沖縄に3000億円投資表明、中国カジノ企業CEOは何を語ったか【全文書き起こし】 (2017/8/7 Traicy)
500ドットコム(500.com)は、沖縄・那覇市で8月4日に開催したシンポジウムで、沖縄で統合型リゾート(IR)の進出を検討する意向を示した。
シンポジウムは基調講演とパネルディスカッションの2部構成。500ドットコムの潘正明(パン・セイメイ)最高経営責任者(CEO)が「500ドットコムの取り組みとアジア圏におけるアウトバウンド事情」、衆議院議員の秋元司氏が「日本におけるIR法の位置づけと今後の展望」と題した基調講演を行い、パネルディスカッションには、笹川経済支援機構代表理事で日本カッシーノフォーラムの笹川能孝氏、元横浜商科大学教授の小濱哲氏を合わせた4人にコーディネーターとして沖縄県議会議員の山川典二氏が加わった。
シンポジウム後に開いた記者会見では、総投資額が1,500億円から3,000億円となることを明らかにした。ショッピング施設やコンベンション施設、シアターなどの運営は、地元企業やホテル運営会社が行い、500ドットコムはカジノの運営に特化する意向。資金は自社で調達する。
2016年の中国人の渡航者数は、リゾートである海南島へは4,900万人、カジノ都市のマカオへは約3,000万人、買い物目的の人が多い香港へは約3,000万人で、全ての機能を沖縄で賄うことができると予測している。3つの都市を訪れる観光客うち5%、10%が沖縄に渡航するようになることで、数百から数千万人規模の観光客の誘致が見込めるとした。
シンポジウムの基調講演での潘正明CEOの講演全文を掲載する。
お集まりのみなさま、こんにちは。この場にご来席の、沖縄県の皆様方に大変感謝したいと思います。
沖縄の爽やかな海風と、紺碧の空を見ると、夏川りみさんの魅力的な声と『島唄』の感傷的な歌詞を思い出さずにはいられません。『でいごの花もちり さざ波がゆれるだけ。ささやかな幸せは うたかたの波の花。』三線のもの悲しい柔らかな音色は、世界中の人々を沖縄の美しい島々のとりこにしました。
この点を念頭に、今日、お越しいただいているみなさまに深い感謝の念を表したいと思います。この場をお借りして、わたくしども500ドットコムについて、お話しする機会をいただき、身に余る光栄です。
まずは、簡単に自己紹介をさせていただきたいと思います。私の名前は、潘正明(パン・セイメイ)と申します。沖縄の北、わずか800キロあまりに位置する中国・江蘇省南部の街で育ちました。上海の復旦大学、イギリスのエディンバラ大学、アメリカのコロンビア大学ロースクールで法律を学び、2003年にコロンビア大学で法務博士の学位を取得した後、アメリカの弁護士としてのキャリアを歩み始めたのが、法律事務所のシンプソン・サッチャー・アンド・バートレットでした。その後、ドイツ銀行香港支店の投資銀行部門バイスプレジデントを経て、2011年に500ドットコムに入社、新規株式公開の業務に携わりました。当社では、最高財務責任者を経て社長に就任、2015年からは最高経営責任者も兼務しております。
500ドットコムは、中国本土から初めて、また、唯一、株式を上場したゲーミング会社です。当社は、世界中のユーザーに業界トップクラスのオンラインゲーミングや、カジノゲームを提供すると同時に、中国国内の宝くじ業者に関連機器を提供しております。登録ユーザー数は6,000万人以上、総売上高は3,270億円を超えました。事業所は、香港、北京、深センに加え、欧州、北米各地に広がり、300人を超えるシニアエンジニアと50人を超える業界専門家で構成されているチームが業務にあたっております。
2001年、深センで設立され、当初は極めて小規模な会社でした。デスクトップコンピューターとインターネットの人気が高まっていくなか、当社の事業、技術チームはこれを軸にウェブベースのプラットフォームの構築に成功し、お客様にオンラインで利用していただけるようになりました。さらに、何年もかけて開発技術に投資し、技術革新をもたらした結果、完全に自動化されたバックエンドシステムをオンラインゲーミング発行代理店とシームレスに接続することにより、モバイルインターネットの飛躍的な拡大を享受することができたのです。
