるには不可欠な要素であることはいうまでもない。

ビジネスマンは、将来が見え始める40歳を過ぎれば、身体以上に気力が萎えてくる。気力が萎えれば、心もしぼむ。だが、妥協なく目の前の仕事を完遂し、成長のための学習も怠らなければ、自ずと気力も充実してくるはずだ。葛西のこれまでの道のりは、まさにその繰り返し。当たり前のことをやり抜く努力と進化のためのチャレンジ。少なくともこの2つを怠らなければモチベーションは自ずとキープされる――。金メダルを目指すレベルに比べればた易いルーティンだろう。生涯現役。50歳になっても折り返し点と考えると果てしない道のりだが、“現役”のまま乗り切る極意は意外にシンプルなのかもしれない。

<プロフィール>葛西紀明(かさいのりあき)
1972年、北海道生まれ。小3よりスキーを始め、1988年にスキージャンプワールドカップ札幌大会に初出場。ノルディックスキー世界選手権には1989年の初出場から13回出場し、個人2個、団体5個計7個のメダルを獲得。五輪では19歳でアルベールビル大会以来、8大会連続出場を果たし、計3個のメダルを獲得した。2014年3月にワールドカップ最多優勝、冬季五輪7大会連続出場、冬季五輪スキージャンプ最年長メダリスト、2016年1月にはワールドカップ最多出場、ノルディック世界選手権最多出場がギネス認定され、計5つのギネス世界記録ホルダーとなっている。現在、土屋ホーム所属で選手兼任監督として現役を続行中。

関連記事
ガンバ大阪を解雇された男はなぜ、東証マザーズ上場社長になれたのか
リユース業界のパラダイムシフト狙う元Jリーガー社長の果てしなき野望
トップFリーガーはなぜ、あえて会社員との2足のわらじを履いたのか
働き方変革で変える、プロアスリートの“セカンドキャリア問題”
女性アスリートの健康管理と低用量ピルの正しい服用
関連ワード : スポーツ 健康 労働・雇用