来るオートメーション化時代。WEBビジネスのスタンダードが変化する!?~グロースハッカーが変える働き方のスタンダード~ (2018/2/9 nomad journal)
2012年、創業。大手企業のプロダクトを中心にハンズオン型グロースハックを提供し、国内屈指の改善実績を持つグロースハックの専門家集団「PROJECT GROUP(以下P.G.)」。その代表の田内氏に、以前にnomad journalでも『グロースハックの時代が到来する~2020年代に活躍できるWebマーケターの能力とは?~』という記事でグロースハックについて語っていただきました。
今回はグロースハックの専門家集団「PROJECT GROUP」の代表、田内氏に「オートメーション化時代の働き方とその中でグロースハッカーの位置づけ/役割/あり方」についてインタビューさせていただきました。
オートメーション化時代の到来により今後ますますの発展が予想されるWEBビジネス
Q.オートメーション化がWEBビジネスに与える影響とは一体?
一言で言えば、人材選別が加速し、二流三流のスペシャリストが不要になることですね。
時代の潮流として、WEBビジネスでのオートメーション化(=自動化)の流れが顕著になってきています。”オートメーション化”とは、人間が行っていた業務の一部を機械が代わりに行うこと。つまり、企業は「少人数でこれまで通り」か、業務が効率化することで「これまで以上の成果を出すこと」が可能になるのです。企業は無駄な人員を保有する必要がなくなりますから、二流三流のスペシャリストの需要がなくなるのは当然のことです。
オートメーション化の進行により、これまで以上に不要になる人材と必要とされる人材に選別されていくことが予想されます。
Q.背景としているオートメーション化とは?
現状、WEBマーケティングの業務のほぼ全てが機械と代替することが可能になっています。例えば、機械による代替可能性の高いポジションと、そのポジションに代わるツール例を以下の図に表してみました。
それぞれの業務を自動で行うツールの出現により、今まで必要とされていた「GoogleやYahooのキーワード広告の入稿のみできる」といった中途半端な専門知識だけを持ち合わせている人材は不要になります。
Q.「不要な人材」と「必要な人材」、その差はどのように生じていくとお考えですか?
不要な人材についてはシンプルで、オートメーション化が可能なレベルの業務しか出来ない「二流三流のスペシャリスト」のことですね。これまで、時代の主役はスペシャリストでした。
一芸に秀でていれば、程度の違いこそありますが仕事はあるし、何より大抵の企業はオートメーション化されておらず、多くの領域をスペシャリストの労力で解決しています。
しかし、オートメーション化が進むことで一部の一流プレイヤーを除いたスペシャリストの業務は、機械やAIに代替されていくと予想しています。
必要な人材については、我々の言い方だとグロースハッカーのことですね。WEB業界、特にWEBマーケティング界隈ですが、近年急激にツールや技術が多様化しすぎており、それらツールの種類や使い方など、把握するだけでもかなりの時間と労力がかかります。他社よりも良い成果を上げるために考えるべき選択肢の数は膨大になり、リスクとリターンを適切に管理するためには、より横断的で広範な視野がないと上手く運用出来ないところまで来ています。そこで登場してきたのが、グロースハッカーと呼ばれる人たちでした。
グロースハッカーとは、「必要な人材」として時代に適応するために誕生した新しいキャリアである
Q.グロースハッカーになるにはどうしたら良いのでしょうか?
「マーケティング・デザイン・エンジニアリングの知識+最低限の実行スキル」を持つことです。加えて、判断力を磨くことも必要です。
そもそも、この世の中に「完成している」と言えるプロダクトはないと考えています。時代やユーザーニーズは常に変化を遂げていく中、完成したまま放置された、言わば「作りっぱなしのプロダクト」がそれらの変化に適応できる訳がないのです。
その時その時のニーズに合わせ、常にプロダクトを成長させていくことがグロースハッカーの仕事の神髄。グロースハッカーは成長させていくための手段を自分で見つけ出していかなければならないため、「知っていること・実行できること、常に正しい判断をすること」この3つをトータルに行えることはマストですね。
この3つを効率的に行えるようにするには、独学するよりも広い範囲で業務をこなし、そのための教育スキームがある環境で働きながら学ぶことをお勧めします。
WEB業界は高速で変化が起きることに加え、ただ知識を覚えるだけでなく実践できなければ意味がないからです。例えば弊社では、グロースハッカーを2カ月で育成する教育スキームを備えています。そのためWEB未経験者でもグロースハッカーになることが可能です。
Q.グロースハッカーに適している人材とは?