現在、当社のお客様は、指先一つでゲームができ、専用モバイルアプリを介して自動的に電子チケットを受け取っています。最も速く、簡単で、信頼性の高いオンラインゲーミング情報と、取引サービスをご提供することにより、中国市場におけるリーダーとしての地位を確立するに至りました。また、2013年には、ニューヨーク株式市場での上場に成功し、事業のグローバル化という重要な節目も迎えております。
その一方で、国内市場における地位強化を図るべく、垂直統合戦略のM&Aを複数回実施し、現在では、高品質かつ多用途の端末および部品と共にゲーミング関連の技術、システム、ソリューションを中国国内の国営オンラインゲーミング業者に提供できるようにもなりました。また、複数のヨーロッパ市場にも速やかに参入した結果、北欧ではオンラインゲーミングとカジノ市場のリーダー的存在として急速に頭角を現しています。さらに、マルタ島にある事業本部と包括的な一連のオンラインカジノライセンスを最大限に活用することにより、イギリス、アイルランド、ドイツといったヨーロッパの主要市場への進出を進めていく上で、優位な立場にあると言えるでしょう。これが実現すれば、135カ国を超える世界各地のお客様に当社の革新的な商品を提供できるようになります。
当社は、長年にわたり、さまざまな法的管轄区において、一度たりとも違反を問われることなく多様な商品ポートフォリオを提供してきました。企業の社会的責任、リスクコントロール、先端技術が正しい経営を確保する秘訣なのです。常にお客様の幸せを第一に考える当社では、さまざまなリスク要因、異なるコンプライアンス手順、法的要件を包括的に網羅すると同時に、効果的な依存症対策と責任あるゲーミング対策を装備した最新鋭の顧客管理システムが構築されています。
効果的で応答性に優れた依存症対策システムを構築する際に基盤となるのは、人、行動、お金、時間のライブモニタリングと特定です。当社のシステムは、適正かつ相当な注意、いわゆる“デューデリジェンス”と、“予防”、“休止”、“介入”の4大要素で構成されています。
1つ目の“デューデリジェンス”ですが、こちらは、私どもがお客様とその取引履歴を把握しておくことを意味します。当社のシステムは、不正行為を検知するためにデータベース全体を自動的に照合していますので、偽りがあればすぐにわかります。
2つ目の“予防”は、一週間の預入限度額を設定したり、新規プレーヤーに提供するゲームを限定したりするといった対策です。何か不規則な行動があれば、自動的にフラグが立てられ、念入りな追跡調査を実施、問題行動が認められなければ、より多くの新しいゲームをお楽しみいただけるという仕組みになっています。
3つ目の“休止”ですが、これは、当社ウェブサイトに用意されている、プレーヤー自身が自らに制限をかけられる一連の機能になります。例えば、掛け金の限度額、損失の限度額、セッションの限度を始めとする幅広い機能から選択できるだけでなく、一定時間内は休止にする“タイムアウト”や使用禁止を自己申請する“セルフエクスクルージョン”、さらに必要とあれば、永久に使用を禁止する“パーマネントエクスクルージョン”を要請する機能も装備しました。また、無責任なゲーミング行動が検知された場合には、取引が即座に中止され、そのアカウントが凍結される点は申し上げるまでもありません。
最後の“介入”は、状況に応じて、ユーザーの依存症回復を支援する取り組みです。プレーヤーが自制心を失ってしまったり、何らかの理由によりアカウントが凍結されたりした場合には、当社の顧客サポート専門家が手を差し伸べ、それぞれが抱えている問題に対する理解を深め、専門的な心理カウンセリングを提供、さらに必要とあれば、この他の緊急時プロトコルを実施します。
2013年以降、依存症対策システムの能力をさらに強化すべく投資してきたのが“ビッグデータ”戦略でした。結果として、当社のエンジニアは、膨大な量の顧客データを処理し、依存性行動パターンを特定する専有アルゴリズムを開発するに至りました。現在では、データマイニング技術が顧客管理(CRM)システムに統合され、潜在的な依存症行動を予測かつ特定できるようになっています。
