働き方改革で収入面の満足度は上がっているのか… (2018/5/22 瓦版)
働く主婦層への調査でみえてきた働き方改革と収入の関係
働き方改革で残業が減り、そして給料も減った――。そんな声も聞こえてくる。主婦に特化した人材サービス『しゅふJOB』(事業運営者:株式会社ビースタイル/本社:東京都新宿区、代表取締役:三原邦彦)の調査機関しゅふJOB総研は『働き方改革による労働時間と家庭の収入』について、働く主婦層にアンケート調査を実施(有効回答数712件)。その結果、4人に1人以上が、改革により何らかの負の影響を受けている実態がみえてきた。
働き方改革が推進され、労働時間減少を実感することが「ある」と答えたのは、24.6%。ほぼ4人に一人が時短を実感しているようだ。どんな時にそれを実感するかについては、「時短勤務の求人が増えた」で46.9%が最多。次いで「自分の労働時間が減少した」(30.3%)、「配偶者またはパートナーの労働時間が減少した」(29.1%)と続いた。
労働時間の減少を実感する人は意外に少ない印象だが、収入についての影響はどうなのか。「あった」のは32.4%で3人1人が何らかの影響を感じている。そのうち、「収入が増えた」は3.7%で、「減った」が28.7%と大きな差がみられた。単純計算で、「減った」と実感した人が「増えた」の7.8倍となり、やはり働き方改革によって給与が減ったと感じている人がそれなり存在することが分かる。
もっとも、「何もない」が65.9%で圧倒的で、影響はないと感じている人がほとんどのようだ。一方で、労働時間が「減少した」と回答したに絞ってその内訳をみると、「減った」と回答したのは73%にのぼり、収入減の原因が労働時間減少にあることが鮮明になる。
収入アップとセットでなければ改革ではなく“縮小”
回答者のフリーコメントでは、労働時間短縮を実感するとした人では「生活にゆとりが出ていい傾向。これで従業員への単価が上がれば」と時短を評価しつつ、給与の横ばいには不満をにじませる声が目立った。労働時間減少を実感することが「ない」と回答した人になると、「労働時間短縮ができるのは大企業や公務員だけ」「もっと世の中にハッキリわかるような改革にしてほしい」といった無関係を主張するクールな声が大勢を占めた。
調査結果を受け、しゅふJOB総研所長の川上敬太郎氏は次のように解説する。「労働時間減少を実感するが24.6%は、まだ少ないとも取れますが、影響を感じている人が約1/4存在することになります。法案審議が進んでいなくても、働き方改革は少しずつ進んでいるように思います。一方で、働き方改革による家庭の収入への影響については『何も影響はない』が最も多かったものの、『収入が減った』との回答が3割近くに上ります。『収入が増えた』との回答が4%程度であることを考えると、圧倒的に収入が減ったと感じている人の方が多いことがわかります。収入の減少は消費の冷え込みにもつながります。労働時間を減少させつつ、給与は維持もしくは上昇させていく仕組みを作ることが、働き方改革を推進する上で重要な課題だと考えます」。
働き方改革が進み、生産性が向上。労働時間が短縮され、ライフが充実する――。そうなるためには、やはり報酬アップもセットであって欲しいところ。単に効率化が進み、職場にいる時間が短くなるだけの働き方改革なら、ただの“縮小”としかいえない。調査対象は働く主婦層なので、ニュアンスの違いもあるだろうが、このままでは改革といいながらこじんまりと環境整備されるだけの誰にとっても可もなく不可もない、事実上の“後退”という未来しかみえてこない印象だ。
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