グロースハッカーは、かなり泥臭く根気のいる作業を行います。そのため、個人的には性格面がかなり重要な素養であると考えています。具体的には、
▽地道な改善作業をひたすら積み重ね
失敗をただの失敗として捉えず
そこから学び、再び改善を繰り返して成功に繋げられる泥臭い作業を行えること
つまり、多角的な視点をもち泥臭い作業を厭わない人材がグロースハッカーというキャリアに向いていると思いますね。
一人の力で数百億の利益を生み出すグロースハッカーはシリコンバレーではすでにスタンダードになりつつある
Q.今後想定されるグロースハッカーのキャリアパスとは?
今後、グロースハッカーはWEBビジネス・各企業において必須の存在となるでしょう。
また、社内/社外においてトータル作業を行い、ビジネス全体の戦略を自分で考えられれば、時間や場所を選ばず独立することも可能です。
最近では「ママグロースハッカー」なる集団が現れ注目を集めましたね。(我々としては、これはグロースハッカーとは言い難いが)働き方の形態としても、マインドとしても、グロースハッカーはWEBに何かしらの新しい風を起こすのではないでしょうか。
実際グロースハッカー発祥の地、シリコンバレーではすでに求人数は1000件・年収2000万を超えるグロースハッカーも存在しています。「グロースハッカーが現代の社会情勢に適合している」のではなく「現代の社会情勢に合わせてグロースハッカーというキャリアが誕生した」と考えているので、キャリアとしてスタンダードになることは必然的であると予想しています。
Q.実際、現地で活躍するグロースハッカーは一体どんなことをしているのでしょうか?
シリコンバレーはグロースハッカー発祥の地だけあって、これまでに数々のグロースハッカーが活躍しています。その中でも、特に私の記憶に残る事例は2012年の「オバマVSロムニー戦」。有名なので知っている人もいるかと思います。
当時オバマ元大統領と最後まで大統領のイスを争っていたロムニー候補陣営は、「グロースハック」の取り組みで約140億円もの個人献金を集め、オバマ陣営をギリギリまで追い込んでいました。
彼らは、数時間単位という圧倒的なスピードでWEBサイトを分析し、施策の改善・検証というサイクルを繰り返すことで、オバマを追い込むことに成功したのです。
特に効果をもたらした施策は、献金到達度を示すプログレスバーの設置。献金した人々は、プログレスバーを100%にするため追加で次々に献金をしていきました。それにより、わずか数時間で献金額は爆発的に向上したのです。
「ユーザー心理を巧みに扱い」「圧倒的なスピード感と」「小さな施策で大きな成功を生み出した」この例は、まさにグロースハッカーの仕事の本質だと思いましたね。
最近大成功を収めたAirbnbやUberなどのユニコーン企業も、グロースハッカーが大きく貢献しています。
グロースハッカーはプロダクトを成長させるためであれば手段を選ばないため、とる手段は人それぞれですが、共通して「圧倒的なスピード感」と「データドリブンな量質転化」が行われているプロダクトは高確率で成功していると感じます。
Q.WEBビジネスにおいて、今後グロースハッカーの存在が与える影響力とは?
働き方は大きく変わると考えていますよ。はっきり言ってしまえば、一流のスペシャリストとグロースハッカー以外はWEBにおいて不要になると思っています。
変数が膨大な意思決定や再現性の低い高度な技術を除いた多くの業務がオートメーション化されてしまうので、二流三流のスペシャリストの役割は無くなっていくでしょう。
これまでスペシャリストであった「プランナー・デザイナー・エンジニア・マーケッター・アナリスト」たちは、今後生き残っていくためにトップクラスのスペシャリストになるか、もしくは横断的で広範な見地をもったグロースハッカーになり、これまでの経験や手法、専門性に囚われないアウトプットを出すことが必須の時代になっていくと考えています。
そういった意味で、今後のWEB業界のスタンダードは一人で全部できて・知識があることが当たり前となっていくでしょう。スペシャリスト主体の時代から、グロースハッカー主体の時代へ変化していくと考えています。
お話を伺った方:田内 広平さん
PROJECT GROUP株式会社の代表取締役。 2012年3月、創業。45以上の自社メディアのグロース経験で培った「高度なユーザー行動解析技術」「数千を超えるA/Bテスト履歴」を元に「グロースハック事業」を展開。コンサルティングおよび改善実行で大手クライアントを中心にサービスを提供し、現在までに150社以上・250サイト以上の改善実績を積み、圧倒的な改善施策データベース量誇る。「EC事業」「ツール事業」「サイト買収事業」の新規事業にも力を入れつつ、既存事業の強化を行い、日本のWEB業界にグロースハックを布教していく。
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