いよいよ見えてきた次世代型の雇われない働き方の輪郭 (2017/12/18 瓦版)
ランサーズが人材企業と金融企業との合体で見据える未来
「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」を新ビジョンに据え、創業10周年にまい進するランサーズがこのほど、人材企業のパーソル、金融企業の新生銀行と新たに資本業務提携。AI活用に加え、ヒトとカネを組み合わせるその先には、いわゆる正社員と一線を画す、次世代型の雇われない働き方の輪郭が浮かび上がってくる。
仕事はプラットフォーム上から働き手の希望やスキルに合った案件をAIで自動選別。事業が軌道に乗ってくれば、スキルアップや設備増強にかかる費用を個人融資を受け調達。業務の委託は、リアルとクラウドソーシングの間を自在に往来…。ランサーズが描くテクノロジーによる新しい働き方は、個人が働く上での障壁をことごくクリアにする、フリーランスの理想の働き方そのものといえる。
実現のカギを握るのはもちろん、テクノロジーの力。ポイントは、個人の評価・スコアリングによる「タレントスコア」と呼ばれる仕組みの構築だ。個人事業主であるフリーランスの最大のネックは、信用力のなさ。これを、スキルや仕事の実績など、可能な限りデータ化し、収集。テクノロジーの力で標準化し、個人の信用力として対外的に通用する指標に転換。コミュニティ形成から教育、融資などフリーランスの活動を最大化する“信用データ”として、活用する。
個人事業主のネックを一気にクリアにする大きな一手
こうして、個人が、対外的に通用する“信用力”を手にすることで、その世界は一変する。大企業との取引はもちろん、リアルでの就業、決済、資金調達などが可能となり、規模こそ違えど、企業と変わらない事業展開をする道が拓ける。それはまさに、自身の腕一本で自立の道を選択したフリーランスにとって、不条理を取り払う理想といえる働き方そのものといえるだろう。
国内クラウドソーシングのパイオニアとして10年前に誕生したランサーズは、支払い方法、福利厚生、賞与支給…など、フリーランスの地位向上にあらゆる試行錯誤を繰り返してきた。その間、日本におけるフリーランス人口は、労働力人口の17%にあたる1,122万人(フリーランス実態調査2017 ランサーズ調べ)に拡大。昨今は副業解禁で、さらにその勢いは加速している。
そうした中で実現した人材企業と金融企業との提携は、同社の新ビジョン「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」を加速する一大アクションといえ、働き方変革にも一石を投じることになるだろう。良くも悪くも会社への依存度が高い日本の労働者のメンタリティを猛烈に刺激する要素がそこには詰まっているからだ。
同社は「今回の資本業務提携によって、雇用・契約形態にとらわれず、『多様な働き方を、安心していつでも選択できる社会』の推進を加速します」とその展望を明かすが、会社中心から労働力としての個人を最適化する個人中心の労働社会へのシフトが、いよいよ具体的にイメージできる環境が整い始めた。フリーランスはリスク、からフリーランスが当たり前の世界。ランサーズの野望は着々と実現に近づいている――。
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