戦略的採用で突破する外国人材戦力化の壁 (2018/9/6 瓦版)
【集中連載】歪な外国人労働者受け入れが招く、日本の末路Vol.6
ビジョンと工夫で乗り越える外国人材戦力化の壁
優秀人材を、教育によってグローバル人材に育成することで戦力化を実現している企業もある。グッドクルーは人口減少時代の課題として「能力ある若者を多く採用することが今後の企業の力になる」と捉え、バイタリティ溢れる若い外国人材の採用を積極的に行っている。
必要な若者の人口が減っているという国内の現実を率直に受け止めた上で、若者が増えている異国に目を向け採用を実施。人材として不足する部分は教育で補うことで戦力として磨き上げるという戦略だ。
「多くの日本企業が海外展開しているが、オペレーションの再現性は高くても接客・おもてなしの文化を浸透させるには至っていない。今後、人材育成を事業として確立していく際に自社で外国人を雇用し、育成することで、このノウハウを構築する狙いがある」と同社企画部情報管理責任者の廣瀬拓哉氏は明かす。
もともとは自社の事業展開を推進することが目的の外国人採用。だが、結果的に大きなリターンを受けている。ひとつは外国人採用で担当者のスキルがアップ。外国人に研修する担当者もスキルアップ。そして、対応言語が広がり新規顧客獲得につながる。さらに外国人採用時にはメンターとして活用…。教育というコストをかけたことが、気が付けばグローバル企業としての基盤確立につながった。
明確な採用基準を決めることで一歩を踏み出しやすくる
損して得取れではないが、こうしたことはやってみなければ分からない側面も多い。そもそも、最初から完全な外国人材活用を目指すのは現実的でない…。その意味でアレックスソリューションズの外国人採用のアプローチは、一歩を踏み出せない企業が参考にできる事例といえるかもしれない。
同社では、採用の条件を日本人・外国人問わず海外留学経験者に限定している。それは自身の経験も踏まえ、「異国に出るようなメンタリティーがある人材は、その時点で価値がある」と考えているからだ。留学経験者の就職は難しい現実があり、うまくいっていないケースも多い。そうした事情も踏まえ、同社ではその資質を買い、採用後に教育。戦力化するというプロセスを踏んでいる。
ポイントは、留学経験者の語学力とバイタリティを活かすこと。事業はITアウトソーシングなので、知識ゼロの人材も多いが、みっちりと教育。旺盛な好奇心なども手伝い、大抵は挫折することなく、戦力として育っていく。また、外国籍の社員を採用する際にはその基準を「漢字の読み書きができること」に設定。それがクライアントとのより正確なコミュニケーションに役立つだけでなく、「より日本を知りたいと考えている表れ」と捉えており、定着率アップにもつながると考えている。
「課題があるとすれば、留学経験者は放浪癖があること。だから、年に1度は長期休暇をとれる制度を設けるなどで、対策しています」と同社。この辺りは“副作用”といえるかもしれないが、外国人を有効に活用するにはそうしたことも受け入れる柔軟性は必須といえるだろう。
グローバル人材を採用するぞ、と意気込んでも何を基準にするかはなかなか難しい。そうした課題を最初から独自の採用基準を明確にした上で足りない部分は教育でフォローし、戦力に仕上げる。2つの事例は、経営ビジョンさえしっかりしていれば、グローバル採用も日本人の採用と変わらず、決して難しくないことを示す好例といえるだろう。(続く)
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