副業と法律:第1回 収入アップと副業禁止規定の間で苦悩する会社員 (2017/8/28 nomad journal)
【副業する理由は、「収入」が83%】
好きなことや趣味を副業にしたり、本業にもいい影響があるようなスキルアップに繋がる副業がもてはやされていますが、実際にアンケートを取ってみると、副業をする目的は「収入」だという人が大部分だそうです。ですが、いまだにほとんどの会社では副業禁止規定があったり、残業が多くて副業どころじゃない人もたくさんいます。副業したくてもできない、サラリーマンのジレンマについて考えてみたいと思います。
私が会社員をしていたころの話です。会社の仕事とは別にアルバイトをしている同僚が何人かいました。アルバイトといってもさまざまで、内職的に家で仕事をしている者もいれば、深夜にバーでカクテルを作っている者もいました。
なぜ本業以外にアルバイトをするのか聞いて見ると、車のローンを支払うため、給料が安いから、趣味と実益を兼ねて……など答えはさまざまでした。もちろんアルバイトは禁止されていましたから会社には内緒です。
しかし、時代の流れとともに働き方に対する価値観は変化しました。終身雇用制は崩れ、ワークシェアを導入する企業もあります。社員の副業を原則として認める企業も現れ、影の存在だった副業に光がさす時代となりました。
この連載では、そんな副業についてさまざまな側面から見ていきたいと思います。
1.副業とは? 副業の要因は生活不安
副業とは、収入を得るために携わる本業以外の仕事のことをいいます。アルバイト、在宅ビジネス、内職など、呼び方はさまざまですが、どのような形態であれ、本業以外で対価を得るために就労すれば副業ということになります。
株式会社マイナビの会員向けWEBアンケートによれば、「現在の収入に満足していますか?」との問いに「はい」と答えた人は22%にとどまっています。PGF生命(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社)のインターネットリサーチでも、「報酬に満足」と答えた人は29%です。
このように、就労者のうち70%以上は現状の収入に満足していません。マイナビのアンケートによれば、収入に満足していない理由として「生活に余裕がない」「将来が不安」といった生活不安の要素があげられていました。一方、エン・ジャパンのアンケートでは、副業に「興味がある」と回答した人は88%で、理由として「収入を得るため」が83%を占めています。
今の収入では満足できない、このままでは貯蓄もできず将来が不安……そんな実情の下、本業以外で収入アップを図りたいと思っているサラリーマンは多いと思われます。副業はそのための選択肢のひとつなのです。
2.サラリーマンの副業は何が問題なのか?
サラリーマンの場合、勤務先の就業規則に副業禁止規定があることから副業したくてもできない、という場合が多いと思われます。本来、自由に使えるはずの勤務外の時間の自由使用が制限された上に、この規定に反した場合、懲戒処分というペナルティまで科されることもありえます。副業禁止規定は、収入アップを図りたいサラリーマンにとって何ともやっかいな存在です。
しかし勤務外の時間をどのように使うかは個人の自由です。だから勤務外の時間の使い方について会社にとやかく言われたくない、そう思う方も多いはずです。
ではなぜ会社は副業を禁止しているのでしょうか。
さしたる意味もなく、ただ漫然と禁止しているだけなら社員の自由を不当に制限しているとして法的な問題になりかねません。社員の副業が会社にとってデメリットであり、合理的な理由があるからこそ禁止していると思われます。副業禁止規定の法的問題については次回以降で詳しく見ていきますが、この副業禁止規定は副業で収入アップを目指すサラリーマンにとって最大の壁となっています。
3.自営業者なら副業は自由なのか?
サラリーマンと異なり自営業者の場合、副業に対する制約はありません。自由に副業が行えます。法律の規定や公序良俗に反しない限り、どのような副業をして収入アップを図るかは自分次第です。
中には、本業より副業で始めた仕事による収入のほうが多くなり、どちらが本業か副業かわからないような人もいます。自営業者は、誰の干渉も受けずに自由に副業ができるのです。こうして見ると、副業が問題になるのは、もっぱらサラリーマンだといえます。
4.まとめ
深夜のバーでカクテルを作っていた同僚は、数年間のアルバイトの末、バーテンダーを本業とするため会社を辞めました。続けるうちにプロとしてやってみたいという衝動に駆られたと言っていました。カウンターの向こう側でタンブラーを振る彼は、会社にいた時より物静かながら、どこか生き生きとした表情をしていたことを覚えています。
今年3月、政府が発表した「働き方改革実行計画」には「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」という項目が挙げられていました。そこには、「副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」とあります。
これを受けた形で、副業を認め、推奨する企業も登場してきたわけですが、会社が社員の処遇改善を行うことなく新たな長時間労働の舞台を用意したに過ぎないと見る向きもあります。多くの人が副業を生活のためと位置付けている現状では、そういった見方も否定できません。
プロのバーテンダーになった彼のように、スキルアップや生きがいに直結するような副業のあり方が理想だとしても、実際にどれくらいの人が理想に近付くために副業をしているのでしょうか。次回以降、こうした現状を踏まえ、副業のあり方について細かく検討を加えていくことにします。
記事制作/白井龍
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