NECに課徴金納付命令へ、談合について (2016/12/7 企業法務ナビ)
はじめに
NECと大井電気等が中部電力が発注する電力保安用通信機器の納入に際し談合を行っていたとして公取委が約3億2千万円の課徴金納付命令と排除措置命令を出す方針であることがわかりました。独禁法が禁止する不当な取引制限の1類型である談合について見ていきます。
事件の概要
経済産業省は各電力会社に発電所や変電所に保安通信設備の設置を義務付けております。これらの電力設備に異常が発生したり、落雷や地震等で問題が生じた場合に自動で本社に通報し、遠隔操作で送電ルートを変更するための装置です。中部電力が発注するこれらの保安設備の納入を巡ってNECや富士通、大井電気(横浜市)、名伸電気(名古屋市)などが遅くとも数年前から事前に話し合って受注者を決めていたと見られております。中部電力は事前に登録した業者から数社を指定して見積もりを取り、そこから発注業者を決定する方法をとっておりました。公取委は昨年5月に東電の発注する保安設備に関しても同様の疑いで立入検査をしておりました。富士通は事前に公取委に自己申告していたため課徴金納付命令と排除措置命令は見送られる見通しです。
談合とは
国や自治体、特殊法人の公共事業や工事の発注先を決定する際に、受注候補業者間であらかじめ調整して受注予定者を決めておき、この受注予定者が落札できるように他の業者が若干高い価格で入札を行う行為を談合と言います。指名競争入札等で多く行われてきた行為であり、独禁法が禁止する不当な取引制限の1類型です。いわゆるカルテルの典型例で最も悪質な独禁法違反行為の一つとして見られております。
談合の要件
不当な取引制限の成立要件は共同行為と相互拘束です。競争事業者間で反競争的な行為を行うという明示または黙示の意思の連絡があり、それを相互に守らせる拘束力が生じている場合に不当な取引制限が成立します。そして入札談合の場合は(1)基本合意と(2)個別調整行為が行われたら不当な取引制限の要件である共同行為と相互拘束に該当することになります。基本合意とは入札予定者間で受注予定者を決定する基本的なルールを定め合意しておくことを言います。そして個別調整とは個々の入札ごとに具体的にそのルールに則って受注予定者を決定し、落札できるよう他の業者が協力することを言います。
談合に対する規制
談合に対しては公取委は排除措置命令を出すことが出来ます(7条)。業者間での基本合意の破棄、調整行為の破棄、予防措置、これらの周知徹底等を違反業者に命ずることができます。そして不当な取引制限の一つであることから課徴金納付命令を出すことが出来ます(7条の2)。課徴金の額は業者の規模や業種によって異なりますが、最大で売上額の10%、2度目の違反の場合は15%となっており、場合によっては10億円を超える高額なものとなります。そして談合行為には罰則も設けられており5年以下の懲役又は500万円以下の罰金、法人に対しては5億円以下の罰金という両罰規定となっております(89条、95条)。
課徴金減免制度
課徴金納付命令に該当する違反行為に関しては課徴金減免制度が設けられております。違反内容を公取委に自主的に申告した場合に課徴金が減免されるという、いわゆるリニエンシー制度が利用できます。公取委が調査を開始する前に申告した場合、最初の申告者は100%、2番目の申告者は50%減額されます。調査開始後は30%の減額を受けることが出来ます。
コメント
本件で中部電力は登録業者から見積もりを取って価格や実績から発注業者を決定しておりました。その際、NECや富士通等の登録業者はあらかじめ受注業者を決めておき、その業者が受注できるよう見積額等を調整して中部電力に提出し個別調整を行っていたと思われます。これにより公取委はNECと大井電気に対し約3億2千万円の課徴金納付命令を出す見通しです。そして富士通は課徴金減免制度を利用して課徴金が免除されることとなりました。
公取委のガイドラインによりますと、業者間で受注予定者を決定することは当然として、互いの受注意欲、受注実績、他の業者への話し合いの参加要請、最低入札額の合意等が違反行為に該当するとされております。それ以外の情報交換行為も場合によっては違反となりうるとされております。公共事業等への入札に際し、同業他社と情報交換を行うことは一般にあり得ることと言えますが、その内容によっては独禁法違反となる場合があります。他の入札予定業者と話し合う場合は事前に公取委に問題がないか相談することが無難と言えます。また既に違反行為を行ってしまった疑いがある場合には、できるだけ速やかに申告して100%減免を目指すことが重要と言えるでしょう。
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