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公取委が大阪ガスに立入検査、優越的地位の濫用について (2017/8/4 企業法務ナビ

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はじめに

公正取引委員会は3日、大阪ガスが業務委託先販売店に、ガス関連機器の購入を強制していた疑いがあるとして本社への立ち入り検査を行っていたことがわかりました。販売店のガス機器購入実績に応じて担当エリアの範囲を決定していた疑いがあるとのことです。今回は独禁法上の優越的地位の濫用についてみていきます。

給湯器

事案の概要

日経新聞などによりますと、大阪ガスは大阪など2府4県内で160店以上のガス販売店に業務委託契約と締結しておりました。それらの販売店にガスコンロや給湯器、浴室暖房機などの販売、設置修理点検業務を委託していたとのことです。大阪ガスは販売店に対し、これらの機材を顧客への販売用に購入を強制していた疑いが生じているとしています。大阪ガスは販売店に購入目標額を設定し、そのノルマを達成できない販売店には販売エリアを削減するとし、実際にそのようなペナルティーを科していた疑いもあるとのことです。公取委はこれらの行為が優越的地位の濫用にあたる恐れがあるとして立ち入り検査に踏み切りました。

優越的地位の濫用とは

自己の取引上の優越的な地位を利用して、取引相手方に対し不当に商品を購入させたり、金銭や役務の提供をさせる行為を「優越的地位の濫用」と言います(独禁法2条9項5号、一般指定14項)。両者間に一定の資本金格差、製造委託、修理委託などの特定の業務委託関係がある場合は別途下請法が適用されることになります。また優越的地位の濫用は独禁法、一般指定だけでなく新聞業、運送業、小売業に関する公取委の特殊指定にも規定されております。違反した場合には排除措置命令(20条2項)が出され、「継続して」行った場合には課徴金納付命令の対象となります(20条の6)。

優越的地位の濫用の要件

1.地位の優越性
公取委のガイドラインによりますと、取引上の地位が相手方に優越しているとは、市場支配的な地位など絶対的に優越した地位である必要はなく、相対的に優越していれば足りるとしています。相手方にとって自己との取引継続が困難になれば、事業経営上大きな支障を来し、著しく不利益な要請でも受け入れざるを得ない関係を言います。この判断にあたっては相手方の自己に対する取引依存度、相手方の代替的取引先の有無、自己の市場におけるシェアなどで総合的に判断されます。

2.正常な商慣習に照らして不当であること
「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものを言うとされております。現に存在する商慣習に合致しているとしても直ちにその行為が正当化されるというものではなく、公正競争促進の趣旨から個別具体的に事案ごとに判断されることになります。

3.各行為類型該当行為
上記地位の優越性が有り、正常な商慣習に照らして不当に以下の各種行為を行った場合に優越的地位の濫用に該当することになります。(1)取引の相手方に、取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること(2条9項5号イ)、(2)取引の相手方に金銭、役務、経済上の利益などを提供させること(同ロ)、(3)取引の相手方からの商品の受領拒否、返品、対価支払の遅滞、対価の減額その他相手に不利益な条件設定等(同ハ)のいずれかを行うことによって成立します。具体例としては融資先に金利スワップの購入、閑散期におけるホテル宿泊券の購入の要請、協賛金負担の要請、従業員の派遣要請、商品に問題が無いにも関わらず受領拒否などが挙げられます。

コメント

都市ガスの小売市場は近年自由化が進み、今年4月から完全自由化がなされ各電力会社などが参入しているとされております。それを踏まえても大阪ガスは全国の都市ガス市場において3割近いシェアを有し、関西においては現在においても圧倒的シェアを占めていると言えます。

提携先販売店にとっては大阪ガスからの取引が打ち切られた場合、直ちに事業経営に支障を来すと言えます。また代替的な取引先も、自由化がなされた今でもなお容易に得られるとは考えにくいと言え、地位の優越性は認められるものと思われます。またガス機器の購入実績で割当エリアを増減し、事実上購入を強制することはガス業界での慣習であったとしても、小売店に一方的に不利であることから不当であるとされる可能性は高いでしょう。このような業態が長期間継続していた場合は課徴金が課されることもあり得ると言えます。

自社との取引がなくなれば直ちに経営が困難となる取引先は、立場上ある程度の不利な要求は受け入れざるを得ないものと言えます。また業界ではそれが慣習となっていることもあるでしょう。しかし上記のとおり違法か適法かは公正な競争秩序から見て判断されます。自社への依存度が高い相手との取引では、ガイドラインを参考に違法とはなっていないかを注視することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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