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シェアリングエコノミーの法規制 (2017/07/29 企業法務ナビ

1.はじめに

 「第4次産業革命」へ的確に対応するための指標となる「新産業構造ビジョン」として、2030年代までに目指すべき4分野の一つにシェアリングエコノミーが含まれています。このようにシェアリングエコノミーは拡大傾向にありますが、シェアリングエコノミーに参入する際、どのような法規制があるのか、どのように対応すればよいのか、検討していきたいと思います。

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2.シェアリング・エコノミーとは

 「シェアリング・エコノミー」とは、個人等が保有する遊休資産の貸出しをインターネット上のマッチングプラットフォームを介して仲介するサービスをいいます。この遊休資産には、スキルのような無形のものも含みます。シェアリング・エコノミーにより、利用予定のない遊休資産を効率的に活用でき、さらに、消費者は多種多様なサービスを享受することができるようになります。国内外における具体的なシェアリング・エコノミーの実情については、総務省平成27年度版情報通信白書をご参照ください。

3.日本の法規制(総論)

 まず、日本においてはシェアリング・エコノミー全体を規制する法律は存在しません。このため、シェアリング・エコノミーを新たに展開する場合には、展開するビジネスモデルやシェア対象の遊休資産により、異なる業法を調査しなければなりません。特に、スムーズに事業を展開するためにも、ビジネスモデルの構築の段階から法的な検討が必要になります。以下、シェアする資産によりどのような法規制があるのか、どのようなビジネスモデルを採用すればよいのか検討します。

4.日本の法規制(各論)

(1)古物のシェア
 「一度使用された物品・・・若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」(古物営業法2条1項)は古物であり、これらを売買、交換、委託を受けて売買、もしくは交換する営業(同条2項1号)や、古物商間でこれらを売買交換するための古物市場を経営する営業(同条2項2号)、古物の売買をしようとするもののあっせんを競りの方法により行う営業(同条2項3号)については古物営業許可が必要となります(同法3条1項)。

 このため、例えば、古物を買い取って賃貸したり、古物の買取を受託したりする方法をビジネスモデルとして採用するのであれば、古物営業許可を要するでしょう。他方、貸し借りのマッチングサービスを提供するプラットフォームを作る場合や新品を購入し共有する場合は古物営業に該当せず許可は不要と考えられます。

(2)空間のシェア
 本来の宿泊施設ではなく、一般の民家や店舗の空き部屋に泊まる「民泊」については、2017年6月に可決された住宅宿泊事業法案(民泊法)が施行されるまでは、宿泊料を取って客を泊めることになると旅館業法の規制の対象となり許可が必要となります(大阪の「民泊」逮捕事例と旅館業法改正)。一方、民泊法の施行により、住宅に人を年間180日を超えない範囲で宿泊させることにつき都道府県知事等への届出だけで可能となります。なお、家主不在型の住宅宿泊事業に係る住宅の管理を受託する事業を営もうとする場合は国土交通大臣の登録を要し、宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介をする事業を営もうとする場合は観光庁長官の登録が必要となります(「住宅宿泊事業法案」を閣議決定)。

(3)乗り物のシェア
 シェアリングサービスの代名詞でもあるカーシェアリングサービスを日本で行う場合、道路運送法との抵触が問題となります。

 まず、道路運送法上、原則的に自家用自動車は有償で運送の用に供することはできません(道路運送法78条1項)。このため、自家用車を用いて運送サービスを提供したいものと移動したい人をマッチングする事業は困難です。しかし、レンタカー利用者とドライバーをマッチングするサービスは、「 利用者の所有する自動車を使用して送迎を行う場合は、単に他人の自動車の運転を任されただけですので、運転者に対して対価が支払われたとしても、それらは運転役務の提供に対する報酬であって、運送の対価とはならない。」(平成18年9月29日付け事務連絡「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」(自動車交通局旅客課長発出、各地方運輸局自動車交通部長・沖縄総合事務局運輸部長宛))ため、道路運送法に抵触しないと考えられます。

 また、国土交通大臣の許可がない限り、自家用車を反復継続して有償で貸し渡すこともできません(同法80条1項)。このため、自家用車を貸したい人と借りたい人をマッチングサービスも困難となります。しかし、「共同使用」であれば「貸し渡し」に該当しないと考え、Anycaでは「共同使用契約」を締結するという方法で上記許可を不要としているとのことです(参考「シェアリングサービスは法的に問題ないの?カーシェアリングを例に弁護士が解説!」)。

(4)お金のシェア
 お金を持っていて貸したい人とお金を借りたい人・企業を結びつけるマッチングサービス(ソーシャルレンディング)は欧米では非常に盛んで、日本でソーシャルレンディングを行うには貸金業法との抵触が問題になります。反復継続して金銭の貸し付けを行う行為は、「金銭の貸付け・・・で業として行うもの」(貸金業法2条1項)といえ、貸金業に該当する可能性があります。そして、貸金業を営む場合には、貸金業法3条1項の登録が必要で、これを欠いて貸金業を営んだ場合には罰則が科せられます(同法47条2号・11条1項)。この登録には、一般人には満たすことが困難な要件の充足が要求されます(「貸金業登録」司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所)。このため、単にお金を持っていて貸したい人とお金を借りたい人・企業を結びつけるソーシャルレンディングは、お金を貸したい人に各自貸金業法上の登録をしてもらう必要が生じ、事業として成り立ちえないでしょう。

 しかし、日本でソーシャルレンディングを行うmaneoでは、maneoが貸金業者の登録をして、お金を借りたい人は、maneoから借りるという方法を採用しているようです。つまり、maneoが融資依頼を受け、審査し、ローンファンドを作成・募集し貸付を実行し、後に借り手から返還を受けて貸し手に対して分配するという仕組みを採用しています(maneoの仕組み)。このような仕組みを採用することにより、貸し手の行う行為は貸付ではなく、投資となり、maneoが貸金業法上の登録と金融商品取引業(第2種)の登録を行って上記の問題を回避しているようです。

5.グレーゾーン解消制度について

 上記で、シェアリングエコノミー・ビジネスと法令の規制を検討しましたが、シェア対象やシェア方法、マッチング方法が少し変動するだけで、法令に抵触する可能性が生じうるでしょう。このため、新しいシェアリングエコノミー・ビジネスを展開する際に、適法性が明らかでない場合には、企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度を利用すると良いと考えます。

 グレーゾーン解消制度は、法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)と異なり、確認対象法令の限定がありません。さらに、ノーアクションレター制度は、事業者が直接、規制庁に対して確認をとる必要があります。しかし、グレーゾーン解消制度では、事業者の申請に応じ、規制省庁の大臣との協議について所管省庁がサポートします。さらに、原則として1か月以内に回答が通知されるという迅速な対応が得られます。

6.まとめ

 このように、拡大するシェアリングエコノミーの市場に参入する際には、個別の法的規制があるため、ビジネスの構想の段階で、どのような法規制があるのか、その法規制を免れるスキームはどのような方法があるのか調査し、しっかり検討しなければならないと考えます。

提供:企業法務ナビ

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