アルバイトに対する「罰金」の違法性 (2017/2/20 企業法務ナビ)
事案の概要
昨今、ブラックアルバイトに関する問題がメディアを騒がせています。東京都武蔵野市内の大手コンビニエンスストア加盟店でも、アルバイトを病気で欠勤した女子高生に対し欠勤のペナルティーとして罰金9350円を課し、給料から差し引いていたことがわかりました。
そこで、今回はアルバイトに対する罰金制度及び給与から罰金等を差し引く行為の違法性について説明します。
そもそも、ペナルティーは許されるのか?
そもそも、アルバイトに対し罰金を定めることは許されるのでしょうか。この点に関しては、まず、労働基準法16条に注目する必要があります。
同法16条は、使用者の労働者に対する違約金・損害賠償額の予定の禁止を定めています。これを簡単に説明すれば、労働者の就労の態様や内容を理由として、使用者が労働者に対し罰金を課すことや事前に一定の損害賠償額を支払うことを約束させることは許されないというものです。これは、違約金や損害賠償額予定の存在が、労働者の退職を思いとどまらせるなど自由意思を拘束し、労働者を使用者に隷属させることを防ぐために設けられた規定です。
したがって、今回のようにアルバイト従業員が病気により欠勤したことを理由に使用者が罰金を課すことは労働基準法16条に抵触する可能性があります。
給与から差し引くことの可否
労働基準法16条のもとでも、労働者の故意・過失により会社に損害が生じた場合、会社が当該労働者に損害賠償を請求すること自体は禁止されていません。しかし、アルバイト従業員の会社に対する損害賠償責任が認められたとしても、本件のように一定の額を給与から差し引くことは許されません。
労働基準法24条は、「賃金全額払いの原則」を定めています。「賃金全額払いの原則」とは、使用者が賃金の一部を控除することは許されないとする原則をいいます。これは、使用者が賃金の一部を控除することを禁止することで、労働者に賃金の全額を確実に受領させ、その生活の安定を図ろうとするものです。したがって、本件のように一定の額をアルバイト従業員の給与から差し引くことは、労働基準法24条に抵触する可能性があります。
おわりに
使用者が違約金・損害賠償額の予定の禁止(労働基準法16条)に違反した場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」(同法119条)、賃金全額払いの原則に違反した場合は、三十万円以下の罰金(同法120条)に処せられる可能性があります。
今回の事件は、コンビニのフランチャイズ店で起こりましたが、その他の企業においても現場の管理者が十分な労務知識を有していないがために、今回のようなトラブルが生じる危険があります。こうしたトラブルが報道されてしまうと、企業の社会的イメージ・信用を大きく損なうことになりかねません。そのため、企業としては、現場の管理者に適切な労務知識を植え付けるべく、しっかりとした労務教育を行う必要があります。
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