8割超が「実感していない」と回答した働き方改革の問題点 (2017/12/5 瓦版)
意識調査で分かった働き方改革の非現実性
働き方改革ってなんですか? 一般社団法人日本能率協会(JMA、会長:中村 正己)が全国のビジネスパーソン1,000人に対し、働き方改革に関する意識調査を実施。その結果、8割超が「働き方改革」を実感していないことが分かった。
2016年秋ごろから政府も本腰を入れ始めた「働き方改革」。丸1年以上が経過した中で行われた調査結果は、見るも無残なものだった。働き方改革を実感しているかどうかに対し、「あまり実感していない」が41.5%、「まったく実感していない」が39.2%となり、合せると働き方改革を実感していない人は、80.7%で8割を超える結果となった。
<1年では結果が出ないのも仕方がない>、あるいは、<1年といえど8割超が実感していないのはいかがなものか>なのか…。すぐに結果が出る類のものではなく、単純に評価はできないが、これだけ声高に叫ばれる状況下だけに、もう少し実感する人がいてもいい、というのが実際のところではないだろうか。
ではなぜ、8割を超えるビジネスパーソンが働き方改革を実感できていないのか。その理由は、「有休が取りにくい」「給料格差がなくならない」「残業が減らない」がトップ3だ。それぞれ、働き方改革の重点項目に入っているもので、現場レベルでも実感しやすい項目。多くの企業でそれらがまだ実現していないということなのだろう。
別の調査では、働き方改革に取り組んでいることを認識しながら、労働時間だけが短くなり、業務量は減らない、という“ジタハラ”(時短ハラスメント)に苦悩するビジネスパーソンが4割を超える結果が報告されている。これらを併せて考えると、働き方改革の存在こそ認識すれど、現場レベルではまだまだ非現実的な取り組みであることが自ずと鮮明になる。
働き方改革が浸透するために必要なこととは
この調査において、対象者が「働き方改革」と聞いてイメージすることは、男女とも「有休取得」「残業減」がトップ2。次いで、「育児と仕事の両立」「女性活躍」「生産性向上」と続いている。特にトップ2については、業務量の削減か劇的な生産性向上でもない限り実現が困難なだけに、売上げとのバランスを考えると、「実感なし」が8割超というのもある意味では妥当、といえるのかもしれない。
興味深いのは、属性別の認識の違いだ。性別では、男性より女性、年代別でみると40代、50代のミドル層、雇用形態別では、正規職員より非正規職員の方が、働き方改革を実感していない結果となっている。いわゆる“弱者”側が、より働き方改革を実感できていないというのは、改革への道のりが険しいことを暗示しているといえるだろう。
新語・流行語大賞でノミネート30語に選ばれるなど、2017年は年始から注目度が高かった「働き方改革」。取り組み企業も目立ったが、この結果をみる限り、効果の浸透度はまだまだというのが実状。とはいえ、働き方改革は、企業主導では限界があり、働く個人がしっかりとその意味を咀嚼し、自分事として取り組まなければ本当の前進はない。その意味では、今後、働く側の意識改革もより重要なフェーズに入っていくことになりそうだ。
◇
調査方法:インターネット調査
回答数 :1,000人
属性 :
[性別]男性555人、女性445人
[年代]20代156人、30代243人、40代240人、50代209人、60代152人
[雇用形態]男性(正規444人、非正規111人)、女性(正規194人、非正規251人)
[勤務先従業員数]5,000人以上170人、1,000~5,000人未満154人、300~1,000人未満166人、100~300人未満182人、100人未満328人
※回答は%表記とし、小数点第2位を四捨五入
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