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沖縄労働局が派遣元事業者に改善命令、二重派遣とは (2017/8/21 企業法務ナビ

関連ワード : 労働・雇用 法律 

はじめに

厚生労働省沖縄労働局は9日、株式会社シー・アール・シー(名古屋市)に対し、違法な二重派遣行為を行っている疑いがあるとして労働者派遣法に基づく業務改善命令を出していたことがわかりました。労働関係法令で厳格に規制されている二重派遣。今回はその要件を厚労省告示などから見ていきます。

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事件の概要

厚労省の発表によりますと、株式会社シー・アール・シー(以下CRC)沖縄支店は平成28年2月から同年12月にかけて沖縄県内の労働者派遣業3社から業務委託契約と称する契約により派遣労働者を受け入れ、さらに県内の供給先企業に派遣していたとされております。派遣された労働者は派遣先企業の指揮命令の下で業務に従事していたとのことです。同社は延べ492日間に渡ってこのような派遣行為を行っていたとされております。沖縄労働局はCRC社に対し行っている派遣業、請負業の全てを対象として関係法令違反がないか調査を行い、問題を速やかに是正するよう改善命令を出しました。

二重派遣とは

二重派遣とは、派遣元会社と派遣先の会社の間にさらに仲介会社が介在する場合を言います。派遣労働者として二重に仲介手数料を賃金から控除されることになります。また労働中の事故といった労働災害などの問題が生じた場合、責任の所在が不明確となり、また違法派遣の隠蔽目的から問題がうやむやにされるといった傾向が強いと言われております。このように二重派遣は派遣労働者にとって非常に不利な立場に立たされることから労働関係法令では厳しく制限されております。

法律による規制

職業安定法44条によりますと「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行ない、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」としています。自己と雇用関係にない者を供給し供給先の指揮命令の下に労働させる行為を禁止しており、違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(64条9号)。

そして労働者派遣法2条1項では「労働者派遣」を「自己の雇用する労働者」を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働」させることを言うとしています。つまり自己と雇用関係にない者を派遣することは適法な労働者派遣に該当しないことになります。また労働基準法6条でも「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」としいわゆる中間搾取を禁止しています。

派遣契約と請負契約

派遣先企業が請負契約として派遣されている労働者を他社で働かせても、上記二重派遣にはならない場合があります。つまり派遣労働者を自らの指揮命令の下で働かせている場合は、就業場所が他社であっても二重派遣にはなりません。違法となるのは派遣労働者をさらに派遣し、派遣先の指揮命令下で労働させる場合だからです。この点を利用し、派遣契約ではなく請負契約ということにして二重派遣を行う悪質な例もあると言われております。そこで厚労省から「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年告示第37号)、いわゆる37号告示が出されております。

37号告示の基準

37号告示では、名目上の契約の形式ではなく、より実体に即した判断によって請負か派遣かを決定しております。まず(1)労働者の業務内容や勤怠管理、労務に関する風紀等を自ら直接指揮命令し労働力を直接利用しているか、そして(2)賃金を自らの責任の下に調達し、業務処理について事業主として自ら全ての責任を負い、単に肉体的労働力を提供するだけのものではないかという点から真に請負契約と言えるかで請負と派遣を区別しております。これらの基準を満たさない場合、契約の形式は「請負」となっていたとしても派遣事業とみなされることになります。

コメント

本件でCRC社は県内の派遣業者から「業務委託契約」として労働者の派遣を受け、さらに県内の他社に派遣契約として労働者を派遣していたとされております。派遣元から派遣契約をし、さらに請負契約として派遣するという形態ではなく、最初の派遣を「業務委託契約」として受け入れている点に特徴があると言えます。しかし沖縄労働局はこの点も実質においては「派遣契約」となんら変わる所はないと判断したものと考えられます。以上のように違法な二重派遣か否かはどこに指揮命令権があるのか、請負の実質を備えているかなどで実体的に判断されることになります。

違反した場合は派遣業者だけでなく、それを知って利用していた派遣先企業にも罰則が適用される可能性もあります。派遣労働者を業務委託で取引先に出向させる場合はこれらの点に十分注意し、違法な二重派遣とならないように配慮することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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