『シン・ゴジラ』に学ぶ。人事戦略における人材配置・ビジョン浸透・リーダーシップ育成 (2017/12/10 nomad journal)
人事戦略とは?
昨今、企業のグローバル化に伴い、日本企業の人事のあり方が大きく変わりつつあります。そのなかで、2000年代に入り注目されているのが、経営戦略に沿った人材活用における戦略「人事戦略」の考え方です。
つまり、経営戦略と人材マネジメントをつなげ、経営戦略の実現および、企業の競争力の底上げを達成する人事のこと。
たとえば、「売り上げ拡大と利益率向上」という経営目的があった場合、そのゴールを達成するために「誰に何を任せるか(配置するか)?」「チームの強みは何か?」を経営者自身が人材マネジメントをおこないます。
しかし、日本企業ではまだまだ年功序列意識が根強く残っていたり、人事と経営が戦略パートナーとして結び付けられていないなど、課題が多く残っている現状です。
人事戦略の事例・映画『シン・ゴジラ』の巨災対
2016年に大ヒットした映画『シン・ゴジラ』をご覧になった方も多いことでしょう。東京を蹂躙するゴジラの対策チームとして登場する「巨大不明生物特設災害対策本部」(通称、巨災対)の例を見ることで、実は「人事戦略とは何か」が見えてくるのです。
余談ですが、まだ『シン・ゴジラ』をご覧になっていない方は、ぜひDVD・Blu-rayや動画配信サイトなどでご視聴されることをオススメします。単純におもしろい映画です。
人事戦略の事例(1)~人材配置の最適化~
厳密に言えば、『シン・ゴジラ』の巨災対は官僚や学者など公務員かなら成り立つ組織です。企業になぞらえて考えるのはそもそもムリがあるかもしれませんが、そこはいったん脇に置くとしましょう。
ゴールを達成するための組織づくりには、「社員が最大のパフォーマンスを発揮し、最大の成果を得る」ための人材配置の最適化がポイントとなります。従来の日本型企業では、年功序列やしがらみなどで、この人事戦略の基本からつまづく例も少なくありません。
『シン・ゴジラ』の主人公で、巨災対事務局長に任命された内閣官房副長官の矢口蘭堂(長谷川博己)の最初の仕事は、巨災対の人事配置でした。官僚の組織と言えば、年功序列やしがらみにとらわれた、日本でももっとも窮屈な組織というイメージがあります。
しかし、矢口蘭堂の人事はまさに「ゴジラを倒す」という巨災対のゴールを達成するための最適解でした。劇中のセリフをそのまま引用すれば、「そもそも出世に無縁な霞ヶ関のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児」の集まりです。
出世に無縁な彼らが選ばれた理由はひとつ。「ゴジラを鎮圧する」というゴールを達成するために最大の能力を発揮する人事戦略のためです。
人事戦略の事例(2)~ビジョンの浸透~
人事戦略が経営戦略を遂行するための人事であるとするならば、企業にとって「売り上げの拡大・利益率向上」などが経営戦略によって達成されるべき目的(ゴール)となります。
一方で、巨災対における経営戦略によって達成されるべきゴールは「ゴジラを倒すこと」となります。
さらに、ゴールを達成するためには社員全員へのビジョンの浸透が欠かせません。そのためには、組織をまとめる経営者の強いリーダーシップが必要となります。巨災対事務局長の矢口蘭堂(長谷川博己)は、劇中で強いリーダーシップを発揮します。
日本における人事戦略に成功した企業の事例を見ても、組織には必ずプロの経営者など強いリーダーの存在が欠かせません。
人事戦略の事例(3)~社員一人ひとりのリーダーシップ育成~
組織のトップに立つ一人の強いリーダーに、周囲の人間が追従するような旧来型の人事では、グローバル化が進み、変化の早い時代に生き残れないのです。
巨災対の例では、とくに「ゴジラ凍結作戦」を準備するシーンに顕著ですが、事務局長である矢口の「鶴の一声」ですべてが決まりません。構成メンバーの一人ひとりが、それぞれの分野でリーダーシップを発揮。
まさに「映画的快感を覚えるように」凍結作戦の段取りが進んでいくシーンが描かれます。
人事戦略では組織の人材一人ひとりがリーダーシップを発揮し、決断・実行・改善を続けていくことが必須です。つまり、強いリーダーの決定に従う組織ではなく、個々がリーダーシップを発揮し、さらに強いリーダーシップを持った人材が全体をまとめる、組織をつくることが人事戦略の目的となります。
経営戦略を実現できる組織とは?
変化のはやい時代だからこそ、従来型の人事や人事部はこれまで以上に経営者的視点が求められます。「どのような組織づくり(人事戦略)をすれば、企業の経営戦略を実現させることができるのか?」
本記事では映画『シン・ゴジラ』で活躍する巨災対を事例として、人事戦略の考え方についてまとめてみました。
現実の一般企業の実例と違って、あまりに映画的な理想の組織として描かれていますが、経営戦略を確実に実行し、ゴールを達成した人事戦略の好例として観察すると、『シン・ゴジラ』という映画自体に経営戦略・人事戦略のヒントが隠されているかもしれません。
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