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つらいことが当たり前と思わないで―PMSや片頭痛への理解を深め“女性が輝く社会”へ (2022/3/3 政治山)

関連ワード : 健康 大塚製薬 女性 女性活躍 

 3月1日から8日の「女性の健康週間」に先立って、大塚製薬のプレスセミナーが2月24日、働く女性の健康意識やPMS(月経前症候群)、女性特有の片頭痛をテーマにオンラインで行われました。

セミナーの登壇者

セミナーの登壇者
(左から)大塚製薬の西山和枝さん、医師の五十嵐久佳 先生、尾西芳子 先生

相談できない環境が昇進辞退や退職に繋がっている

 はじめに、大塚製薬女性の健康推進プロジェクトリーダーの西山和枝氏は、2021年9月に実施した「女性の健康と仕事への影響に関する調査」の結果に触れ、働く女性の約半数がPMS症状を自覚しており、日常生活に支障をきたす症状があると回答した人(429人)の約6割が「自分で対処することが重要」と回答していることを指摘しました。

PMS症状の自覚と対処について

PMS症状の自覚と対処について

 この重い症状を自覚している女性の約6割は、PMSについて「会社では誰にも相談できない/したくない」「会社内での責任が上がれば上がるほど、人に相談できない」と回答しており、職場では相談できない個人の問題として抱え込んでいる実情が浮き彫りとなりました。

西山和枝さん

大塚製薬 女性の健康推進プロジェクトリーダー 西山和枝さん

 また、管理職登用の機会のあった女性(379人)への影響については、PMSの症状により「昇進を辞退したことがある」(18%)、「昇進を辞退するか悩んだことがある」(37%)と合わせて55%が昇進辞退を経験または検討、さらに「仕事を辞めたことがある」(17%)、「仕事を辞めようと思ったことがある」(41%)として58%が退職を経験または検討しており、PMSの症状は働く女性はもちろん、企業にとっても大きな課題であることがうかがえます。

PMSにおける昇進・退職への影響

PMSにおける昇進・退職への影響

 これらの調査結果を受けて西山氏は、多くの女性が自身で対処すべきと考えている一方、半数以上(重い症状を有する女性の62%)が企業にも対策を求めていることから、女性活躍を推進する企業も当事者として「企業ごと化」していく必要があると述べました。

生産性にも大きな影響、ヘルスリテラシーの向上を

尾西芳子先生

産婦人科医 尾西芳子先生

 続いて、産婦人科医の尾西芳子氏はPMSの身体症状と精神症状の諸症状、診断基準について紹介し、自覚して向き合うことの重要性を説きました。

 また、それらが家庭や仕事に与える影響についても触れ、特に仕事については昇進辞退や退職に加え、PMSや月経随伴症状によって仕事のパフォーマンスがいつもの半分以下になる人が45%にも上ることから、大きな労働損失・社会経済的損失につながっている点を指摘しました。このパフォーマンスの低下はヘルスリテラシーの低い人に顕著であることから、尾西氏は女性のヘルスリテラシーの向上が必要であると強調しました。

PMSにおける昇進・退職への影響

PMSにおける昇進・退職への影響

 PMSについて、その全容は解明されていないものの、運動不足や食生活など生活スタイルの見直しやフェムテック(PMSチェックサイトや月経周期アプリ、サプリメントなど)の活用により、症状の緩和・改善が認められています。

 例えば、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を持つ「エクオール」を自身の体内で産出できる人はPMSになりにくく、なったとしても症状が軽いという研究結果も発表されており、カルシウムやビタミンB6はPMSの症状改善に有効とされています。

エクオールとPMSとの関連性(調査研究)

エクオールとPMSとの関連性(調査研究)

 また、尾西氏はPMSや月経痛、月経不順などについて医師に相談できることを知らない人が多いと指摘し、「つらいことが当たり前と思わないでほしい。セルフケアに拘り過ぎず、婦人科等の病院で気軽に相談してほしい」と述べました。

片頭痛患者は840万人、日常生活に支障でも我慢

五十嵐久佳先生

富士通クリニック 内科(頭痛外来) 五十嵐久佳先生

 続いて、内科医の五十嵐久佳氏は頭痛の種類と諸症状に触れ、多種多様な頭痛があり有病者は世界に30億人とも言われていること、日本では約3割の人が頭痛(疑い含む)に悩んでいること、中でも国内の片頭痛患者は840万人に上り、特に20代から40代の女性に多いことを紹介しました。

 また、片頭痛を患う人を対象とした調査では、74%は「日常生活に支障をきたしている」と回答している一方、68%の人が「仕事や行事を休まない」、さらに69.4%が「病院で受診したことがない」と回答していることから、多くの人が「片頭痛は我慢するもの」として受け止めている実情がうかがえました。

片頭痛の日常生活への支障度

片頭痛の日常生活への支障度

片頭痛の仕事や余暇への影響

片頭痛の仕事や余暇への影響

片頭痛での受診状況

片頭痛での受診状況

 また、片頭痛は月経に関連して起こるケースも多いことが指摘されていますが、PMSや生理痛の一種として片付けられてしまう恐れもあることから、「片頭痛スクリーナー」など自己診断ツールの活用や、医師による適切な診断を受けることが重要であると強調しました。

PMSや片頭痛と向き合うには、周囲の理解が必要

 本セミナーを通じて、PMSや片頭痛について、「つらいのが当たり前、我慢して当然、医師に相談するものではない」という本人の思い込みが、症状の緩和や改善を妨げている実情がうかがえました。また、周囲の「それくらいで仕事を休むのか、我慢できないのか」といった無理解が誰にも相談できない環境を作り出し、結果としてパフォーマンスの低下や昇進辞退、退職を招いていることも明らかとなりました。

 PMSや片頭痛に悩む女性が正しい知識を得ることに加え、管理職や同僚も理解を深め、職場全体のヘルスリテラシーを向上することが、新しい働き方と女性の活躍を実現していくためには必要です。

(※訂正)グラフ「PMS症状の自覚」内の数値を「重い27%、軽い21%」と表示しましたが、正しくは「重い21%、軽い27%」です。セミナー資料の修正に伴うもので、お詫びして訂正いたします。

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