イギリスでトランスジェンダーの法的性別変更手続きがもっと簡単に! (2016/7/14 Letibee LIFE)
2016年7月7日、BuzzFeedNewsアメリカ版は、イギリスにおいてトランスジェンダーの法的性別変更手続きが容易になると報じました。
<引用元記事>
The UK Will Make It Easier For Trans People To Legally Change Their Gender
2004年に決まった条例”Gender Recognition Act 2004”から、何が変わって手続きが容易になったのか? そして、日本での戸籍の性別変更手続きとの違いは何なのか? さっそくご紹介しましょう。
※日本では戸籍の性別変更のためには6つの条件が課せられています。
(参照元では5つですが、ページ内(5)に「二人以上の医師による診断書」が挙げられていることから6つとしています。)
・二人以上の医師から性同一性障害と診断されること
・二十歳以上であること
・婚姻関係にないこと
・未成年の子がいないこと
・生殖腺がない、またはその機能を永続的に欠く状況にあること
・その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
トランスジェンダーのために条例改正に乗り出すイギリス政府
EU離脱で何かと騒がしいイギリスですが、明るいニュースが飛び込んできました。法的に性別変更をするのがもっと簡単になり、パスポートを含む公的文書に性別の記載がなくなり、嫌がらせやいじめがもっと少なくなるかもしれないのです。
下院議会の「女性と平等委員会」で半年前にされた提言をもとに、女性と平等省の大臣、ニッキー・モーガンはトランスジェンダーの人々が直面している数々の不平等を解決するため、多くの条例案を発表しました。
モーガンが発表したのは以下の通りです。
●政府は、専門家たちによるぶしつけな質問などを経なければ性別変更を認めなかったGender Recognition Act 2004(2005年から施行されたトランスジェンダーが性別変更するための法案)を見直す。
●トランスジェンダーは公的機関から精神病とみなされることは決してない(特に国民健康サービス)。
●法の見直しによって、将来的に公的文書から性別の情報が不必要になる(パスポートも含まれる)。
●トランスジェンダーのために何が必要か政府機関が把握するために、英国のトランスジェンダーの人々への大規模な調査が行われる。
●国民健康サービスの性アイデンティティ部門のスタッフは、トランスジェンダーの人々へのよりよいサービスのためにさらなるトレーニングを受ける。
●大学におけるトランスジェンダーへの嫌がらせやいじめを無くすために、政府は大学と協力する。
これらの法案の中で最も革新的なのは、Gender Recognition Actの見直しでしょう。これによってイギリスはアイルランドやマルタやデンマークと同じラインに立てるのです。これらの国々では性別変更をするのに外科手術などの医療行為が必要ではないのです。
まだ政府がどのように性別変更の法案を決定するのかはわかりませんが、自己申告制的なものになるだろうと思われます。これまでイギリスでトランスジェンダーが性別変更するには、医師と精神科医の承諾が必要でした。
※日本では戸籍の性別変更のためには6つの条件が課せられています。精神科医2名以上による性同一性障害診断と、医師の外性器による性別判定が必要です。
「トランスジェンダーへのより良い理解とサポートをすることが目的でしたから、Gender Recognition Actを見直すことが決定されたのは良い知らせです。古臭くなったシステムを覆して、トランスジェンダーの人たちが本当に必要とすることを保証するのがこの改革の肝ですから」
(ニッキー・モーガン談)
女性と平等と家族省大臣のキャロライン・ディネネージはこう付け加えます。
「性別変更の法的手続きを見直して、政府が性別情報を集めなければいけない必然性を再考して、トランスジェンダーが直面している困難をよりよく理解するためにコミュニティと協力して、トランスジェンダーが本当の平等を達成するための重要な一歩を踏み出さないといけないのです」
イギリスで最も有名なトランスジェンダー・アクティビストでジャーナリストのパリス・リーズは今回の法案の数々を歓迎しています。
「Gender Recognition Actはアップデートされるべき。それはその法案が成立されるまで長年働き続けたアクティビストたちの輝かしい功績を否定することではない。ただGender Recognition Actは時代の中でちょっと古びてきてるし、何より政府が法案を見直したってことが重要。イギリスの人たちは役所や官僚がすることはなんでも悪いことだと思いがちだけど、トランスであるだけで人生の困難は10倍になるんだから。ただ銀行に預金することや選挙に行くこと、そんな普通のことがずっと困難なの。書類を提出して、個人として対面して、自分が本当に自分であると証明しなきゃいけないから。だからトランスジェンダーが日々の生活で感じる障害が少なくなるんだったら、なんでも大歓迎よ」
公的文書における性別記載の必要性の見直しが今回の法案で特に重要だとリーズは言います。それはトランスジェンダー・コミュニティを超えて、もっと広い影響力がありそうだ、とも。
「フェミニストたちは今回の法案を大いに喜んで、トランス・コミュニティに感謝するでしょうね。彼女たちは長い間ジェンダーの壁を取り除くことに苦心していて、これを機会にやっと大きな一歩を踏み出せそうなんだもの。社会においては、ジェンダーの差が極端なほど女性が暴力に直面する可能性が大きくなるの。だからジェンダーの区別が少なくなるほど皆にとってよりよい社会になると思うんだけど、特に女性にとっては住みやすい社会になると思うわ」
そしてトランスジェンダーへの大規模調査――トランスジェンダーの人々が何を必要としているか、トランスジェンダーの人々の実際の人口数、そして一般の人々のトランスジェンダーへの態度――もとても重要だとリーズは言います。
「長年の懸案でした。他のトランスの人たちと同様に、私も日常生活で無視されたり馬鹿にされたりしてきました。今までこういった問題に対して社会全体としてあまりにも気が付かないふりをしていたと自覚するべきです。そして、今こそこの問題に向き合わなければなりません。トランスジェンダーの人々は、そこに存在しているのですから」
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