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副業と法律:第13回 副業容認へ転換した企業の例―従業員の成長を支援 (2017/11/22 nomad journal

関連ワード : 働き方改革 労働・雇用 

今回も前回に引き続き、副業を認容するようになった企業の例から、それぞれの企業の働き方改革について特徴をみていくことにしましょう。

カフェで打ち合わせ

1.さくらインターネット

副業・起業に相談窓口 チャレンジ精神応援に独自支援策
https://www.sakura.ad.jp/

インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社には、「さぶりこ(https://www.sakura.ad.jp/corporate/corp/sabulico/)」と呼ばれる独自の働き方支援策があります。その目的は、従業員が会社以外の場でも様々な知識に触れることによって、広いキャリアを形成するとともにプライベートを充実させることです。仕事とプライベートの双方で知識を得、経験を積み重ねられるような職場作りを目指しています。

支援策のうち副業に関するものとしては、在籍しながら他社で働くことも自ら起業することもできる「パラレルキャリア」という制度があります。起業したい従業員にとっては、会社に在籍しながら準備を進められるので経済的リスクが小さくなる点が大きな魅力です。さらにキャリア形成に関する相談窓口も用意されているので、ひとりで悩むこともなく安心して準備を進められます。

副業を後押しする体制の背景には「失敗を重ねて成功につなげることが起業の本質」という考え方があります。勤務時間を10分単位でスライドできる「さぶりこフレックス」や仕事が終われば定時の30分前に退社できる「さぶりこショート30」といった勤務時間を自己管理できる制度もあり、副業できる環境作りに一役買っています。

このようにさくらインターネットでは、個性やライフスタイルに合った働きやすさを充実させるための仕組み作りが進んでいます。「さぶりこ」はチャレンジできる社風への試金石なのでしょう。

2.オイシックス

代表の兼業が副業容認のトリガーに 自己管理で経験とスキル獲得
https://www.oisix.com/

食材宅配ネットスーパーのオイシックスは、東日本大震災後、同社の代表が復興のための一般社団法人を設立したことを契機に、全従業員に兼業を認めることになったといいます。従業員の兼業・副業を認めていくことで優秀な従業員の定着が可能になることに加え、自社では経験が難しい機会の獲得やスキルを身に付けられることから、今では役員をはじめ多くの従業員が年齢や性別の別なく兼業・副業を実践しています。

副業を始めようとする従業員は、所属部署の上司と人事部門に対して申請しなければなりません。副業をスキル形成の機会と捉えていることから、単なる所得の補填目的ではないかどうかをチェックするためでもあります。

オイシックスでは、兼業・副業は本業があってのものであると位置付けており、半期毎の人事考課面談と期中の中間面談を通じて、本業への影響がないかどうかを確認することにしています。会社が多様な働き方を認める一方、個々の従業員各人が自己管理に基づいて本業での成果を出すことが求められているといえるでしょう。

3.フューチャースピリッツ

会社公認の働かない時間を 目標を明確に自らキャリア形成

企業向けホスティングサービスを提供するフューチャースピリッツには、就業時間中でも副業ができる「会社公認 働かない制度」があります。内容を事前に申請し承認されれば、月間20時間を限度に就業時間中に副業をすることができるようになります。

この制度は、そもそも副業のためのものではなく、就業時間中にも趣味や勉強のために自由に使える時間を作るという趣旨から始まりました。利用にあたっての申請フォーマットは「何をするのか」「収入はあるのか」という内容のみにとどまっています。社外の人材との交流を活発化し、従業員の発想をより柔軟にしたいという狙いがあり、制度利用のハードルを低く設定しています。

終身雇用の中で会社が用意した研修システムに乗ってキャリア形成を図るのではなく、自ら将来への設計図を考え、どのような方法でその設計図に従って成長するのか、ということを個々の従業員にゆだねる制度だといえます。従業員がそれぞれ明確な目標を持つことで、会社全体のポテンシャルは上昇します。それは会社にとっても大きなメリットなのです。

フューチャースピリッツでの働き方は、朝に出社して会社から言われたことをやって夜には帰る、というこれまで当たり前だった働き方に警鐘を鳴らしているのかもしれません。

4.まとめ

いずれの企業が採用する制度もその根幹にあるのは「従業員の成長を支援する」というコンセプトです。個々の従業員の成長は会社の成長につながります。働き方が多様化する中で人材の流出を防ぐとともに、労働環境の差別化によってあらたに優秀な人材を確保しようという目論見もあるのでしょう。

しかしいくら働き方の自由度が高い制度を作っても、それを利用する従業員が明確な目標を持たなければスキルアップにはつながらず、会社全体のポテンシャルは底上げされません。

前回に引き続き今回取り上げた企業に共通するのは、賃金が上がらない中で収入アップのために副業を認めるというような消極的な副業容認の制度ではなく、幅広い知識と経験を獲得し個々の成長につなげるという副業のメリットに焦点をあてて制度設計をしている点です。労働時間などの法律的な問題についても会社側が適切に対応することで、無理のない制度利用が可能になるでしょう。今後、多くの企業でこのような副業の積極的な利用が進み、働く者にとって意義のある改革になることが期待されます。

記事制作/白井龍

提供:nomad journal

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