地域の社会福祉も、当社がお客様の幸せと同時に力を注いできた取り組みです。500ドットコムは、社会福祉関連の宝くじ商品を販売することにより、この10年間で約1,160億円を調達したほか、へき地教育、地域のスポーツ振興、医療援助を始めとする数々の社会福祉プロジェクトの資金として5億5,000万円を超える支援をしてきました。当社には、支援を必要とされている方々、障害を抱えておられる方々、スポーツに秀でておられる方々の支援に特化した社会福祉基金が創設されております。
さて、将来についてお話しさせていただきたいと思います。当社は、今後5年間で、多角的エンターテインメントプロバイダーへと変貌を遂げる所存です。アジア一の観光地である沖縄の統合型リゾートプロジェクトに投資し、当社が擁する中国の新興富裕層のお得意様に沖縄でレクリエーションと観光を楽しんでいただくという理想的な選択肢をご提供したいと考えております。
申し上げるまでもないと存じますが、日本を訪れる中国人観光客の数は、ここ数年、劇的な増加を遂げています。2014年にはわずか220万人だった訪日中国人観光客が、2015年には500万人に倍増し、2016年には640万人まで増加、今年は800万人に達するとの見込みです。査証発給に関する新たな政策と予定されているオリンピックにより、この数は急成長を続けると私どもは確信しております。ただ、残念なことに、沖縄には、中国人観光客に最も人気の観光地であるマカオやシンガポールのような、高級ホテル、カジノ、ショッピングモール、会議場、展示場、コンサート会場といったニーズにワンストップで応えられる統合型リゾートがございません。
観光は、地域の経済成長を著しく刺激する産業です。2009年に迎えた世界的経済危機の後にシンガポール経済を劇的に立て直したのは観光業でした。同年、シンガポールの国内総生産(GDP)は対前年比で1.3%の減少を記録し、中国本土からの観光客も約100万人にとどまりました。同時期に中国本土からマカオを訪れた観光客が約1,100万人だったことを考えると、かなり低い数値だったと言えるでしょう。ところが、2010年初旬に統合型リゾートを2カ所オープンさせたシンガポールのGDPは、同年、対前年比で14.7%増加、総来訪者数は記録的な1,160万人に達し、その77%強がアジアからでした。
さらに、マカオは、もう一つの卓越した事例をご紹介できる地でもあります。2015年、マカオのゲーミング収益は、約3兆2億円に達しました。従来、収益において最大の割合を占めてきたのがVIPルームでした。ところが、このVIPルームの収益に対する貢献度が2013年の66%から2016年には53%と減少した一方で、マスマーケットの貢献度は2013年の28%から2016年には39%にまで増加しています。焦点がVIPハイローラーからマスマーケット観光客へと移行したのです。加えて、ショッピング、飲食、エンターテインメント、会議など、ギャンブル関連以外の収益も著しく刺激されました。
環太平洋地域という理想的な立地条件に加え、手つかずの自然が残されている環境と唯一無二の文化遺産を誇る沖縄は、中国人観光客の旅先として人気が高まってきています。しかも、北京、上海、広州、深セン、香港といった中国国内で最も裕福な都市から飛行機でわずか3時間ほどの距離です。
当社では、顧客のゲーミング行動を監視かつ予測するクラウドコンピューティングと人工知能アルゴリズムが装備された、最新のスマートCRMシステムを統合し、沖縄に最高の技術をもたらす準備が整っております。モノのインターネット(IoT)を介して物理的ハードウエアとお客様のモバイルデバイスをつなげ、ハイレベルな利便性と快適さをお楽しみいただける、真にスマートで安全な統合型リゾートを構築すべく、包括的なIT基盤を整備させていただく所存です。
沖縄に統合型リゾートが誕生すれば、アジア全域から何百万人もの観光客を引き寄せることになると私どもは確信しております。豊富な経験、大規模な事業ネットワーク、最先端技術と圧倒的な顧客ベースを誇る500ドットコムであれば、世界中で最も近代的な、最先端技術を擁する統合型リゾートの構築に著しく貢献し、沖縄県のお手伝いをさせていただけると確信しているのです。
当社は、“自然の美、技術の力、IRの魅力”というビジョンに揺るがぬ信念を抱いております。手を携えて、この夢を叶えようではありませんか。
ご静聴ありがとうございました。
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