避難所でも実践したい肺炎予防の口腔ケア (2016/4/26 JIJICO)
高齢者に多い肺炎を予防するための口腔ケアについて
熊本地震の発生から1週間、いまだ多くの人が避難所や車中泊での不便な暮らしを強いられています。これまでに車中泊が原因でエコノミークラス症候群を発症したケースや、下痢や嘔吐を訴えた避難者からノロウイルスが検出されたことなどが報道されています。
長期化する避難生活で健康を維持するために気を付けるべきポイントは沢山ありますが、歯科医師の立場から、高齢者に多い肺炎を予防するための口腔ケアについて解説します。
高齢者がなりやすい誤嚥性肺炎(老人性肺炎)とは?
肺炎は日本人の死因第4位であり、肺炎で亡くなる方のおよそ9割は75歳以上の高齢者で、しかもその7割は「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」が原因と考えられています。
誤嚥とは、食べ物や唾液、胃液が誤って気管に入ってしまうことです。のどには空気が通るルート「気管(気道)」と、食べ物が通るルート「食道」がありますが、高齢者になると二つのルートの切り替えがうまくいかずに、誤って気管に食べ物を入れてしまうことがあります。これにより食片と共に口の中の細菌が肺に入り込み、炎症を起こしてした状態が誤嚥性肺炎です。また、細菌が含まれた唾液を睡眠中に誤嚥している場合、寝ている間に胃液が逆流して気管に入り込んでしまったときにも起こりえます。
水不足や不便な避難生活により、十分な歯磨きが行えないと口腔内細菌が増殖し、身体各所に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、特に高齢者の方は誤嚥性肺炎に注意が必要です。阪神淡路大震災では、肺炎で200人以上が亡くなられたことが知られていますが、半数以上は誤嚥性肺炎であった可能性が示唆されています。
避難生活でも気を付けたい歯磨きなどのオーラルケア
高齢者の命をおびやかす危険性のある誤嚥性肺炎を予防するには、食事中と睡眠時の誤嚥を防ぐため、
1、上半身を少しだけ起こした姿勢で眠る(胃液の逆流を防ぐ)。
2、食事は固いものを避け、飲み込みやすい半固形物にする。
3、TVを見ながら…、会話しながら…の“ながら食事“をやめる。
4、食後すぐに横にならない。
などの点に気を付けましょう。
また、誤嚥自体を防ぐことに加えて、最も効果的なのは歯磨き、入れ歯の洗浄を入念に行い、就寝前にはうがい薬などで口の中を消毒・洗浄するなどして肺炎の原因菌となりうる口腔内細菌を少ないレベルに保つことです。
さらに口腔ケアを行うと細菌を減らせるだけでなく、口の中が刺激されて唾液の分泌が促進され、結果として食べ物が飲み込みやすくなり、食事中の誤嚥を防ぐこと効果も期待できます。
お水が無い場合、歯ブラシが無い場合のオーラルケアはどうする?
オーラルケアは本来、毎日継続することが重要です。できれば普段から定期的にかかりつけ歯科などでチェックしてもらい、口腔衛生に関する指導を受けていることが望ましいです。
大切なのは、
・食事は時間をかけてよく噛んで食べること、
・歯磨きは十分時間をかけて丁寧にすみずみまで磨くこと
・歯間ブラシやフロスなどの補助清掃器具も使って歯の間もきれいに磨くこと
などがポイントです。
高齢者の中には自分でケアをできない方もいらっしゃるので、そのような場合は近くにいる方が行ってあげてください。歯ブラシがない場合は、水やお茶でしっかりうがいを、お水もない場合はハンカチなどを指に巻いて歯を拭い、汚れをとるのも効果があります。うがい薬、液体ハミガキ、洗口液などが入手できた場合は、ご使用いただくとさらに効果的です。
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