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副業と法律:第14回 副業する際に気をつけておきたい「競業」と「秘密保持」への理解 (2017/11/30 nomad journal

副業容認へと舵を切った政府の働き方改革の下、少しずつではありますが従業員の副業を認める企業が増えてきました。これを機に勤務先でも副業が解禁になったという方もいるでしょう。しかし、不用意な行動から競業避止義務違反や秘密保持義務違反に問われ懲戒処分の対象となることもあります。

「営業秘密の漏洩防止」は、多くの企業が副業禁止の主たる理由としてあげています。今回は、副業を始める際に理解しておかなくてはならない重要な論点である競業避止と営業秘密の問題についてみていくことにしましょう。

秘密

どんな副業でもOK?遵守しなければならない競業避止義務

労働者は、労働契約の付随義務あるいは就業規則によって競業避止義務を負うものとされています。競業避止義務とは、会社のノウハウや蓄積された情報などを利用して、会社の利益を害するおそれがある行為を制限するためのものです。例えば、ノウハウや営業秘密、顧客情報などを利用して同業他社などで就業しないことを義務付ける場合がこれにあたります。

副業が解禁されたとしても、同業他社での就業や同業種の自営まで認めてしまうと、本業先の営業秘密等を利用される可能性があります。そのため本業先としては無条件で副業を認めることを避け、許可制を採用した上で、自社の利益を害する危険性のない副業のみを認めるケースが多くなると思われます。

会社が無許可で副業を認めていても、競業避止義務は労働契約の付随義務として課せられていることに変わりはありませんので、トラブル防止の観点から同業他社での副業は控えるのが賢明でしょう。

働き方の多様化が影響。営業秘密の漏洩は従業員ルートが大半

副業を許可制としているケースでは、労働者の申請内容をもとに副業が競業にあたらないと判断されれば許可されることになります。無許可で副業を認めていても、就業規則によって定められている場合はもちろん、労働契約の付随義務としても当然、秘密保持義務は労働者に課せられています。業務上知りえた秘密(営業秘密)を社外へ持ち出すことが禁じられるのは競業と同様、会社の利益を害する行為だからです。

営業秘密が漏洩するルートには、不正アクセスによる漏洩、提携先・業務委託先からの漏洩、従業員等による漏洩など、いくつかのパターンがあります。

平成28年度のIPA調査「企業における営業秘密管理に関する実態調査」によれば、営業秘密の漏洩事例のうち、「現職従業員等のミスによるもの」が43.8%、「中途退職した正規社員によるもの」が24.8%あります。過去5年間に漏洩を経験した企業は、漏洩リスクを感じる社会動向変化として「人材の流動化(59.3%)」「他社との協業・連携機会の活発化(29.1%)」を多く挙げています。

IPA調査によれば、営業秘密の漏えいは従業員等が主なルートであり、その背景には働き方の多様化があることがわかります。こういった現状からすれば、社外との接触の機会が増える副業を認めることは、営業秘密が漏洩する機会を与えることにつながり、危険性が高い行為だと考える企業も多いと思われます。そのため、会社側からすれば副業を容認する一方で、これまで以上に秘密保持義務を強いものにバージョンアップしていく必要があることになります。

不正競争にも注意!強固なコンプライアンス意識で自分を守る

労働契約の付随義務あるいは就業規則の規定とは別に、不正競争防止法は在職中退職後を問わず営業秘密を不正競争の目的で使用または開示してはならないと定めています(不正競争防止法第2条第1項第7号)。営業秘密の漏洩に関し、不正競争の目的による使用、開示を防止するのが不正競争防止法です。

同法における営業秘密とは、

  1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)
  2. 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
  3. 公然と知られていないこと(非公知性)

を満たすものをいいます(不正競争防止法第2条第6項)。

不正の手段によって上記3つの要件に該当する営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為が不正競争防止法によって規制されることになります。

営業秘密の持ち出しが不正競争の目的を有するものであれば,会社は差止請求ができます(不正競争防止法第3条)。このため、会社としては労働者が保有するノウハウや技術を提出させて管理秘密とすることで、事実上の副業統制を行うことが考えられます。副業解禁の一方で、今まで以上に営業秘密の管理と保護が図られることになるわけです。

まとめ

経済産業省の「営業秘密の保護・活用について」には、営業秘密の漏洩事例が掲載されています。不正競争防止法の規制類型の解説もあり参考になります。

もし、同種同業に相当する副業を始めようとするなら、労働契約や就業規則による規制はもちろんですが、不正競争防止法の理解も重要となります。また不正競争の目的がなくても、自己が有する情報を安易に流出させると過失となり、民事上の責任を追及されることにつながりますので注意してください。

副業解禁にともない営業秘密の保護に関するコンプライアンスは、これまで以上に厳しいものが要求されるようになるでしょう。副業を始めるにあたっては、営業秘密等を流出させることにないよう高い意識を持っておく必要がありそうです。

記事制作/白井龍

提供:nomad journal

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