外国人材の最適化に欠かせない「教育」の重要性 (2018/9/12 瓦版)
【集中連載】歪な外国人労働者受け入れが招く、日本の末路Vol.7
外国人就労を円滑にするために欠かせない「教育」というひと手間
外国人活用に成功している企業の多くが共通キーワードに上げるのが「教育」だ。高い問題意識で外国人材育成に取り組む企業の中には、その延長として「学校」を設立。人口減少による労働力不足という社会課題解決としての側面に向き合っているところもある。
人材事業を行うベルーフは、日本での就職やアルバイトを希望する海外留学生を対象にした「オモテナシスクール」を東京とベトナムで運営している。ベトナム校は有料で、東京校は無料。日本人のマナーや日本の業界・業種のビジネス知識などを教える。
「外国人材で起こるトラブルの多くは情報不足。文化やマナーの違いを来日前に教えることで来日後の生活でのトラブルや文化の違和感をなくすサポートをしています。そして来日後は東京校でビジネスマナーや業界専門用語などをロールプレイング形式で行っています」と同社社長の香月広氏。こうしたこともあり、同校で学んだ受講生は受け入れ企業から高い評価を受けているという。
同社ではさらに直営店45店舗でのOJTも実施。実践でも学びも交えることで、現場における多様性の理解やグローバル化への認識強化を実現している。現状の外国人就労者に不足する環境を可能な限りフォローし、そのポテンシャルを丁寧に引き出し、外国人材の戦力化に真摯に向き合っている。
人手不足を教育で補完するアプローチ
人手不足を社会課題と捉え、独自の人材教育で解決しようとする動きもある。携帯ショップへの人材派遣やその教育を行うピアズは、同業種の人材不足を肌で感じている。ハードな業務内容などでなかなか人が定着せず、人手不足は慢性的だ。そこで、いないなら育成すると設立したのが、職業訓練校「ピアズグローバルアカデミー」だ。
「通信業界は不人気化を軽視し、変わらず若者だけを採用する対応を繰り返し、人手不足が常態化している。とはいえ継続した労働力が供給されなければショップ経営は苦しくなるばかり。一方で在日外国人の数は増加の一途。そこで高いモチベーションを持つ外国人を店頭スタッフとして戦力化する仕組みとしてアカデミーを設立しました」と同社人財ソリューション部の大杉光生氏は経緯を明かす。
同アカデミーでは、受講生に給料と交通費を支給。留学生が期間中、講座を集中して受けられる配慮で、まさに戦力化への短期集中講座が行われる。日本での就職を考える外国人にとっては申し分ない環境といえるが、実は年間の受講者数は数名程度。その理由は、日本語レベルを高く設定していることにある。
「接客の仕事になるので、日本語レベルは妥協できない。教える内容もあくまで販売に関することが中心なので、日本語はできるのが前提。文化の違いやマナーなどは教えるが日本語の教育はしないのでどうしても大人数にはなりづらい」と同氏。現状は少数精鋭で、実績作りがメインというところだ。
とはいえ、同社も徐々に確立されつつある外国人の職業訓練ノウハウの先を見据えていないわけではない。日本語学校との提携や他業種でも対応できる研修への展開だ。
「アカデミーはあくまで社会課題の解決が目的で設立したのでいまは採算は度外視している。ただ、ノウハウも蓄積され、卒業生のネットワークも少しずつ構築されつつある。日本語学校と提携するなど、ここで築いたノウハウを活かせる動きを今後はいろいろと模索していきたい」(大杉氏)。
先のベルーフは、日本語学校とも活発に連携を行うなどその体制を着々と整備しつつある。今後、ベトナム以外にもミャンマー、スリランカ、タイ、ネパールなど東南アジア諸国への展開も計画しているという。2社はサービス業だが、外国人材を戦力として磨き上げるこうした動きが拡大し、多様な業種へも発展していけば、日本での就労を目指す外国人にとって心強い拠り所となるだろう。
人手不足だからと外国人材を活用する。それは仕方がない側面があるとしても、彼らに何を期待するのか…。2社の取り組みは、逆説的に無策の外国人活用に未来がないことを示している。外国人材を単なる労働力としてしか扱う気がないのだとすれば、たとえ日本に愛着があったとしても、そのことに不快感を覚えるのは万国共通であることを忘れていけない。(続く)
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