着実に浸透する企業の女性活躍推進の裏で浮上する悩ましい課題とは (2018/8/24 瓦版)
調査で見えてきた女性活躍推進の実態
女性活躍推進法が施行されたのが2016年3月。単に女性を働きやすくするだけでなく、一定の“義務”が課せられたことで、ムードは一変。ぼんやりと検討していた企業も地に足をつけた女性活躍の風土つくりに本腰を入れ始めるなど、流れは加速へ向かった…。
あれから2年。実際のところ、企業の女性活躍は進展したのか。エン・ジャパンが同社が運営する人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」(https://partners.en-japan.com)上で「女性活躍推進」についてアンケート調査(回答=612社)を行っている。
結果全体を俯瞰すれば、大きな変化はみられない。女性の活躍に取り組んでいるかの質問には、52%がイエスと回答。2016年調査時を2パーセント上回っているが、誤差の範囲だろう。その分、「取り組んでいない」と回答した企業が3%増加していることの方が、“変化”といえるかもしれない。
そうした中で女性活躍推進に対し、「課題」と感じられることについての“変化”は、この2年で女性活躍推進がどう進んだのかを推し量る兆候として有効な項目といえそうだ。例えば、ポイントが増加している項目をみると、「女性社員への目標設定」「女性社員の体力」「女性社員の評価」「女性社員の能力」などが、2016年調査時より、大きく伸びている。
これらは、実際に女性活躍の場が増えているからこその「課題」であり、職場が着実に変わっていることを示す結果といえるだろう。特に「目標設定」「能力」については前回の倍近い伸びとなっており、女性を実際に最前線に送り出したものの、まだまだ男性には劣ることをにじませる結果といえ、企業の悩ましさが透けてみえる。
調査結果が示す女性の最前線進出度
一方で、ポイントが減っている項目は「女性社員の意識」「管理職の意識」「ロールモデルがいない」で大きく変化。職場における女性の在り方が、意識することなく男性と同等になりつつあることを鮮明にしているといえるだろう。その意味では、いまは女性がいよいよ男性同等の戦力として定着する過渡期にあるといえるのかもしれない。
この結果を裏付けるように調査では企業の67%が女性活躍推進に対し、「企業業績を高めることに影響がある」と回答。このまま女性が順調に戦力として定着する風土が確立されれば、業績にも好影響があると確信している。だからこそ企業は、いまは課題があっても先を見据え、女性が活躍しやすい職場づくりに妥協しないのだろう。
実際の職場ではそれほど変化は感じられないかもしれない。だが、この結果をみる限り、女性活躍推進は確実に前進している。そしてその先には当然、男性の育休やイクメンの浸透もある。働き方改革も同様だが、これらは目に見えた結果を感じづらいアクションに違いない。だからこそ、成果につなげるには、全員が当事者意識を持ち、丁寧に着実に継続していく必要があるだろう。
- 関連記事
- 人事のデータ化は職場をギスギスさせるのか、それとも…
- 「健康」と「経営」の対立概念が解消した先に、世界が求める経営モデルが完成する―経産官僚に聞く
- “職場託児所化”で社員全員が子守りをする企業の生産性はどうなっているのか
- 女性が働きやすい職場のつくり方
- 女性が活躍する職場でやっぱり活躍しているものとは