【市場規模予測600億円!シェアリングエコノミーが生み出す新たなビジネスチャンス】第2回:シェアリングエコノミーが語りかける各業界の変化【ホテル】編 (2017/4/7 nomad journal)
ホテル業界でここ数年大きく変わってきた現象は?
シェアリングエコノミーという言葉を少しずつ耳にするようになってきた昨今ですが、私たちの生活にどんな形として表れているのでしょうか。日々生活する中で変化が見られないのが、このシェアリングエコノミーの特徴かもしれません。なぜなら、個人が持っているものを「共有する」というのは、カタチとして見えにくいためです。
たとえば、見た目は誰かが電動ドライバーを使っていても、それは使用する人のものか、誰か別の人が所有しているものなのかわかりません。これと同じように、シェアリングエコノミーの浸透性や市場規模の拡大という状態は見えにくく、認識するのが難しいと思われるのは仕方がないのかもしれません。しかし、いったんインターネットを開いてみると、その現状は、如実に表れていることがわかります。今回は、ホテル業にスポットを当てて、変化を見ていきましょう。
予約サイト比較でゲストへのサービスを強化
東京オリンピックが開催される2020年、訪日観光客4000万人を目指す中で、ホテル業界は今、どのような変化を見せているのか。インターネットでホテルを予約する際、ネット上にはさまざまなホテル予約サイトが現れます。そして、そのホテルの宿泊料金そのものも、日々変動していくのが見られるようになっています。まるで、株式の価格変動を見るような感じを受けます。ホテル間のみならず、ホテル予約サイト間でも価格競争が起きているということを実感する瞬間です。
ちょっと試しに、世界最大級ホテル検索サイトtrivagoで検索してみましょう。trivagoは、各ホテルが提携している予約サイトの料金比較を行って、ゲストにもっとも安い料金を提示しています。
TOPページを開くと、検索するエリアを入力する窓が現れます。「東京」と入力してみます。すると画面が変わり、チェックインの日、チェックアウトの日、利用者数を入力するだけでホテルが検索され、それぞれに複数の予約サイトの料金が現れ、利用者はもっとも安いところに予約ができるシステムになっています。これらが可能になったのは、クラウドコンピューティングの発達があったからで、同じく情報を「共有」するシェアリングエコノミーの拡大も、こういった技術の進歩が背景となって急激に市場を拡大しています。
※trivagoで検索される主な予約サイト名
エクスペディア、ホテルズドットコム、HotelQuickly、じゃらんnet、るるぶトラベル、Booking.com、一休.com、アップルワールド、Elvoline、CTrip、otel.com、Amoma.com、楽天トラベル、JTB、など。
旅行プランをもっと気軽に変更できるキャンセル対応
インターネット上での変化は、料金比較サービスだけではありません。クレジットカードを使って予約する時間的なスピードや、キャンセル対応が緩くなっているというサービスの変化、改善も見られます。ゲストが旅行の計画を練りやすいように、なるべく出発日に近いところまでキャンセル料金が発生しないような体制をつくり上げることができるようになっているのです。
また、Booking.comのように、クレジットカードで予約はできるけれど、その場で支払いをしなくてすむようなサービスを行うことで、キャンセル、予約の変更が心理的にしやすい環境を整えた比較サイトも登場しています。
ホテル事情に見られる2極化への潮流
ネットで東京のホテル検索をしていて目につくのは、5000円以下の宿泊施設の増加です。数年前と比べて、このクラスのホテルの数が減少し、代わりに今まで存在したカプセルホテルに似た、二段ベッドが並ぶドミトリータイプの相部屋、シェアハウスといった宿泊施設の数が急激に増えていることに気づかされます。
これは、海外からの訪日客が増えていることもあるでしょうが、より宿泊費を低く抑えたい学生や若い旅行者への対応を考えてのことだと思われます。また、このクラスには、一般家庭の部屋貸しもホテルと並んで検索されていて、いよいよ民泊の拡張が始まったという印象を受けます。
一方で、高級ホテルは、独自性を追求することでハイエンドクラスの部屋を増やし、差別化を図る動きも見られます。その理由に一つには、2020年のオリンピックを見据えて、海外のビジネスマンや富裕層が安心して泊まれるホテルの建築が増えていることもあります。東京には日本を代表する日系のブランドホテルが多くありますが、海外から見ればまだまだ知名度が低く、外資系のラグジュアリーホテルへの期待が高いようです。そのため、都内では新しい外資系高級ホテルが増え、日系ホテルも負けじと日本のおもてなし(文化体験のシェアリング)を売りとしたサービスを展開していくことでしょう。
以上のような理由から今後2~3年は、高級ホテル建築の動きが高まるはずで、東京ばかりでなく、箱根、京都、大阪というラインを中心に、地域のホテル需要も増加すると予測されています。シェアリングエコノミーにおけるホテル業界の動きは、価格競争のほかに、どんな「共有」の在り方を模索していくか、注目していきたいです。
取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ
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