プログラミング教室活況 でも小学生に必修化は必要? (2016/10/31 JIJICO)
2020年小学校でプログラミングの授業が必修化に
2020年より日本でも小学校でプログラミングの授業が必修化される見通しとなりました。これに伴って、コンピューターのプログラミングを子どもが楽しみながら学べるという民間の教室が増えているようですが、これからは小学生がプログラミングを必ず身につけなければならない時代になっていくのでしょうか?
プログラミングが必修化される背景としては、国際的な流れだということと、さらに、将来的にIT人材が不足するという予測に対して、早い段階からIT人材を育てて対応していこうという意図があるようです。AIやIoTに代表されるようなIT化がこれからも拡大していくなかで、総務省は2025年までにIT人材を新たに100万人育成する、という計画を立てていますので、そのための政策の一環とも言えるでしょう。
今後世界的にIT人材が大幅に不足することが予測される
他国の例を見ていくと、特に先進国では「将来に向けてIT人材が大幅に不足する」という状況はどこも似ているようです。既にアメリカやイギリス、シンガポールなどでは小学校からプログラミングが必修になっているところも多く、日本もその流れに追いつこうとしているとも言えます。現にイギリスでは、11歳と12歳の子どもたち全員に「micro:bit」という小型で非常に単純なコンピューターユニットが無料で配布され、自由にプログラムを組んだりいろいろな実験をしたりできるような環境が用意されています。
小学生からプログラミングを必修化する意味はあるのか?
これからも、AIやIoTはより進化し、発展を遂げていくと予想されますが、小学生からプログラミングを必修化するメリットはどこにあるのでしょう?そもそもプログラムというのは、コンピューターに何か仕事をさせるときに使う命令の手順書のようなものです。プログラムで使われる言語は様々な形式がありますが、全てのコンピューターはこのプログラムによって動いており、その動作の基礎となるものです。プログラムは基本的に時系列に処理されていくので、それを学ぶことによって論理的かつ順序だったものの考え方が身につくと言われることもありますが、それはプログラミングでなくても身につけられるのではないでしょうか。
私も長い間IT業界を見ていますが、実際の現場で必要なのはプログラミングのスキルだけではありません。システムを作る過程においても、まずはお客様に対して現状の課題や実現したいことのヒアリング・分析をして、それを元に充分に設計を行わないとよいシステムはできません。よくシステム開発は建築に例えられますが、その場合プログラミングを行うプログラマーは大工の役割と言えるでしょう。設計士が施主の希望を聞き、それを元に適切に設計したものをスキルを持った大工が施工して初めてよい家が完成するのと同じで、設計が不十分なものはいくら優秀なプログラマーが手がけてもよいシステムはできません。社会にはいろいろな役割があり、いろいろな職業があります。子どもたちの将来の選択肢の一つとしてプログラミングを経験させるのはよいことだと思いますが、必修化して全員に学ばせるというのは少々違和感が残ります。
2025年に向けた目標やIT化のさらなる発展、人口の減少などを考えるとプログラマーを含めたIT人材の育成が必要であることは理解できます。しかしながらこれから英語の必修化も始まりますし、子どもたちは学ぶことがいっぱいです。ここにプログラミングの授業も入ってきたら、結果的に何か他の授業を減らすことになるでしょうし、そもそも全ての子どもたちがプログラミングに興味を持つとも思いません。さらに教える側の教員のスキルをどのようにつけていくかという課題も残ります。そのため、小学生のうちはもっと基礎的な学力やコミュニケーション力を習得させることに専念し、プログラミングは興味を持った子に対して選択制で提供すればよいのではないかと個人的には思います。
- 著者プロフィール
-
目代 純平/ITコンサルティング、ITコンシェルジュ
チェックフィールド株式会社
1999年に日本橋の老舗果物店・千疋屋総本店の「業務報告・商品発注システム」を当時まだ珍しかったLinux/Webベースで提案し、複数社のコンペの中で受注する。13年間で100社以上のWebデザイン/システムを設計・制作し、IT導入・運用管理における総合的なノウハウを身につける。2006年株式会社に組織変更し、プライバシーマークを取得。現在では、中小・中堅規模法人向けのIT導入・運用コンサルティング、運用管理代行を中心に約70社のIT環境を総合管理する傍ら、業務で得た知識や事例をもとに、各地で主に小中学生や保護者、先生方に対して「安全なケータイ・インターネットの使い方」をメインテーマに講演ならびにワークショップ活動を展開。 ■著書 1から出直すパソコンインストール(共著)(エーアイ出版;1998年) 子どものための『ケータイ』ルールブック(総合法令出版;2012年) 【経歴】 1976年10月28日生まれ。東京都出身。 商社勤務の父親の転勤に伴い台湾にて中学校3年間を過ごす。 帰国後、国際基督教大学(ICU)高校 卒業 1996年 中央大学 総合政策学部政策科学科(環境経済学専攻) 入学 大学在学中にホライズン・デジタル・エンタープライズ(現HDE)のメンバーと出会い、立ち上げに参画。NTTラーニングシステムズ フロント・マルチメディアリーダ研修講師などを経て、大手電機メーカーの学生インターンメンバーとして次世代加入者系無線アクセスシステム(Wireless Local Loop)の研究開発に携わる。米国テキサスとサンノゼにて実験と研究を行う。 1999年 帰国後、1999年7月 有限会社チェックフィールドを設立。 2000年 中央大学総合政策学部政策科学科 卒業 2006年 チェックフィールド株式会社へと組織変更
- 関連記事
- [福井・鯖江市]7/8楽しく簡単にプログラミング 鯖江東小学校で「プログラミング成果発表」
- [千葉・流山市]アプリコンテストを開催 市のデータを使ったアプリをご提案ください
- 小学生が地元観光マップを手作り作成しスマホでPR――福岡県うきは市
- 【地方創生】 世界のエンジニアを集める……島根県 溝口知事
- 増える民間学童 そのメリットと問題点