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生活保護に対する誤った認識を与えかねない「なめんな」ジャンパー (2017/1/31 JIJICO

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市職員が生活保護「なめんな」のジャンパー

神奈川県小田原市の生活保護を担当する職員らが、ローマ字で「保護なめんな」と書いたエンブレムがプリントされ、背中には「不正受給をする者はクズだ」等といった内容の英文が記載されたジャンパーを着て、生活保護受給者の家庭を訪問するなどの職務に当たっていたことが分かり、問題となっています。

この問題は、行政の生活保護制度に対する認識の不足と、不正受給の実態に対する誤解が根底にあるものと考えます。

小銭と電卓

生活保護を利用することは憲法で保障された権利

生活保護制度は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を、具体化するための制度です。つまり生活保護は、国の国民への「施し」や「お情け」ではなく、生存権という憲法上保障された人権なのです。その生活保護制度のルールを定めているのが、「生活保護法」です。

そして、法律では、「都道府県知事」「市町村長」が保護の決定をし、支給しなければならないと定められているところ、実際の現場で対応しているのが、公共団体の担当職員、ケースワーカーです。生活保護のルールは、単純ではなく、各世帯の実態に合わせて対応する必要もあることから、生活に困窮する世帯の相談に乗り、状況を正確に把握して、法律に則したアドバイスをし、自立を支援することが、ケースワーカーに求められている本来の仕事なのです。

不正受給は保護費全体のごく少数

多くの不正受給が横行しているかのような報道がなされていますが、不正受給の割合は、保護費全体の0.4%程度でしかないのです(平成24年厚生労働省会議資料より)。しかも、その中には、悪質とはいえないケース(高校生の子どものアルバイト料を申告する必要がないと思っていた場合など)も含まれているのです。

このように、とても例外的な不正受給をクローズアップして、「保護なめんな」「不正受給をする者はクズだ」などと書かれたジャンパーを着用して仕事をすることは、無関係な全ての利用者に不審の目を向けて、威圧的な態度を示していることになりかねません。それは、生活保護が生存権の保障であるということやケースワーカーの仕事の本来の意義に反することになりますし、受給者の方との信頼関係の構築が出来なくなってしまいます。

生活保護に対する誤った認識を助長しかねない

もともと日本の生活保護利用率は、先進諸外国と比べると、極めて低い数字にとどまっています。しかも、生活保護を利用する資格のある人のうち、現に利用している人の割合(捕捉率)は、2割程度に過ぎない(受給資格のある世帯のうち8割は利用していない)といわれています(日弁連の調査)。そのうえ、ケースワーカーが威圧的なジャンパーを制服のように着用して家庭を訪問すると、近所に生活保護世帯と分かってしまうため、生活保護の利用をためらうことになりかねません。生活保護に対する偏見や後ろめたさなどの負の意識が広がっていくことをますます助長してしまいます。

なお、日弁連や各地の弁護士会において、生活保護支援システム(生活保護を申請したい方の相談に弁護士が無料で対応)がありますので、どうぞ、ご相談ください。

提供:JIJICO

著者プロフィール
中村伸子
中村 伸子/弁護士
あおぞら法律事務所
1995年、福岡で弁護士登録。以来、子育てをしながら、数多くの離婚や成年後見、遺産分割などの問題に携わる。弁護士業務の傍ら、2011年からは家庭裁判所の家事調停官(パートタイム裁判官と)して週1回執務。高い専門性を持って、多くの家族に関わる事件を担当している。
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